【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年12月24日(日)放送の<DJ日本史>、テーマは「あの人物の変な行動・奇妙なふるまい」。皆さんの周りには、ちょっと理解しづらい変わった行いをする人っていませんか? ただ、はた目には不可解にしか見えないふるまいも当人は本気も本気、実は目からウロコのかっとんだ発想をしていた、ということもありました。

持っているものすべてを突然幕府に返上して周囲を驚かせた、という大名の話です。
その大名とは江戸時代初め、今の愛知県の刈谷藩(かりやはん)藩主だった松平定政(まつだいらさだまさ)。彼の父親は徳川家康(とくがわいえやす)の弟、つまり彼は、家康から見るとおいにあたる人物でした。

その松平定政がある日、とんでもない行動に出て、幕府はおろか世間もビックリさせました。


3代将軍の家光がこの世を去った直後、1651年のこと。
松平定政は夜遅く妻を呼びつけるや、いきなり言いつけました。
「そなたとは離縁する。実家に帰ってくれ」
そして子どもたちも兄の元へ預けるや、驚く行動に出ました。

なんと、2万石の領地はもちろん財産すべてを幕府に返上したのです。
それだけではありません。
髪をそり落とすや、墨染めの衣を着て江戸市中でたく鉢を始めました。施しを求めて街中を歩き回ったのです。
これには、江戸っ子たちもびっくり。
「家康様のお身内がなぜ、かようなまねをされるのか」

これには、松平定政なりの理由がありました。
定政は領地返上にあたり、幕府の重鎮だった井伊直孝(いいなおたか)にこんな手紙を送っています。
「今、幕府を支える旗本たちは生活に困っている。だから、私の2万石を返上する。この2万石を5石ずつ分ければ4000人の旗本が助かるはずだ」

実際、当時は経済の発展につれて物価が高騰。反面、旗本の領地はモノの値段に合わせて増えるわけでもないため、やりくりに苦しむ幕臣が多かったのです。そんな状況に手を打てない幕府の老中に、松平定政は我慢なりませんでした。

結局この騒動で、松平定政は兄の所に身柄お預け。そして一連の行動は、定政の「ご乱心」ということで処理されていきました。

DJ日本史「あの人物の変な行動・奇妙なふるまい」①

DJ日本史「あの人物の変な行動・奇妙なふるまい」②