【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2024年2月11日(日)放送の<DJ日本史>、テーマは「歴史を動かした、すご~いネットワーク」。歴史上では1人のずば抜けた個性の偉人が活躍することもありますが、反面、目立った人はいなくても、人と人との間に地道に張りめぐらされたつながり、広い結びつきが大きな力となって世を変えたこともしばしばでした。歴史を動かしたすご~いネットワーク、そのパワーとは?

1844年、明治になる20年余り前の頃、江戸の小伝馬町(こでんまちょう)のろう屋に収容されていた1人の政治犯が脱走しました。その政治犯の名は、高野長英(ちょうえい)。町医者でしたが、幕府の鎖国政策を批判して捕らわれていた人物です。

この高野長英、最後は捕り方に踏み込まれて自殺しますが、逃亡しつづけた期間はなんと6年以上。
水も漏らさぬ捜索の目をかいくぐって潜伏し続けたわけですが、この逃亡を陰でひそかに支えていたのが、ある、強力なネットワークでした。


逃亡した長英がまず頼ったのは、学者の仲間や長英の門下生たち。しかし、すぐに追及の手が及びます。
仲間たちは厳しい尋問や激しい拷問にも口を割りませんでしたが、これ以上逃げ通すのは至難の業。
そんなとき長英に手を差し伸べたのが、裏社会の事情に通じたある大親分でした。

長英は獄にいるとき同じろうの囚人に対して、病気の治療をしてやったり、字が読めない者に家族からの手紙を読んでやったり、何かと世話を焼くのですが、そんな囚人の中に一人の無法者の男がいました。
その男は、どんな人にも分け隔てなく親身に面倒を見る長英に心酔。出獄すると、長英のことを自分の親分に話します。

その親分が、東北仙台を拠点にする鈴木忠吉(ちゅうきち)という大物のきょう客。忠吉は一肌脱ぐことを決意し、全国に広がる親分衆のネットワークを使って長英の逃亡を手引きしていきます。
その方法、細心にして、実に大胆なものでした。

江戸のろうを脱走した高野長英がめざすは、母親がいるふるさと、岩手の水沢。ただ、その方面の警戒は厳重です。そこで大親分鈴木忠吉は、追っ手の裏をかく手を次々に打ちました。

陸路を行くのが危険と見れば、船を用意。街道筋を避けて荒れた裏道を行くときは、口の堅い案内人を手配。
さらに幕府の捜索をかく乱するため、驚く方法もとりました。
なんと、高野長英を見た!というニセの目撃者を仕立てて出頭させ、「長英は北海道に渡ると言っていた」とウソの証言をさせたのです。

こうして裏社会を知るきょう客のネットワークに助けられ、高野長英は幕府の目を逃れ続けていったのでした。

DJ日本史「歴史を動かした、すご~いネットワーク」①

DJ日本史「歴史を動かした、すご~いネットワーク」②