【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年5月7日(日)放送の<DJ日本史>は、『お見事! ピンチを切り抜けた、とっさの機転』というテーマでお届けしました。突然の非常事態が発生、まごまごしていたら状況は悪くなるばかり! そんなとき大事なのが、とっさの判断。パッと先を読んだ素早い行動が運命の分かれ目になり、その後の歴史を変えることだってありました。見事な機転で窮地を脱した歴史上のエピソード、見ていきましょう。

江戸時代の初めの話です。
福岡藩の重臣を務めた小河(おごう)家には、短気で知られた若様がいました。
この若様のペットが、鳥のうずら。このうずら、よくしつけられて籠から出されても逃げず、若様が手を差し出すとちょこんと乗ってきたそうです。そんなうずらを、若様はかわいがっていました。

ところがある日、若様の外出中に、このうずらをめぐってとんでもないことが起きてしまいました。


若様が外出するや、そばで仕える小姓たちは若様に断りなく、勝手にうずらを籠から出して遊び始めました。
ここで、思わぬことが発生! 物陰から突然、猫が飛び出してきて、なんとうずらを食べてしまったのです。
小姓たちは真っ青。
「あの気の短い若様に知られたら、何をされるかわからんぞ!」

そこで小姓たちは家の当主、つまり若様の父親である小河之直(おごう・ゆきなお)に、ことの次第を打ち明けました。
話を聞いた小河之直、パッと一言、こう言います。
「町で別のうずらを買ってきて、籠に入れよ」
小姓たちは言われた通りにしたものの、よくしつけられた例のうずらと買ってきたうずらは大違い。
すぐにバレると半信半疑。しかし小河之直、そんなことはもちろん承知していました。

若様が帰ってくると、小河之直は自分にも自慢のうずらを見せてくれと頼みます。
何も知らない若様、うずらを籠から出しました。
すると、しつけられていないうずらは、あっという間にどこかへ飛び去ってしまいました。
あぜんとする若様に、小河之直は言います。
「道理がわかる人間でさえ、恩を忘れ出ていくこともある。うずらが出ていくのは、しかたなかろう」
そして、こう付け加えました。
「あのうずらは生きているうちに故郷へ帰れた。お前は、よいことをしたのだ」

こうしてコトを取り繕う一方、若様をうまくなだめて問題は決着。
小姓たちは、恐れていたとがめを受けることはありませんでした。

DJ日本史「お見事! ピンチを切り抜けた、とっさの機転」①

DJ日本史「お見事! ピンチを切り抜けた、とっさの機転」③