さいとう・たかをさん死去
麻生氏「惜しい人亡くした」

寡黙なスナイパーが活躍する「ゴルゴ13」などで、大人の鑑賞に堪えうる「劇画」の分野を確立した、さいとう・たかをさんが、9月24日にすい臓がんのため亡くなりました。84歳でした。
ゴルゴ13を愛読している麻生副総理兼財務大臣は「惜しい人が亡くなったというのが正直なところだ」と述べ、さいとうさんの死を惜しみました。

和歌山県で生まれたさいとうさんは、家業の理髪店を手伝いながら映画や手塚治虫などの影響で漫画を描き始め、1955年に「空気男爵」で漫画家としてデビューします。

登場人物や背景をリアルに描くことにこだわって、当時の漫画とは一線を画した「劇画」という新たなジャンルを確立し、みずからを「劇画家」と名乗って、大地震後の世界を生き抜く少年の姿を描いた「サバイバル」や、池波正太郎の小説を原作とする「鬼平犯科帳」といった作品を生み出しました。

また、国籍、年齢、本名、すべてが不明で「デューク東郷」と呼ばれることもある寡黙なスナイパーの活躍を描いた「ゴルゴ13」は、1968年から半世紀以上にわたって雑誌の連載を続けてきました。

「ゴルゴ13」には、東西冷戦をはじめ、テロや民族紛争など、最新の国際情勢がテーマとして取り入れられ、ビジネスマンや政治家などからも、大きな人気を集めました。

そして、ことし7月には単行本の201巻が刊行され「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の記録を上回り、世界で最も発行巻数が多い漫画のシリーズとして「ギネス世界記録」に認定されました。
さいとうさんは、いち早くプロダクションを設立して、脚本や作画を分業する仕組みを作るなど、新しい劇画制作の仕組みを確立し、こうした取り組みが半世紀以上にわたって古びることのない作品づくりにつながりました。

長年の功績が評価され、2003年には紫綬褒章を、2010年には旭日小綬章を受章しています。

小学館によりますと、さいとうさんは、9月24日に東京都内で、すい臓がんのため亡くなったということです。

葬儀は親族のみで執り行われたということで、お別れの会の開催は、今後の状況を踏まえて検討するということです。

麻生副総理「惜しい人が亡くなった」

ゴルゴ13を愛読している麻生副総理兼財務大臣は、29日夜、財務省内で記者団に対し「1989年に冷戦が終わったあと、ゴルゴ13は終わると思ったがずっと続いている。別のインターナショナルな話題を続けているのは、なかなかなものだ。惜しい人が亡くなったというのが正直なところだ。残念な気がする」と述べました。

加藤官房長官「政府広報などにもお力添えいただいた」

加藤官房長官は記者会見で「写実的で緊張感のある描写で劇画というジャンルを作り上げた功績は大だ。政府としても、いろいろとご協力をいただき、直近では、新型コロナウイルスのワクチン接種を促すため『ゴルゴ13』の一場面のパネルを作成し、東京と大阪の大規模接種センターの入り口にも貼らせていただいた。漫画家として、すぐれた功績を残され、政府広報を含め、国民の安全安心のためにも、いろいろとお力添えをいただいてきた。心から哀悼の意を表したい」と述べました。