【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年6月18日(日)放送の<DJ日本史>は、『もうける極意は、一工夫!』というテーマでお届けしました。取り上げたのは、商いで一山当てた江戸時代の商人たち。彼らの中には、あっと驚く発想や思いつきを実行に移し財を成した人物もいました。意外な一工夫で一稼ぎ、その方法とは?

商売なのに「売らない」ことで一稼ぎした人物がいます。
その人物は、「蔦重」こと蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)
江戸時代中頃の本や浮世絵の版元で、滝沢馬琴や山東京伝、浮世絵師の喜多川歌麿や歌川広重、東洲斎写楽など名だたる人物を世に送り出した、今で言う名プロデューサーです。
この江戸文化の立役者と言われる蔦屋重三郎が生まれ育ったのは、遊郭があった江戸の吉原。
23歳のとき吉原の入り口で遊女を相手にした小さな本屋を開き、ここから、自ら出版も手がける“江戸のメディア王”にのしあがっていきました。

そんな蔦重が最初に世に出した本、それは「売らない本」でした。
蔦重が考えた、「売らない本」で一稼ぎする方法とは?


蔦屋重三郎が初めて世に出した本、その題名は『一目千本(ひとめせんぼん)』。ぱっと一目で千本の花を見渡せる、という意味で『一目千本』です。
そこに描かれていたのは、生け花の絵。ゆりに菊、ききょうやぼたん、そして水仙。それらの花が一つずつ、趣向をこらした器に生けてあります。
まるで生け花のお手本をまとめたカタログのようにも見えますが、実は、さにあらず。
一つ一つの花には、文字が記されています。それは、吉原に実在するおいらんの名前。
つまり『一目千本』は、吉原名うての遊女を花に見立てた本、つまり、おいらんたちを粋な趣向で紹介する本だったのです。

そんな『一目千本』、書店では売られませんでした。
本が置かれたのは、吉原の一流の妓楼(ぎろう)のみ。
おいらんがつきあいの深い上客だけにプレゼントする、特別な贈答品として使われたのです。
すると、この『一目千本』を手にするのは特別な意味を持つことになりました。
つまり一流の遊び人である証し、ステータスシンボルとなったのです。

こうなると、本に触れることさえ出来ない庶民の間では『一目千本』の話題で持ちきり。
「一体、どんな本なんだろう?」
そんな気分が高まってくると、蔦屋重三郎は再び動きました。
本からおいらんの名前を切り取り、今度は生け花の絵だけにして一般向けに広く販売。
江戸っ子の注目を大いに集めたのです。

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DJ日本史「もうける極意は、一工夫!」①

DJ日本史「もうける極意は、一工夫!」②