【出演者】
巴：巴（ともえ）ひかるさん（東京女子医科大学附属足立医療センター 教授）
聞き手：星川幸 キャスター
原因を調べて治療できれば改善の可能性が
――東京女子医科大学附属足立医療センター教授で、泌尿器科が専門の巴ひかるさんに伺います。
ぐっすり寝たいのに、何度も何度もトイレに起きてしまうとは、安眠できずに大変ですね。
巴：
そうですね。夜間に、トイレに１回以上起きる「夜間頻尿」は転倒のリスクが高く、また、睡眠不足から日中の生活の質が低下する原因になります。夜中にトイレに起きる人を調べたところ、40代では30％近く、50代では50％近く、そして80歳以上になると約90％の人が、寝ているときに尿がしたくなり、目が覚めてしまう、という統計があります。しかも、年齢が高くなるほど、夜中に起きる回数が増えていくことが報告されています。
――そうしますと、年齢のせいでしかたがない、と考える人も多いでしょうね。
巴：
しかし、夜間頻尿は慢性的な睡眠不足を引き起こすこともあり、日中の疲労感など、日常生活に影響します。
２回以上起きる場合は、その原因を調べて治療ができれば、改善する可能性があります。
夜間頻尿の４つの原因
――どのような原因があるんでしょうか。
巴：
夜間頻尿の原因は、４つあると考えられています。１つ目は。
１．夜間多尿、つまり、夜間の尿が増えてしまうこと
夜間頻尿の人の80％は「夜間多尿」がある、という海外の報告があります。
――夜間多尿、夜間の尿が増えてしまうということなんですね。何が原因で起きているんですか。
巴：
加齢による変化として「抗利尿ホルモン」の低下があります。
――抗利尿ホルモン、ですか。
巴：
はい。抗利尿ホルモンには、夜間の尿量を抑える働きがあります。通常、腎臓は24時間絶え間なく血液をろ過して、尿を作っています。私たちはこの抗利尿ホルモンの働きのおかげで、寝ている間はトイレに起きずに、安眠することができます。
ところが、年齢とともに抗利尿ホルモンの分泌が少なくなり、寝ている間も尿が日中と同じペースで作られるようになってしまいます。ですから、若いときと同じように寝る直前まで水分をとっていると、夜中に尿が作られて、朝までもたずに、夜中にトイレに起きることになってしまいます。
そういった場合は、寝る前３時間以内は、お薬を飲むための水以外は飲まないようにするといいと思います。
――この、抗利尿ホルモンを増やすことはできないんでしょうか。
巴：
男性には飲み薬がありますけれども、同じ薬を女性に使用することは今のところできません。
また、夜間多尿の多くは、内科的な病気が原因であることが多いです。例えば「潜在性うっ血性心不全」があります。寝る前に足がむくみ、朝起きるとむくみが消えている、そういった場合に疑われます。
さらに、内科的な病気としては「睡眠時無呼吸症候群」も夜間多尿になりやすいです。
――睡眠時無呼吸症候群といいますと、寝ている間に大きないびきをかいたり、呼吸が止まる病気ですよね。
巴：
そうですね。これらの内科的な病気に関しては、病院で治療を受けることをおすすめします。
――では、夜間頻尿の原因、２つ目は。
巴：
２．過活動膀胱（ぼうこう）
――膀胱が敏感になったり、頻尿になったり、尿漏れしてしまう病気でしたね。
さらに、夜間頻尿の原因、３つ目は。
巴：
３．尿をためる膀胱が小さくなること
尿をためることができなくなり、トイレに行かなければならなくなります。
――膀胱が小さくなる、というのはどうしてですか。
巴：
大きな原因は“加齢”です。膀胱は筋肉でできているんですけれども、そのしなやかさが失われ、硬くなり、小さくなってしまいます。
――膀胱が小さくなってしまった場合は、どうすればいいんでしょうか。
巴：
尿意があっても、少し我慢してからトイレに行くといった「膀胱訓練」をすることで、膀胱の筋肉を伸びやすくします。
――では、夜間頻尿の原因、最後の４つ目は。
巴：
４．睡眠障害
尿意で目が覚めるのではなく、目が覚めるから起きたついでにトイレに行っておこう、となることがあります。それが、夜間頻尿の原因となります。
こういった場合は、内科や精神科を受診して、睡眠障害の治療を行います。
――夜間頻尿には４つの原因があり、それぞれの対処法や治療法があるんですね。
巴：
はい。私の患者さんでは、夜中４～５回もトイレに行っていた、という人は結構いらっしゃいます。そうなると、夜寝ている感じがしません。
治療法がありますので、まずは相談するようにしてほしいと思います。
――最後に、今回のポイントをお願いします。
巴：
夜間頻尿、原因ごとにきちんと治療を。
【放送】
2024/03/14 「マイあさ！」
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