第8回「デジタル時代のNHK懇談会」議事録

吉岡委員  今は、とりあえずテスト段階で、イギリスでやるとしますと、それをもう少し一般化したときに、たとえば、東京から簡単にアクセスができる。伝送路はもう少し広くないとできないと思いますが。

和田担当局長  そういうモデルを作ればそれは技術的に可能です。それを当面やろうとはしないと思いますが、それは可能です。

吉岡委員  つまりテレビと放送の、先ほど、通信と放送の融合という問題が出ましたが、もう一つ特色があって、放送というのは、今は国内に限定された事業ですね。もちろん衛星放送でもってCNNが見られたり、NHKの衛星放送が台湾や韓国で見られるということはありますが、そういう問題ではなくて、基本的に放送には国籍がある。言語の問題もありますが、国によって分れています。そういうビジネスモデルを構築している。ところが、通信というのは、イギリスでやっているものをリアルタイムではなくて、国境を越えて取りにいけることになりますね。

和田担当局長  そうです。それは日本のインターネット企業も来年の春くらいから新たな試みを始めます。このサービスは世界中からコンテンツを集めて、世界中どこからでもアクセスできるサービスです。
 それは、つまり放送事業者をシンジケートして、まさに世界の放送コンテンツのデータベースを作ることです。それによって、世界中からそこにアクセスできるという仕組みを開発している。

吉岡委員  そうなると、我々が議論をしてきたサーバー型というのは、つまりどういうものになるのですか。つまり世界中に拡大し、深化していくネットワークの猛威があって、そこに玉石混淆の番組を集積した、いわば番組データベースができます、と。そこに玉石混淆のソフトを集めたサーバーができる。しかし、我がNHKはそれとはちょっと違いますよ、ということになるのですか。そういうゴッタ煮のような放送コンテンツを集積するのではなく、独自の、NHKの番組だけを集めたサーバーを作ります、という話として理解されるのではないですか。

和田担当局長  我々としては安心・安全のコンテンツというのを提供する義務があるということでずっとやってきて、我々の信ずるところのコンテンツを作ってきたわけです。我々はNHKのサーバー型サービスの中に、ポータルを作って、そこでNHKのサービスを出していくという考えです。それがいくつも集まってくるわけです。
 ですから、サーバー型サービス全体でみれば、NHK以外の放送局はもちろんですが、その他の新たな新規参入業者も出てくるかもしれません。つまり、役務利用型のそういう人たちも、新たに出てきて、それぞれがポータルを作ってお互いに競争するという世界です。
 そこでは我々は、これまでとおり安心・安全なコンテンツで、新たな参入者と対等に競い合う世界です。

吉岡委員  そうすると次の課題に入るのかもしれませんが、そうやって世界のあちこちに放送コンテンツを集めた銀行のようなサーバーができ、ネットワークによって家庭のテレビとつながり、広がってくる。放送業者もやるでしょうし、いろいろコンテンツの問屋さんができて、バンクを作ってやることがあるでしょう。それぞれが利潤追求のビジネスになっていきますね。ここに、民放が通信事業者と組んでやることもあるでしょう。そういうなかで、NHKはどうするのか、という話になります。NHKは視聴者のみなさんのお金で作った、質の高い番組をサーバーに蓄積して流すようにします、と言っても、それは採算が合うのかどうか、という問題が出てきます。公共サービスの一つとしてやりましょうとなると、これはビジネスということではない。いまされている議論では、ビジネスのこと、利潤のことを第一には考えていないですね。そうすると、では、そのときの受信料体系はどうなるのか、ということになるのだと思います。つまり、無料でやるわけにはいかない。システム自体のコストがかかりますし、番組制作という原価ももちろん必要で、そこで受益者負担という話をしているのですが、これまでのNHKの経営を考えれば、受信料だけでできそうもない、となれば、別個の収入の仕組みを考えないといけないわけでしょう。そこで、つまり、NHK全体としての収入を増やしていくために、これまで受信料でやっていたけれども、これ以上、いろいろな事情があって、受信料を上げるわけにいかない。この新しいサーバー型サービスを始めることによってコストだけではなく、プラス・アルファ、あえて言えば利潤を生みだすことを考えて、全体としてはNHKの受信料収入を増やしていくと考えているのでしょうか。これは技術の話ではなくて、つまりビジネスモデルとしての話ですが。

辻井座長  そこはNHKとしては、収入を増やそうという魂胆はない、と。

吉岡委員  そういうふうに言ってしまって、いいのですか。

辻井座長  つまり「対価」と言っている意味は。

橋本会長  公共放送としての役割から考えると、受信料の考え方の延長線上であって、敢えて利潤を増やして、いわゆる株主配当をするとか、儲けを出そうという発想は無いということです。原価主義だということになると思います、その方向で番組を作っています。

江川委員  インターネットと放送の融合なのか、補完なのか。たとえば堀江さんがフジテレビを、あるいは三木谷さんがTBSを、というように、通信の方から放送を飲み込む、あるいは、そちらの方から利用しようという動きがあるわけです。それと、同時に放送の方が通信を利用していこうという動きがあって、どっちが望ましいかということだと思います。
 もちろん両方あっていいのだと思いますが、私が通信、つまりインターネット側が放送を飲み込んでいくということに対して、若干危惧を感じたのは、市場至上主義と言いますか、つまり、儲かるものはやるけれども、そうでないものはやらないというのがはっきりしている。ただ、放送の方は民放だってもちろん儲かるものをやろうとしているけれども、そうではない部分が何割か、何パーセントかあるわけです。
 NHKの場合はそうでない部分がほとんどなのでしょうが、どっちの方から仕掛けていくのかということが、いまはすごく、せめぎ合いのところだと思います。
 放送は放送で、民放だ、NHKだと言っている場合ではないと思うのです。それをどうやって、今の時代を大局的に捉えて、むしろ民放にも利益になることができるかどうか、ということかと思います。
 お金のことについては、収入源になっていいと思いますが、そこに持っていくまでに、ものすごい時間がかかるし、お金もかかるから、むしろ最初は逆に受信料でそれを援助しなければいけない状況にはなるかもしれないと思います。

辻井座長  サーバー型については、これまでの放送は、「民放とNHKの二元体制の中で切磋琢磨」というように言われていたわけですが、これからは、「多元体制の中で切磋琢磨」というか、NHKらしいことをやっていくことなのか。整理させていただきますと、要するに、遠い将来は別として、現在のところは、サーバー型は「あまねく」ではない。
 基本的には、使う人が受益者負担というかたちで対価を払うべきでありましょう。しかし、公共性、さっき言われた安心・安全とか、それから、教育における先導性などを考えながらやっていきましょうということだと思います。
 両方を睨むのだけれども、基本的には現在のところは「あまねく」ではない対価という形になるのかということです。普通の放送で流したものを利用したりするわけですから、そのへんの会計処理で、両睨みを生かしていただくのかと思います。そうしたときに、要するに法律改正が必要な程度になるかどうかというあたりですが、直感的にどうも放送法を変えた方がいいのではないかという方は、ちょっと手を上げてください。

吉岡委員  多数決でやっていいようなものかどうかわからないけれども、それが壁になっていることは間違いないので、変えたほうがいいと思います。

辻井座長  そんなに多数でもないですね。

藤井委員  先ほどの議論でいうと、放送法の手直しありきという考え方ではなく、この議論や検討を詰めていく中で、おのずと現行の放送法を改正しなければならない点と、運用で可能な部分とに仕分けすることができるのではないでしょうか。

辻井座長  ちょっと乱暴なことを言いましたが、第一次放送政策研をやったときの経験から言うと、現在の法律の枠の中でやろうとすると、非常にコンサーバティブになります。そういう印象を持ったものですから。

吉岡委員  頭の片隅に置いておくことにしましょう。

3.受信料体系の見直しについて
  ・NHK説明  【資料5】

辻井座長  それでは、サーバー型を中心とした対価の問題は終りまして、次に受信料体系というのが、少し議論を分けていますが、受信料体系はこの間から永井さんなどから出していただいている学生の問題とか、単身赴任者など、家族構成も多様化しているなかでどう考えたらいいか、このへんについてはNHKから説明をいただきます。

小林理事  それでは、ごく短時間でご説明を申し上げたいと思います。この問題は先ほどの話と違いまして、あくまでも放送法、受信料制度の枠内でというものです。視聴者のみなさんから、「今の受信料体系は不公平である」「是正すべきではないか」といった多くの意見をいただいていることに関してです。すでに新生プランでも、学生あるいは単身赴任者の割引制の新設等につきまして検討するということを記載しています。
 いずれにしましても、来年度からの経営計画の中で、なるべく早く実施して、少しでも不公平感の是正をしていきたいという思いを込めてやっていきたいと思います。
 資料5に方向として書いているのは、学生ならびに単身赴任者、いわば同一生計の中でいくつもお金を払わないといけない方について、まず着手していきたいというものを盛り込んでいます。それによって、少しでも公平感の高い体系にしていく。その第一歩としたいというものです。ですから、これだけで終りという意味ではありませんが、当面はそれで行きたいところですのでご説明をしたいと思います。
 資料の1ページは、「受信契約単位の変遷」でして、これは社団法人が始まって以来のそれぞれの歴史が書いてありますが、1950年、昭和25年に放送法によるNHKが成立しました。放送法、受信規約制定、実は受信料体系は全部受信規約で定められております。現行でいう総務大臣の認可事項であるということですが、原型はそこにあります。それから最後は、今の基本形とも言うべきものです。昭和43年、1968年にカラー料金が設定されました。
 その時を機にしまして、基本的には契約単位を世帯単位ということで確立したというものです。通常のご家庭であれば、世帯単位、事業所であれば設置場所単位です。これが今につながっているものです。これは今から37年前のことです。
 その後の変更としては、89年、平成元年に、衛星放送の料金が設定されたというのがあります。その翌年、平成2年、90年ですが、その段階で受信料を値上げしたことがあります。
 受信料につきましては、それ以降は基本的には変わっていません。消費税関連の見直しはありましたが、料金も据え置き、体系もそのままというのが大きな流れです。15年間据え置かれています。
 「受信料体系の推移」で、先ほどと関連することですが、真ん中の1984年4月、口座振替料金での口座払いを。あるいは89年には継続振込として、コンビニ等で、振込用紙で振り込んでいただく方法を開始しています。いわゆる地域スタッフが取りに行かないで、間接的に払っていただけるシステムをこの段階で導入したというものです。
それから、右側には、料金体系の中でのマイナーチェンジとして、衛星契約者は多数で申し込んでいただければ一括割引、あるいはCATV等の加入者の方に関しては、団体一括割引等を行っていますが、そういった割引制度を一部導入したというのがあります。
 3ページには、これまでのデジタル懇談会で議論をいただいて公開されました議事録の抜粋です。固有名詞が書いてありまして大変失礼ですが、こういったご意見をいただいているということです。永井委員からは、一つの家計で、親元を離れた学生と単身赴任者を有する場合、契約が3つも必要だが、それは不公平ではないかというご趣旨の発言をいただきました(第1回)。家本委員からは、学生のインセンティブとして受信料の割引制度を導入し、支払う習慣をつけてもらえれば、社会人になってからも支払う動機づけとなるのではないかというご意見をいただきました(第3回)。藤井委員からも、家族形態が非常に多様化しているという根本問題を考えないと具合が悪いのではないか(第3回)というご意見をいただいています。
 4ページは、それでは当面どうするのかということで、この4ページが方向です。基本的な考え方として、左側に課題が書いていますが、平成2年度に値上げして以来、基本的には体系を変えていないということで、先ほどのご指摘も含めて、社会、経済の変化、世帯の変化等々、いろいろな状況変化があって、それについての不公平感がかなり出ていることで、見直そうということです。
 もちろん、この不公平感につきましては、未契約と既契約というかたちでの不公平ももちろんあります。ここに置いている課題については、まず契約をいただいてお支払いいただいている方について、その差をまず解消するものです。
 右の方から(図の矢印)、見直しの方向です。当面、学生、単身赴任割引を新設していこう。これを来年度、平成18年度になるべく早い時点でやりたいということです。早い時点と申しましても、システム改修や準備等もありまして、あるいは周知が必要で、早くてもぎりぎり来年の年内スタートになるかもしれませんが、新設していきたいというものです。
 まだ、割引はどの程度にするのかにつきましては、現在、詰めているところです。たとえば、他の企業では、携帯電話の割引、ファミリー割引25%、ものによっては5割もありますが、そういった割引の状況を勘案しながら、社会的な許容の範囲での割引をしていきたいという検討を進めています。
 それ以外にも、普通契約、白黒テレビの方の契約で、いまでもそんな人がいるのかというご指摘をいただいていますが、現実には37万の契約があります。その契約につきましても、今後、どうしていくのか。方向として白黒契約は廃止、通常の契約に一元化したいというものです。
 なぜ、そういう人が多いのか。NHK自身に、調査権、捜査権、立入権がないものですから、申告によって契約をいただく。白黒の方がそのまま来ていらっしゃる。カラーになっていませんかという問いかけをしていますが、なお「白黒だ」と言われると、「もし、次にカラーになったらご連絡ください」と言って帰らざるをえないということで、白黒契約が継続されていることで、全体の契約総数からすれば、僅か1%ですが、数の上では37万です。それも年々数万件ずつ減少していることも事実です。
これについては、積極的にその解消に向けて努力していますが、料金体系の見直しの中では、もう時代に合わないということで、希望としては、いずれ見直すというよりも、カラー契約に一元化していきたいという思いを持っています。
 また、現在、前払いの割引をしておりますが、NHKの場合は金利が高い時代の割引で、今思えば高いということをどうするのか等々、いくつか検討すべき要素はありますが、当面、すぐできるものを早く着手していこう。当面は、学生ならびに単身赴任割引をしていきたいということで鋭意詰めているところです。
 5ページに学生割引、単身者割引導入の検討経緯が書いてあります。先ほどから申し上げていることを書いています。
 次に、割引に伴って減収になるのではないかということについて、確かに減収になると考えていますが、我々としては、公平感をよりアピールすることで全体の契約を増やしていきたいと思います。現在、単身者の契約は6割程度ですので、そういう契約率そのものも上げられるのではないかという期待も込めてやっていきたいと思います。いずれは減収からプラスに転じていけるのではないかということを想定しているものです。
 学生については、訪問しても不在の方が多く、お会いするのが難しくて、現実に契約は5割弱ですが、これにつきましても、すでに実態的には学生は3か月、4か月は下宿先から不在になる。内規的に、家もとに帰る間は受信料をいただかないという、(実質的な割引の)料金体系でいただいているので、今度の改定については、実際に制度化する。後付けする形になります。したがいまして、受信料収入に影響はそんなに多くはない。むしろ増収につながるかもしれないということです。これもどういう割引にするのかで決まっていくものと考えております。
 6ページは参考資料で、「受信料体系契約者別のこれまでの推移」ということで書いています。説明は以上ですが、受信料体系の変更、見直しについては、あくまでも現行受信料制度の枠内ということです。それにしても、総務大臣の認可事項で受信契約に明記しないといけないということで、早めに検討を進めています。将来のメディア状況の移り変わりということもあります。あくまでも、今直せるものは視聴者本位という立場で直していこうということで早急に着手しようというものです。


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