ルーズ船全員の検査へ
体制拡充急ぐ 厚労相

クルーズ船での新型コロナウイルスの集団感染を受けて、加藤厚生労働大臣は、衆議院予算委員会の集中審議で、健康観察のための期間が経過したあとに、乗客・乗員全員を対象にしたウイルス検査を行うことができるよう、検査体制の拡充を急ぐ考えを示しました。

新型コロナウイルスへの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染が確認された人は、検査を行った延べ492人のうち、合わせて174人に上っています。

これについて加藤厚生労働大臣は、衆議院予算委員会の集中審議で、今月5日から健康観察のための期間である12.5日が経過したあとに、船内に残る乗客・乗員全員にウイルス検査を実施したいという考えを示しました。

そのうえで加藤大臣は「国立感染症研究所などから人員を派遣してもらい、民間や大学の検査レベルを最大限に引き上げることで、1日当たり1000件を超える検査ができるようになる」と述べ、検査体制の拡充を急ぐ考えを示しました。

また、加藤厚生労働大臣はさらなる感染拡大に備え、現在、全国に1800床ある専用病床以外でも患者を受け入れることができるよう、対応できる施設の確保を進めているとしたうえで、「よりパンデミックな状況になれば、軽症者は自宅に、重症者は医療機関にという対応が必要になるので、マニュアル作りを進めている」と述べました。

「病院船」

加藤大臣はクルーズ船での集団感染などを踏まえ、船に病院の機能を持たせた「病院船」の配備についても、検討を加速させる考えを示しました。

「病院船」について、内閣府は「大規模な災害が発生したときなどに船内で医療行為を行うことを主な機能とする船舶」と説明しています。

平成25年に内閣府が取りまとめた報告書によりますと、アメリカには1000の病床があり、手術室なども兼ね備えた医療専用の船が2隻あるほか、中国やロシアなども保有しているとされています。

一方、内閣府や厚生労働省によりますと、日本では現在、医療機能のみに特化した国が保有する「病院船」はありませんが、海上自衛隊などには、数は少ないものの患者用のベッドや手術台、それに医務室が設置された船舶が複数あるということです。

また、内閣府などは毎年、災害の発生を想定して海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」をはじめとした国が保有する船舶や民間の船舶などに簡易のベッドや医療機器を持ち込んで、船内で医療を提供する訓練を行っているということです。

訓練は感染症の治療に特化したものではありませんが、大規模災害時に派遣される医療チーム「D-MAT」が船に乗り込んで患者の症状に応じて治療の優先順位を決めるトリアージや重症でない患者の応急処置を行う手順の確認などを行っているということです。