財務次官に本主計局長
「ふさわしい人材」麻生氏

麻生副総理兼財務大臣は、セクハラ行為で辞任した財務省の福田淳一前事務次官の後任に、予算編成などを担当する岡本薫明主計局長を昇格させる人事を正式に発表しました。

財務省の新しい事務次官に就任する岡本氏は57歳。昭和58年に当時の大蔵省に入り、主計局次長や官房長などを歴任したあと、去年7月から予算編成を担う主計局長を務めました。

岡本氏は、森友学園をめぐる決裁文書の改ざん問題では、当時、国会対応や文書管理の責任者だったことから、文書による厳重注意の処分を受けています。

財務省では、佐川前国税庁長官が辞任したのに続いて、4月に福田前事務次官が辞任し、2人の事務方のトップがいずれも空席という異例の状態が3か月にわたって続いていました。

麻生副総理兼財務大臣は閣議後の記者会見で、「一連の問題を真摯(しんし)に反省し、信頼回復に向けた財務省の再生に取り組むことや、消費税率の引き上げに着実に取り組むことを考え、ふさわしい人材を配置した。財務省の再生をはじめとする課題にしっかりと取り組んでいきたい」と述べました。

国民の信頼を取り戻せるかが課題

財務省は、新たな事務次官の下で、組織の立て直しに向けたスタートを切ることになりますが、財政の健全化に向けては国民の理解が不可欠なだけに相次ぐ不祥事で失った信頼をどう取り戻すかが大きな課題となります。

財務省は、決裁文書の改ざん問題や、前事務次官のセクハラ問題で大きな批判を浴び、財務省の感覚が、世の中の常識と大きくかい離しているという指摘も受けました。

国会でも与野党双方から厳しい批判を受け、野党の一部からは「財務省の解体を議論すべきだ」といった声も上がりました。

相次ぐ不祥事に国民からの信頼は大きく失墜しましたが、財務省は今後、国民負担につながる政策課題が控えています。

来年10月には、消費税率の10%への引き上げが予定されているのに加え、来年度以降は、医療や介護などの社会保障費を中心とした歳出の改革に取り組まなければなりません。

先進国で最悪の水準にある財政の立て直しは避けて通れない課題ですが、いずれも国民の理解が不可欠なだけに、新たな体制の下で失った信頼を取り戻すことができるかどうかが厳しく問われることになります。

岡本次官「信頼回復に全力」

新たに就任した財務省の岡本薫明事務次官は、記者団に対し「相次ぐ不祥事で、国民の信頼を大きく損ねており本当に真摯に反省しないといけない。財務省は予算、税といった国民の生活に深く関わる行政を担っている組織なため、信頼の回復が何より大事で、容易ではないが、省をあげて取り組んでいきたい」と述べました。

また、決裁文書の改ざん問題でみずからも処分を受けたことについて、「責任を痛感しているところで、厳しいご批判は真摯に受け止めないといけないが、事務次官の命を受けたので、全力で取り組むしかない」と述べました。

共産 小池書記局長「反省のない人事」

共産党の小池書記局長は記者会見で「まったく反省のない人事だと言わざるを得ない。岡本氏は、財務省による決裁文書の改ざん事件の当時、文書管理の責任者として厳重注意を受けている。厳重注意を受けたばかりの人を財務省のトップにするのか。安倍政権が森友学園の問題に対する国民の疑惑に何ら答えないばかりか、ひとかけらの反省もしていないことを物語る人事だ」と述べました。