【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年6月18日(日)放送の<DJ日本史>は、『もうける極意は、一工夫!』というテーマでお届けしました。取り上げたのは、商いで一山当てた江戸時代の商人たち。彼らの中には、あっと驚く発想や思いつきを実行に移し財を成した人物もいました。意外な一工夫で一稼ぎ、その方法とは?

「運び方」を工夫して一稼ぎした人物を紹介しましょう。

河村瑞賢(かわむら・ずいけん)は江戸時代の初期、貧しい農民から身を起こし材木商となった人物です。
江戸を焼き尽くした「明暦の大火」のとき、「復興には大量の材木が必要になる」と気づき、いち早く今の長野県の木曽に出かけて大量の木を買い付け大もうけしたことで一躍有名になりました。

この河村瑞賢、あっと驚く発想や手段で人を出し抜くことがたびたびありましたが、ここで紹介するのもそんなエピソードの1つ。
河村瑞賢は木材の「運び方」を工夫することで、誰も手をつけられなかった商いをやってのけたことがありました。果たして、その一工夫とは?


今の神奈川と静岡の県境、箱根の地に、見事な木がたくさん生える森がありました。
そこの巨木を切って材木にすれば、大もうけできるのは確実。ところが問題がありました。
それは、運搬方法。
その森は山のずーっと奥にあり、道も通っていません。木を切り倒しても運び出す手段がなかったのです。そのため材木商たちはみんな、諦めていました。

ところが河村瑞賢は、その地の領主に申し出ます。
「この森の木材、どうか、私に取り扱わせてくださいませ」
瑞賢は許しを得ると人夫を山に入れ、巨木を切り倒しました。
さあ、問題はここから。
瑞賢は切り倒した大量の木を、どうやって運ぶつもりなのか?

そうこうしている内、やがて季節は冬になり、箱根の山に雪が降りだしました。
河村瑞賢、この時を待っていました。

瑞賢はまず、山の斜面に積もった雪をどんどん谷へ落とし、次に凍りついた山の斜面を滑らせて巨木を谷へ落としました。こうして谷底には、大量の雪と巨木があふれることになりました。
その上で谷を流れる川に堤を築き、流れをせき止めます。

そして季節はめぐって、春。
谷底には大量の雪どけ水がたまり、水面には切った巨木が浮かんでいます。
これを見た河村瑞賢、堤を壊しました。
すると巨木は大量の水に流され、どんどん河口へ。ついには港へ流れつきました。

こうして河村瑞賢は、大量の巨木を運び出すことに成功したのでした。

DJ日本史「もうける極意は、一工夫!」②