「頻尿・尿漏れ 尿のトラブル」⑤ ~女性ならでは 骨盤臓器脱~

24/04/12まで

健康ライフ

放送日:2024/03/15

#医療・健康#カラダのハナシ

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【出演者】
巴:巴(ともえ)ひかるさん(東京女子医科大学附属足立医療センター 教授)
聞き手:星川幸 キャスター

骨盤臓器脱とは

――東京女子医科大学附属足立医療センター教授で、泌尿器科が専門の巴ひかるさんに伺います。
今回は「女性ならでは 骨盤臓器脱」です。
初めて聞く病気なんですが、どのようなものなんですか。

巴:
骨盤内にあるべき臓器が、膣(ちつ)から脱出することを「骨盤臓器脱」といいます。
女性の骨盤内には、膀胱(ぼうこう)、子宮、直腸などの臓器がおさまっています。これらを支える骨盤底の筋肉が、出産や加齢で緩んでしまいます。すると、臓器が下に下がってしまい、ついには膣から外に出てくることで起こります。

――具体的には、どんなときに出てきてしまうんでしょうか。

巴:
お風呂に入ってしゃがんだときに、股の間のピンポン球みたいなものに触れたり、トイレで排便のために力んだあと、紙で拭くときに気付いたりします。また、重い物を持ち上げたときなど、おなかに力が入ったときに違和感を感じることもあります。座ったときに、何かが膣内に引っ込んでいく感じがして気持ちが悪い、というふうにおっしゃる方もいます。

――どれくらいの女性が経験する病気なんでしょうか。

巴:
自分では気付かない程度から、出っ放しになっている状態まで、さまざまな程度の骨盤臓器脱があり、はっきりとした有病率は分かりませんが、アメリカのデータによれば、経産婦の約50%に骨盤臓器脱がある、という報告があります。

――経産婦、出産を経験した人の約50%ですか。結構多いんですね。
骨盤臓器脱になると、尿への症状が現れるんですか。

巴:
はい。臓器が下がってくると、膀胱の出口を圧迫して排尿が困難になったり、急な尿意でトイレが我慢できず頻尿になったり、トイレに間に合わず、尿を漏らしてしまう過活動膀胱症状を引き起こすことが、およそ半数で見られます。

――尿以外の症状はありますか。

巴:
症状が軽いうちは、おなかに力が入った際に体外に飛び出す程度ですけれども、重症になると、常に飛び出た状態になって歩行に支障をきたしたり、下着にこすれて出血したり、ということがあります。
重力によって下がってくるため、だんだん症状が悪化してきます。

――では、放っておくと、どんどん臓器が出てきてしまう、ということなんですね。それは怖いですね。
これはどうすればいいんでしょうか。

巴:
どんどん出てくるといっても、落っこちてしまうわけではありませんので、心配はいりません。
例えば、トイレで臓器が出て排尿・排便しにくいときは、指でやさしく押し戻します。そうすると、尿も出やすくなります。
膣を触ってはいけない、ばい菌が入る、と考えがちですが、触っても大丈夫です。

骨盤臓器脱の対処法

――出ないようにするには、どうすればいいんでしょうか。

巴:
骨盤臓器脱に効果的な対策は「骨盤底筋訓練」です。骨盤底の緩んだ筋肉を鍛えて症状を改善し、悪化を予防する運動で、肛門や膣を意識的に締めたり、緩めたりします。

――骨盤底筋訓練とは、腹圧性尿失禁の回で紹介したトレーニングですね。
まず肛門を締めて、そのまま膣と尿道を締めて、胃のほうに引き上げる方法でした。

巴:
はい。なかなか意識しづらいトレーニングなんですが、骨盤臓器脱にも有効なトレーニングです。でも、軽症の方でないと効果は出にくいです。

――そのほかに、生活の中で注意することはありますか。

巴:
重い物を持たない、便秘で力まない、体重を増やさない、ということが重要です。
重いものは、なるべく送ってもらうなどしましょう。
便秘で力むとよけいに臓器が下がってくるので、便秘対策はとても重要です。
体重が増えると腹圧が上がって、骨盤底への負担が大きくなり、臓器が脱出しやすくなります。肥満がある場合は、ダイエットを心がけましょう。

――薬などの治療はあるんでしょうか。

巴:
残念ながら、骨盤臓器脱に直接有効な薬はありません。ただし、「サポート下着」や、「ペッサリー」という膣にはめるリングを使うこともあります。
骨盤臓器脱では、臓器が下がってくる下垂感や、股の間の違和感などがありますが、サポート下着はそれを骨盤底の下から支えてくれるので、歩行のときなどに安心感があります。
一方のペッサリーは、膣内に入れて、下がっている膀胱や子宮などを体内で直接支えますので、排尿もしやすくなります。医療機関でペッサリーを膣内に挿入して、膀胱や子宮などが出てこないようにしますが、長期間、体の中にずっと入れておくと炎症が起こったり、おりものが増えて出血することがありますので、3~4か月に1回は受診して、交換してもらう必要があります。
自己管理法といって、自分でペッサリーを着脱できるようになると、受診回数を減らすことができます。

――骨盤臓器脱という病気があることを、初めて知りました。勉強になりました。
最後に、今回のポイントをお願いします。

巴:
何かが下がってきた、と感じたら、それは骨盤臓器脱。


【放送】
2024/03/15 「マイあさ!」

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