【出演者】
関根:関根嘉香さん(東海大学 理学部 化学科 教授)
聞き手:星川幸 キャスター
汗のにおい、どんなにおい?
――汗ばむ季節になると気になりますけれども、汗のにおい、この原因は何でしょうか。
関根:
実は、汗そのものはもともとにおわないんですね。
汗がにおいとして感じてしまうのは、皮膚の表面の作用で発生する、皮膚ガスが原因です。汗にはミネラル、ブドウ糖、アミノ酸、乳酸、尿素などさまざまな成分が、微量ですが含まれているんですけれども、これに皮脂の成分がさらに混ざり込みまして、これらの成分が皮膚の常在菌の作用によって分解されますと、体臭のもとになる皮膚ガスが発生いたします。
――1日中、外で撮影などをして、汗をいっぱいかいて時間がたちますと、自分でも体が汗臭いなあと感じることがありますけれども、その汗のにおいっていうのは自分でも分かりやすいにおいですよね。
関根:
そうですね。加齢臭のように常時発しているにおいですと、鼻が慣れてしまって自分では気付きにくいんですけれども、汗のにおいは一時的なものなんで、比較的気付きやすいかもしれません。ちなみにどんなにおいなのか、においサンプルを持ってきましたので嗅いでみますか。
――はい。汗臭いのは、嗅いだことがあるから分かるような気もしますが……今、小さい瓶を手に持ちました。ちょっと開けてみますね……ん! はい、鼻をつくような。汗臭いです……。
関根:
その成分は「イソ吉草酸(いそきっそうさん)」といいます。字からして何となくよさそうな感じがするんですけれども、これ、強い酸のにおいがするんですね。実は「悪臭防止法」という法律があるんですけれども、そこでも規制されている、非常に人に対して不快感を与えるにおい、ということになります。よく、納豆とか、チーズの腐ったにおい、こんな形で例えられますけれども、足の裏のにおいが強い方、実はこのイソ吉草酸が多く出ている可能性があります。
ベトベト汗はサラサラ汗に
――この、汗のにおいをなくす方法はあるんでしょうか。
関根:
はい。汗が出る「汗腺」、この機能を低下させないことが大切になります。ポイントは「サラサラ汗」です。
実は、この汗腺がきちんと働いていれば、汗は基本的にサラサラな感じになるんですけれども、この機能が衰えていますと「ベトベト汗」になってしまうんですね。ベトベトの汗が要注意でして、汗の中にミネラル分が多くなってしまいますと、乾きにくいということになりまして、皮膚の表面に長くとどまります。実は、このような条件を皮膚の常在菌は好むんですね。ですから、常在菌の活動が活発になりまして、くさいにおい物質をより多く発生させてしまう、ということになります。
――汗腺の働きが重要ということなんですが、どうすればベトベト汗にならないんでしょうか。
関根:
1つは適度な運動。これを習慣にするといいと思いますね。例えば、朝にウォーキングをしたり、そういったことによって汗をかく習慣をつけましょう。
それから、入浴はシャワーで済ませずに、浴槽につかって汗を出やすくする。これも大事ですね。汗腺を働かせる、これがとても重要なポイントになります。
実はですね、夏は暑いですから比較的よく、頻繁に汗をかきますけれども、汗腺の機能が低下しがちな冬とか春、こういうときのほうが、汗のにおいがジワジワにおってくる可能性が高いんですね。
――ちなみに、かいた汗をすぐに拭き取れば、においの発生も抑えられますか。
関根:
においが気になる方はやっぱりすぐ拭き取るべきなんですけれども、このときに乾いたハンカチとかタオルで拭いてしまいますと、実は、発汗がより増えてしまう可能性があります。ですから、できればぬれたタオルだとか、あるいは汗拭き用シート、こういったもので拭くことをおすすめいたします。
それから、髪を洗いますよね。そのときはすぐに乾かして、蒸れないようにするということも大切ですね。自然乾燥よりは、ドライヤーですぐに乾かしたほうがいいと思います。
――汗を抑える制汗剤などもありますけれども、これもにおいの予防になりますか。
関根:
そうですね、適切に使用すれば、汗のにおいを抑えるのに大変役立つんですけども、使い過ぎは逆効果になる可能性があります。
――どうしてですか。
関根:
使い過ぎますと、汗腺の機能を低下させる原因にもなってしまうんですね。
私がおすすめするのは、「機能性の下着や靴下」ですね。
最近は、すぐ乾く速乾性のもの、あるいは消臭や抗菌効果のあるもの、こういったものが多く販売されておりますので、そうしたものを着用することによって、におい予防を心がけていただきたいと思います。
靴が蒸れてにおいが気になるときは?
――靴が蒸れて、においが気になる場合はどうしたらいいでしょうか。
関根:
これは、大変気になりますよね。足のにおいを予防するには、まずは「足の清潔を保つこと」です。
例えば、余分な角質。この角質は常在菌の餌になりますので、角質のケアを行うとよいと思います。かかとがガサガサしているなと感じたら、行ってみましょう。
――最後に、きょうのポイントをお願いします。
関根:
運動・入浴で、汗のにおいは軽減できます。
【放送】
2023/07/05 「マイあさ!」
この記事をシェアする