【出演者】
松村邦洋さん
堀口茉純さん
川久保秀一さん


2023年5月7日(日)放送の<DJ日本史>は、『お見事! ピンチを切り抜けた、とっさの機転』というテーマでお届けしました。突然の非常事態が発生、まごまごしていたら状況は悪くなるばかり! そんなとき大事なのが、とっさの判断。パッと先を読んだ素早い行動が運命の分かれ目になり、その後の歴史を変えることだってありました。見事な機転で窮地を脱した歴史上のエピソード、見ていきましょう。

1333年、後醍醐天皇は鎌倉幕府を倒して「建武の新政」を始めますが、その少し前の話です。

鎌倉幕府の打倒に執念を燃やした後醍醐天皇の皇子、護良親王(もりよししんのう)は、敵の捜索の目を逃れて奈良県にある般若寺(はんにゃじ)に潜伏します。
しかし、これが敵に知られて大軍に包囲されてしまいました。さらに悪いことに、このとき警護の者は出払って寺には護良親王1人という状態。

大軍に囲まれ味方はなしという絶望的な状況の中、護良親王はピンチをどう切り抜けたのでしょうか?


護良親王は自害を覚悟しましたが、思い直します。
「死ぬのはいつでもできる。ここは、いちるの望みをかけてどこかに隠れよう」

護良親王は、仏を安置している仏殿に入ります。
そこで目に入ったのは、経典を納めた3つの大きな箱、いわゆる櫃(ひつ)。
そのうち2つには蓋がしてありましたが、1つは蓋がなく中の経典が丸見えになっていました。
ここで護良親王、とっさの機転を働かせます。
護良親王が入ったのは蓋のある櫃ではなく、蓋のない方の櫃。そこに入ると、経典の巻物の中に身をうずめました。

まもなくして、敵兵がどかどかと押し入ってきました。
兵が怪しんだのは、蓋のしてある方の櫃。敵兵は中の経典を全部取り出して中をあらためます。
2つを調べ終え、残すはあと1つ。すると、兵が言いました。
「蓋が開いたものなど、あらためるまでもない」
そして、敵兵は仏殿を出ていきました。

見事、敵のウラをかいた護良親王! ところが、コトはこれで終わりませんでした。
なんと、先ほど出ていった敵兵が再び戻ってきたのです。
「やはり、もう1つの櫃も気がかかりじゃ」
そう言って、蓋の開いた方もあらため始めました。万事休す、か。

ところがです! 敵兵は、経典の巻物以外何も見つけられませんでした。
実は護良親王、敵兵がいなくなった隙に蓋がある櫃の方へ移っていました。一度調べたものを再びあらためることはない、と踏んだのです。

こうして敵を欺いた護良親王、無事にピンチを切り抜けることが出来たのでした。

DJ日本史「お見事! ピンチを切り抜けた、とっさの機転」②