【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年12月3日(日)放送の<DJ日本史>、テーマは「『うん』と言わせた、この一言」。相手に納得してもらえない、なかなか聞き入れてもらえない……そんな経験、ありませんか? 一筋縄でいかない人を説き伏せるのは、とても難しいこと。昔の人はどうやって頑固な相手をうなずかせたのでしょうか? たった一言で「うん」と言わせた、強力な殺し文句とは?

いこじになってしまったお年寄りを一瞬でニッコリさせた人物がいます。江戸時代の初期に老中を務めた酒井忠勝(さかい・ただかつ)です。

あるとき城で役人のちょっとした不手際があり、頑固で知られた老武士・大久保彦左衛門がカンカンに怒ってしまいました。
ところが、老中・酒井忠勝のある行動で、彦左衛門はたちまちにして機嫌を直します。大久保彦左衛門の気持ちをぐっとつかんだ、その方法とは?


江戸城では正月になると、亡き徳川家康のよろいを飾ってその前で餅を食べる祝いの行事「具足開き」が行われたのですが、問題はこのとき起きました。

大久保彦左衛門は一足早く空が明るくなる前から城に上がり、行事が始まるまで別室で待機していました。ところが気づかれないまま、彦左衛門抜きで行事が始まってしまいます。これに、彦左衛門は激怒!

「年老いたわしはもう用済みか。ならば、帰る!」

あわてた役人たちは口々に弁解、引き止めますが、彦左衛門は全く聞こうとしません。
そこで、老中の松平信綱が口をはさみます。

「役人たちは、うっかりしていた、と頭を下げておるではありませんか」

しかし、彦左衛門はおさまりません。

「うっかりして忘れた? ならば戦のとき、旗ややりをうっかり忘れたと言って通用するのか!」

彦左衛門はますますヒートアップ!

そこへ現れたのが、もう一人の老中・酒井忠勝。その対応が見事でした。
忠勝は、他の者とは違って何も言い返しません。その代わり、いきり立つ彦左衛門のそばにさっと接近、そして、ぐっと彦左衛門の手を握ったのです。

「ご老人のお言葉、ごもっとも。しかしながら、きょうはめでたい祝いの席です。それがしと一緒に飲みましょう」

すると大久保彦左衛門は機嫌を回復。事は、ま~るくおさまったのでした。

DJ日本史「『うん』と言わせた、この一言」①

DJ日本史「『うん』と言わせた、この一言」②