【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年1月22日(日)放送の<DJ日本史>、テーマは「私はあなたが、嫌いです」。
あいつとはどうも肌が合わない、好きになれない、そんな相手っていませんか?
昔の人も人間関係で苦い思いをしたのは変わらないようですが、いがみ合う2人の間柄が意外な結果を生み、歴史に影響を与えたこともありました。2人の関係が歴史にもたらしたコトとは?


明治時代、大隈重信(おおくましげのぶ)福沢諭吉(ふくざわゆきち)はお互い嫌い合っていました。
大隈重信は後に総理大臣になる政治家、一方の福沢諭吉は「学問のすすめ」などの著作で知られる思想家でしたが、お互いよく思っておらず、大隈などは福沢のことを「気に食わぬ奴」とか「生意気だ」と公言していたそうです。

そんな2人に、明治の初め頃、ある出来事が起こります。
2人の共通の知り合いが大隈と福沢にドッキリを仕掛けたのです。
大隈と福沢は犬猿の仲だったわけですが、この2人を一度会わせてみたらどんなことになるだろう、と思いつき、それぞれにないしょで2人を呼び出したのです。
この時、大隈重信は30代半ば、福沢諭吉は40歳くらい。

いたずら半分で仕掛けられたドッキリでしたが、この後、予想もしなかった展開が訪れることになりました。


明治の初め頃、東京上野にあった一軒の屋敷に呼び出された、大隈と福沢の2人。
屋敷につくとお互い、「ん? 妙な人物がいるな」。
すると2人を呼び寄せた共通の知人がパッと登場、お互いを引きあわせます。
こうして2人は初めてじかに対面することになりました。

「犬猿の仲」
そう評判の大隈と福沢が直接向き合い、さてさてこれから、どんな激しい議論が始まるか?
ところが、事は思いも寄らぬ方向へ進んでいきました。
犬猿の仲だったはずの大隈と福沢、いざ話してみるとやり合うどころか、またたく間に意気投合。
最後はこう言います。
「けんかはやめよう。むしろ、一緒にやっていこうじゃないか!」

これをきっかけに、2人は家族ぐるみでお付き合い。
互いの家を訪ね、夜が更けるまで話し合うこともしばしば。
食事の膳を片付けかけると、福沢が「まだまだ」と言って、さらに話し込むこともありました。
後に大隈は東京専門学校、後の早稲田大学を創立しますが、これも福沢から多くの助言を得て実現したものでした。

なぜ大隈と福沢はこれほどひかれ合ったのか?
大隈重信の側近だった矢野竜渓(やのりゅうけい)は、こう語っています。
「一方は学者であり、一方は政治家であるというだけで、その性格はよく似ている。おそらく福沢先生を政治家にすれば大隈であり、大隈さんを学者にすれば福沢諭吉が出来たろう」

激しくけなしたかと思えば一転、強くひかれあった理由。
それは、大隈と福沢がとてもよく似ていたからだったのかもしれません。

DJ日本史「私はあなたが、嫌いです」①

DJ日本史「私はあなたが、嫌いです」②