【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年6月18日(日)放送の<DJ日本史>は、『もうける極意は、一工夫!』というテーマでお届けしました。取り上げたのは、商いで一山当てた江戸時代の商人たち。彼らの中には、あっと驚く発想や思いつきを実行に移し財を成した人物もいました。意外な一工夫で一稼ぎ、その方法とは?

商品の「色」を工夫して一稼ぎしたのが、江戸時代初めの頃の商人、西川甚五郎(にしかわ・じんごろう)
彼が扱っていた商品は、「蚊帳」。寝床に蚊が入らないよう部屋の中に吊るす網状の道具のことです。
西川甚五郎は、その蚊帳を江戸に店を構えて販売していました。

当時江戸は湿地が多く蚊がたくさんいたため、蚊帳は江戸っ子たちの必需品。ただし商売の競争相手も多かったので、西川甚五郎は「商売敵と差別化する方法はないものか」と考えます。
そんな中で思いついたのが、「色」の工夫。
この一工夫で西川甚五郎は大もうけしたばかりでなく、江戸っ子たちの暮らしぶりまで変えることになりました。果たして、その工夫とは?


江戸時代の蚊帳は麻の糸で作られていました。そのため蚊帳は元々、麻の色そのまま、茶色っぽい地味な色をしていました。
西川甚五郎がそんな蚊帳の色を工夫しようとしたきっかけ、それはある日の体験でした。

身を焦がす太陽がさんさんと照りつける、夏の盛りのこと。
仕事で旅をしていた西川甚五郎は、険しい箱根の山にさしかかるや吹き出る汗をぬぐって木陰で一息つくことに。しばらくすると暑さで疲れたせいか、うとうと眠ってしまいました。
すると夢の中に、すがすがしい光景が現れました。

見えてきたのは、一面に広がるつたの若葉。降り注ぐやさしい日ざしが、みずみずしい緑を浮かび上がらせます。
気分は爽快。さわやかな心地の中、甚五郎は思わず「ひょっとして、仙人の住む異界に迷い込んだか」と錯覚するほど。気がつけばすっかり、暑さを忘れていました。

この夢で、西川甚五郎は考えます。
あの若葉の色、蚊帳に生かせないものか。
そこで作ったのが、みずみずしい緑=「もえぎ色」に染めた蚊帳でした。
この蚊帳が、大ヒット!
暑さを忘れさせてくれる色の演出が、江戸っ子の気持ちをぐっと、わしづかみにしたのです。

単に蚊を防ぐだけでなく、夏の気分も彩るもえぎの蚊帳。
やがて浮世絵などにも描かれ、江戸を代表する夏の風物詩にもなりました。

DJ日本史「もうける極意は、一工夫!」①

DJ日本史「もうける極意は、一工夫!」③