第8回「デジタル時代のNHK懇談会」議事録

永井委員  学生も払ってくれるといいなと思います。それから、今回の見直しには、今後のワンセグの携帯で見る放送や、サーバー型のことに関しての検討、課題はあったのでしょうか。

小林理事  携帯電話等で受信される方、あるいは自動車のナビでテレビ映像を見ている方など、いろいろな方がいらっしゃいます。いわゆるモバイル系ですが、今のところはまだ現行の受信料制度の延長線上で、ご家庭であれば世帯で1契約をしていただいている分には何台持っても、契約はその中でやる。新たな契約をいただきません。
 ワンセグについては、後ほど中川理事から話があると思いますが、今のところ、既存のものとは解釈が違うことになりうるということで、これにつきましては、関係先との話の中で、どうしていくべきか、改めて決める要素があると思っています。
 当面はそういう状況で、サーバー型というのは、最近はやりのハードディスクレコーダーというもので、自分でメモリーしておくと、スポーツ、歌手の誰それだというと集まってしまう。ある種のサーバー型放送を取り込んだような実態もあります。今は受信料体系の中で一切いただくことはございませんが、先ほどのワンセグを含めて新たなサービスを展開する。つまり、サイマルではないとなった時にどうするのか、これからの課題だと思います。
 
辻井座長  ワンセグについては、何かご意見はありますか。

永井委員  とくにございません。さっきのサーバー型で一言、民放の立場から言わせていただくと、たぶん巨大ソフト産業の話があった時に、大変な競争力をもった海外のコンテンツ屋さんが来るという印象でお聞きになったと思います。
 コンテンツの制作力もそうですが、アーカイブスからしても、NHKは圧倒的な優位性があると思います。というのは、民放はフィルムの時代の制作物というのはほとんど焼いてしまった時代があるのです。それからもっと言うと、著作権を持っていないものがたくさんある。アーカイブスの量からして圧倒的な優位性がNHKのコンテンツに関してはあるので、この優位性を持っている今のうちに、もっと積極的に10億円と言わず、サーバー型のチャレンジを私は見てみたいと個人的に思ったので、民放にもと居た立場としてそういう印象をもっております。

辻井座長  私と同期でNHKに入った者が言っていましたが、会計検査の時に問題になるのは、何回消しては録画したか、その回数が問題になったという位だったようです。NHKは、いつ頃からのものが利用できるのですか。

橋本会長  これは権利がどういう形態で、どういう有効期限で何回使うかという、それぞれのものによって違うわけですので、一概には言えないわけです。
 権利とは放送権、著作権とは別にVTRテープは昔高かったので、何回も消しては使ってやったという話はあると思います。あまり何回も繰り返すと、画像がドロップアウトしたりして傷がついたりするので、使えなくなることもあったということなのです。

辻井座長  受信料体系というのは、とりあえずは、ここでは世帯、家族構成への対応を考える。

橋本会長  そうです。今、移動体とか、ワンセグとか、サーバー型放送についても、1ページの下の行で読むことになります。ワンセグは移動体というところで読むことで、サービスの形態によっては新しい時代で見直す必要が有りや無しやという議論になると思います。

江川委員  ワンセグはお金を取らないという方向ですか。

橋本会長  まず、いま出ているワンセグについては、お金を取るといっても、世帯の中で何も他にテレビがなければ、いただけるという状態にはなるのです。
 だいたい携帯テレビしか持っていない方というのはいないでしょうから、期待できないという意味でお金は取れない。

江川委員  これは新たな技術を導入するわけですから。

橋本会長  スクランブルとか何とかいう、そういう技術でいえば、今の携帯にはそれは入っていませんから、それは使えない。

小林理事  お宅にあるテレビと、小さな画面の携帯電話のテレビと、大きさも使い勝手も全然違います。それは今で言えば、同一料金でいただかないといけない。それに現実に携帯だけ持っている方に、受信料の契約にいただきにあがるということがなかなか今の時点で難しいということも悩みでもあるのです。

江川委員  携帯には有料のがいっぱいありますが、そのようにはできないのですか。

小林理事  キャリアを使っての月額有料制のことだと思いますが、NHKは受信料制度におきましては、スクランブルと有料制と何が違うのだという、いろいろな議論にもなるということで、その点はやはり整理したうえでやっていく必要があろうと思います。関連会社は、自主業務ですでにやっております。本体が受信料制度を基にやれるかどうかについては、少し議論をしないといけないと思います。

中川理事  総務省と、そのあたりはいろいろ議論をしていきたいと思いますが、現実的に言っても、キァリアを使えばいいと言っても、キャリアが嫌がると思います。

江川委員  先ほどの金澤先生のように、法制度よりも人間の意識というところが大事だというお話もあったと思いますが、携帯のコンテンツにお金を出して買うことにはあまり抵抗は無いですね。

中川理事  それはたとえば、携帯電話を契約の時にNHKの放送も見るというので、「お宅で契約をしていなかったら、一緒に契約してください」とお願いしても、なかなか、「受信料払います」とはいかないと思います。現実的には、「契約しています」とおっしゃるに決まっています。「NHKと契約していませんから、払います」とは、たぶん、どなたもおっしゃってくださらないでしょう。

藤井委員  私は、この問題は受信料体系と、徴収体制の二つの課題があると思います。財政基盤をしっかりとしなかったらNHKは大変になると思いますから、財政の確立をきちんとしなければならないのは当然です。ラジオ受信料が廃止されてテレビ受信料に一本化された1968年から37年間で世の中がどう変わったかというと、一つは、世帯という体系が壊れたのです。核家族化が進んでいる、また夫婦別姓等も今後も進んでいくかもしれない。もう一つの時代の流れでいうと、収入の少ない人たちが増えてきているということがあると思います。今は、介護保険にしても国民年金にしても未払いとか、未納者が考えられないほど多いわけです。
 そうすると、モラルの問題からくるのか、本人の所得水準からくるのかわかりませんが、「ニュープア」という言葉が出ていますように、所得格差が大きくなり、今後ますます拡がっていく様相にあります。そういうことを考えたときに、ずっと世帯単位でいいのかどうか。
それから江川さんがおっしゃったように、機器がかなり個人用の媒体に変わってきて、利便性が高い。自分にとって都合のいい機材を持っていらっしゃる方とそうでない方との差がついている。
 私は、いずれ個人単位の流れを探求していくことがあってもいいのではないかと思います。徴収体制でいうと、北風方式と太陽方式があると思います。太陽方式というのは、良い番組を作って、みんなが払いたくなるような気持ちになることであり、NHKはこのことをもっと探求していくべきだと思います。
 しかし、モラルの低下が目にあまり、これによって収入減となるのはこれはこれで問題です。何らかのペナルティや強制力をもった徴収方法を講じなければならないのかもしれません。ただ、その場合にはペナルティや強制力を持った徴収方法そのものを、ひろく国民的な議論で考えていくべきです。ぜひとも、NHKの番組でこうした議論をする場を作って、こういうメンバーだけではなくて、広く市民・国民の議論や意見を啓発的な意味を含めて考えていくということをもう少しすべきではないか。
 本日示された原案だけで、これがいいという選択はできないように思います。もう少し先の20年を見た場合に、家族形態はもっと変わっていくと思います。そうしたときのために、もっと幅の広い議論があってもいい。繰り返しになりますが、私はもう少し個人単位を意識する議論があってもいいのではないかと思います。

辻井座長  ひとり暮らしだと個人即世帯になります。配偶者と子どもがいるような人は、個人単位よりは普通の勘定だと世帯でやった方が得だということになります。そのへんでどちらを選ぶかという選択制があるのでしょうか。
 この話はだいぶ前にも一回やりました。記者会見で、どっちが多かったのだと聞かれ、流れとしては個人という方向の議論がずいぶん出ましたと。それでは、お前はどうだと聞かれたので、私は選択制だと言ったのですが、そういうものもあるのかと思います。

橋本会長  それは個人料金と世帯料金をお客さんの側で選択するわけですね。

辻井座長  どうですか、山内委員、新開委員は。

山内(豊)委員  私は先ほど、ワンセグの試験放送を見せてもらいましたが、今の説明を聞いていて、実際にあれを見てお金を払ってもらうことは現実的に難しいだろうから仕方がないですということにしか、説明が聞こえないのです。
 携帯電話の普及度とあの利便性と、これからのいろいろな可能性を考えたときに、非常に大事なチャンスをみすみす失しているような気がして仕方がない。サイマルでやっているうちは仕方がない、お金を取れもしない。NHKはこれだけ携帯の方にもサービスをしているのだから、今の受信料体系の中で受信料を払ってくださいということでしか携帯サービスを使えないわけです。
 次に独自のコンテンツを提供する段になったら受信料体系も放送法もいじらないといけない。その時までは手が付けられませんというふうに聞こえるのです。それで本当にいいのかな、もったいないのではないかな、という気がします。
 たとえば、通勤途中でいろいろある、災害があるという時に、非常に重要なツールです。そういう機能を持っているところに、従来放送だからお金は取れない、仕方がないということだけで本当に済ませていいのか。来年4月、ワンセグのサービスは始まります。財源確保の面で現実的には直ちにどうこうはできないかもしれないけれども、申し上げたいのは、おっしゃるようなことであれば、次にいろいろな可能性を持ったことだけれども、今はいろいろな制約があって、お金は取れませんが、NHKとしてはいろいろなことを考えるので、そのときには良いものを送るからお金を出していただけるような世の中にしてくださいという構えをいろいろなところで出して行かなければ、いつも後ろ向きになって、制度が変わらないからお金を取れないとなってしまうような気がしています。これは感想です。

中川理事  一言、それに関して、制度的に取れないということを申し上げているのでなくて、今のワンセグでは、たとえば、BS放送でやっているCASというのはまだ入りません。そうすると本当に使っているのかどうかは、受信機能を持っておられても、実際にご覧になっているのかどうか、わからないわけです。
 法律にしたがえば、受信設備を持っている人は契約しなくてはいけない。ただ、契約は世帯契約ですから、その人がお一人で、あるいは二人でもいいのですが、一世帯単位だということで。

山内(豊)委員  おっしゃっている意味はよくわかります。それは勉強させていただきましたからわかっているのですが、非常に付加価値の高いものをただで提供することになるのです。NHKが今これだけ財政的に厳しい中でという意味を、将来に向けて、わかってもらえるようにしたらどうですか、ということです。

中川理事  今は固定受信と同じものを放送するのです。ところが、2008年の免許の更新時期に、どうするか決まっていないのです。そうすると、サイマル放送という形ではなくて、独自放送という形がある。その場合にどうするのかということが一つあります。

山内(豊)委員  それもわかっています。

中川理事  それから、ラジオデジタル放送ですが、これもテレビのワンセグとほとんど同じサービスができます。その場合にどうするのか、サービスで競合します、また、料金もどういうふうにするのかというのがあります。だからそのあたりは何も考えていないわけではありませんので、いろいろ考えながらやっているということをご理解ください。

山内(豊)委員  考えていないわけはないと思います。あまり声高に言えないから、ほふく前進でやっていくというのはわかりますが。それはいろいろな機会にもっとPRしなければ、「NHKは受け身だ、あきらめている」としか一般の人には受け取れません。

橋本会長  大変力強い応援とご意見をいただきました。資料5の1ページの表に書いてありますが、昔は聴取設備単位の料金もあった。設備に料金が付加されていたという料金体系が存在したわけです。新しいツール、新しいサービスにあった体系を考えていきたいと思います。

        
←戻る (5/6) 次へ→