【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年12月24日(日)放送の<DJ日本史>、テーマは「あの人物の変な行動・奇妙なふるまい」。皆さんの周りには、ちょっと理解しづらい変わった行いをする人っていませんか? ただ、はた目には不可解にしか見えないふるまいも当人は本気も本気、実は目からウロコのかっとんだ発想をしていた、ということもありました。

元禄時代、上方歌舞伎の名優に、初代・坂田藤十郎(さかたとうじゅうろう)という役者がいました。彼は線の細いしっとりした色男がはまり役の人気役者でした。

この藤十郎、自分が身に着けるモノにあえて自分のサイズに合わないモノを使って周りから不思議がられたことがあります。
一体、どういうことだったのでしょうか?


坂田藤十郎が、遊郭に通うすんなりした色男を演じたときのこと。
藤十郎は舞台で履く草履を新調したのですが、出来上がった草履を見るや、作り直せ、と言い出しました。大きすぎる、というのです。
もちろんその草履は、藤十郎の足の寸法をきっちり測り、それに合わせて仕上げたもの。サイズが合わないはずがありません。
ですが、藤十郎は何を言われても一言、「とにかく、大きすぎる」

結局、藤十郎は作り直させた小ぶりの草履で色男役を演じます。周囲は首をかしげるばかり。
「どうしてあんな、履きにくい草履を使うのか?」

すると、藤十郎はこう答えました。
「芝居では、遊郭の庭で草履を脱ぐ場面がある。脱ぎ捨てた大きい草履が目に入ると、観客はでっかい足に興ざめして自分を色男と見てくれなくなる」

脱ぎ捨てる草履にさえ細心の注意を払った、坂田藤十郎。
行いの一つ一つに、周到な計算があったのでした。

DJ日本史「あの人物の変な行動・奇妙なふるまい」①

DJ日本史「あの人物の変な行動・奇妙なふるまい」③