長知事死去 官房長官が
哀悼も「辺野古が唯一の策」

沖縄県の翁長知事が、8日亡くなったことについて、菅官房長官は記者会見で「謹んでお悔やみを申し上げたい」と述べ、哀悼の意を示しました。一方、アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設について菅官房長官は「唯一の解決策であるという考えに変わりはない」と述べ、推進していくとともに、基地負担の軽減に引き続き取り組む考えを強調しました。

沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設反対を訴えて国と激しく対立してきた沖縄県の翁長知事は8日、入院していた浦添市内の病院で、すい臓がんのため死去しました。

菅官房長官は9日の記者会見で「翁長知事とは政府と立場が異なる面もあったが、大学の同窓ということもあり、2人になると沖縄の発展について話し合いをよく行った。現場を1つ1つたたき上げで上がってきた人なので、非常に信念の強い方だった」と述べました。

そのうえで菅官房長官は「お会いする予定が急きょ取りやめになり、心配していた。突然の訃報に大変驚いており、謹んでお悔やみを申し上げたい」と述べ、哀悼の意を示しました。

一方、普天間基地の辺野古への移設について、菅官房長官は「わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中において、日米同盟の抑止力の維持や普天間飛行場の危険除去を考えた時に唯一の解決策であるという考えに変わりはない。基地負担の軽減を1つ1つ目に見える形で実現していきたい」と述べ、移設を推進していくとともに、基地負担の軽減に引き続き取り組む考えを強調しました。

また、菅官房長官は、政府が今月17日にも行うとしている埋め立て予定地への土砂の投入について「今後のことについては、予断を持ってコメントすることは控えたい」と述べました。

沖縄県庁で半旗

翁長知事が亡くなったことを受けて、沖縄県庁では、9日朝から弔意を表す半旗が掲げられています。

告別式は13日に

沖縄県の翁長知事が8日死去したことを受けて、沖縄県は翁長知事の通夜が10日午後6時から、告別式が13日午後3時から、いずれも那覇市松山の大典寺で行われると発表しました。

全国知事会会長「痛惜の念禁じえない」

全国知事会の会長を務める埼玉県の上田清司知事は「翁長知事のご生前の精力的な発言、行動を思い浮かべ、痛惜の念を禁じえません。ご冥福をお祈り致します」とするコメントを出しました。

首相「敬意を表したい」

長崎の平和祈念式典に出席した安倍総理大臣は、長崎市で記者会見し、この中で8日に亡くなった翁長知事について「沖縄発展のために尽くされた貢献に対し、敬意を表したい」と述べました。

安倍総理大臣は、「突然のご逝去の報に接し、謹んで哀悼の誠をささげる。翁長知事は常に沖縄の発展のために命懸けで取り組んできた政治家であり、改めてこれまでの沖縄発展のために尽くされた貢献に対し、敬意を表したい」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は「戦後70年以上を経た今日もなお、沖縄には米軍基地の集中による大きな負担を担って頂いており、この現状は到底是認できるものではない。基地負担の軽減、さらには沖縄県の発展のためにこれからも常に沖縄の皆様に寄り添いながら全力を尽くしていく決意だ」と述べました。

自民 竹下総務会長「県知事選挙をしっかり戦っていく」

自民党の竹下総務会長は、長野市で開いた派閥の会合で「今は立場を異にしているが、一緒に選挙を戦った同志であり、心から哀悼の意を表したい。沖縄はいま、すばらしい経済発展を遂げつつあり、さまざまな変化が出ている。県知事選挙をこれからしっかり戦っていかなければならない」と述べました。

国民 大塚共同代表「翁長氏の思いを継承する方に」

国民民主党の大塚共同代表は記者会見で「翁長氏は人生を懸けて、沖縄の発展に全力で努力した方で、心からご冥福をお祈り申し上げたい」と述べました。

そのうえで大塚氏は来月にも行われる見通しの沖縄県知事選挙への対応について「沖縄の党の関係者が、どのような方を望むかに重きを置きたいと思うが、与党に対して、野党が一枚岩になることができ、翁長氏の思いを継承していただける方を、野党全体で推せる構図が望ましい」と述べました。

自由 玉城幹事長「意志を引き継ぐ」

自由党の玉城幹事長は、那覇市にある翁長知事の自宅を弔問に訪れたあと、記者団に対し、「非常に残念でなりません。県民のために命をかけて最後までやり通すという意志は私たちも引き継いでいかなければならない」と述べました。

那覇市民は

那覇市では、翁長知事の死を悼む声が聞かれました。

60代の女性は「残念で悲しいです。基地問題に全力で頑張ってくれたことに感謝しています」と話していました。

50代の女性は「翁長知事は沖縄を大事にしていた方なので、今後、かなりの波乱と影響があると思います。基地問題のさなかなので今後どういう結論になるのか心配です」と話していました。

また、50代の男性は「非常に残念な思いです。これから沖縄が大事な場面に向かうなかで将来が心配です」と話していました。

辺野古反対派も悼む声

アメリカ軍普天間基地の移設先の沖縄県名護市辺野古では、移設に反対する人たちが、アメリカ軍基地キャンプシュワブのゲート前で抗議活動を続けています。

名護市の70代の女性は「毎日ここで座り込みをしていますが、翁長知事が亡くなり、心の羅針盤を失ったようで悲しい。新たに基地を建設させないという知事の遺志を継いで頑張りたい」と話してました。

また、うるま市の60代の男性は「次の知事選挙にも出ると思っていたので、亡くなったと聞いてびっくりした。職務代理者の副知事は、埋め立て承認の撤回に向けた手続きを進めてほしい。後継者にふさわしい人が出てきた際にはしっかり支えていきたい」と話していました。

稲嶺元知事翁長知事の平和への思い語る

翁長知事と親交が深かった稲嶺恵一元知事は、アメリカ軍普天間基地の移設計画をめぐり、政府と対立が続いた翁長知事の心境について、「なかなか前に進むどころか、逆に、現実の形では、自分が思う方向と反対に進んでいる。知事としては耐えられない苦しみで悩みだったと思う」と指摘しました。

母校の法政大総長「大きな誇り」

知事の母校である法政大学の田中優子総長が9日、「翁長知事のようなリーダーが卒業生にいることは大きな誇りでした」などとするコメントを出しました。

この中で、法政大学の田中総長は翁長知事について、「返還前にパスポートを持って入学された方です。自由に議論できる大学で憲法のことも法律のことも存分に学ばれたはずです。翁長知事のようなリーダーが卒業生にいることは、大きな誇りでした」としています。

そして、去年10月、法政大学で開かれたシンポジウムに翁長知事が出席したことを振り返り、「沖縄の現実を東京の人々にぜひ知ってもらいたいという気迫が伝わってきました。まず沖縄の実際を知ること、知ってもらうこと、そして日本をけん引する可能性のあるその未来のために、日米地位協定の見直しについても考え、伝え続けること、そのように遺志を受け止めたいと思います」とコメントしています。