述式問題 導入見送り
発表 萩生田文科相

再来年1月に始まる大学入学共通テストでの記述式問題について萩生田文部科学大臣は「受験生の不安を払拭(ふっしょく)し、安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点では困難だ」として導入を見送ることを発表しました。

国語と数学の記述式問題の導入にあたって萩生田文部科学大臣は記者会見で、実際の採点者が決まるのは来年秋から冬になることや、採点ミスを完全になくすことは期待できないこと、採点結果と受験生の自己採点の不一致を格段に改善することは困難だなどと説明しました。

そのうえで「受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点では困難だ」と述べ、再来年1月に始まる大学入学共通テストでの導入を見送ることを発表しました。

そして、萩生田大臣は「共通テストに向けて勉強している受験生や保護者、教師をはじめ関係者の皆さんには、ご迷惑をおかけする結果となりまことに申し訳なく思うが理解してほしい」と述べました。

一方で、論理的な思考力や表現力を評価する記述式問題の役割は重要だとして各大学の個別試験では記述式問題の積極的な活用を要請する考えを示しました。

また、みずからのもとに新たな会議を設け、記述式試験の充実策を検討する考えも示しました。

大学入学共通テストをめぐって、文部科学省は英語の民間試験の導入延期を発表していて、大学入試改革の2つの柱の実施が見送られることになりました。

官房長官「受験生の安心が第一」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、「英語の民間試験についても大学共通テストにおける記述式問題の導入についても、受験生が安心して受験できることを第一に、文部科学省で対応しているものだ」と述べました。

そのうえで「大学入試において、論理的思考力や表現力を強化する観点から、記述式問題が果たす役割や英語の4技能を適切に評価することの重要性には変わりはなく、そうした観点から文部科学省で適切に対応していく」と述べました。

記述式問題とは

再来年1月から始まる「大学入学共通テスト」では、従来の知識を問うマークシート方式では難しいとされた思考力や判断力、表現力を測定するため、国語と数学に記述式の問題が導入される予定でした。

国語は120文字を上限に3つの問題が出され、5段階で評価が行われ、数学は数式などを答えさせる3つの問題が出され、マークシートと同様に点数化されます。

記述式の問題はこれまでのマークシートとは異なり、機械での採点ができないことから採点業務は、公募によって民間の事業者に委託することになっていました。

この民間事業者はおよそ1万人を採点者として活用する予定でしたが、アルバイトの大学生も採点にあたることが想定されていたことなどから、「採点者の質が確保できるのか」といった懸念の声が上がっていたほか、「試験後の自己採点が困難で志望校への出願に支障がでる」といった指摘も出されていました。

2つの柱見送り 共通テストのいきさつ

大学入試センター試験に代わり、再来年1月から始まる大学入学共通テストでは英語の民間試験と国語と数学に記述式の問題を導入される予定でしたが、英語の民間試験は、先月、導入延期が発表されました。

一方、記述式の問題は従来の知識を問うマークシート方式では難しいとされた思考力や表現力などを測定するために導入するとしていました。

しかし、50万人以上が受験した答案を短い期間でどのように採点するのかが課題となり、民間の事業者に委託された採点業務をめぐって、「採点者の質が確保できるのか」といった懸念の声が上がっていたほか、「試験後の自己採点が困難だ」といった指摘も出されていました。

立憲民主党など野党4党は、先の臨時国会に導入を中止する法案を提出し、与党側も、自民党が、必要な事項の総点検や見直しを行って、早急に方針を表明するよう求めていたほか、公明党は、見直しや延期を検討するよう提言していました。

このため、文部科学省は採点業務を適切に行えるかどうか調査するための模擬テストの検証結果も踏まえ、採点にあたる民間事業者などとも連携し、課題の解消に向けてどのような改善が可能なのか検討を進めてきました。

英語の民間試験に続いて記述式の問題も導入が見送られ、再来年1月に行われる大学入学共通テストでは、大学入試改革の2つの柱が実施されないことになりました。

英語の民間試験の導入延期にあたって文部科学省は5年後の令和6年度の実施に向けて、試験の仕組みを含め抜本的な見直しを図る方針を示しており、大臣のもとに設置する新たな会議で制度のあり方などを検討し、今後1年をめどに結論を出すとしています。