野川台風では
イメージわかず」6割

台風19号で、防災情報の伝え方の課題が浮かび上がってきました。気象庁は上陸前日の会見で「狩野川台風」ということばで危機感を伝えましたが、専門家がアンケートをした結果、6割近くの人が「イメージがわかなかった」と答えていることがわかりました。

防災情報に詳しい東京大学の関谷直也准教授は、大雨特別警報が発表された13都県の住民を対象にインターネットでアンケートを行い、10代以上の男女5200人から回答を得ました。

「狩野川台風と言われても…」59%

アンケートでは、台風19号の上陸の前日、気象庁が記者会見で、静岡や関東で1200人以上が犠牲となった「狩野川台風」に匹敵すると危機感を伝えたことについて聞きました。

この表現を聞いた人のうち59%の人が「狩野川台風と言われてもイメージがわかなかった」と答えました。

「イメージがわかなかった」と答えた人は、狩野川台風の被害を経験している静岡県では38%だったのに対し、被害の大きかった福島、宮城、長野などではいずれも60%以上に上りました。

「停電が不安」68% 台風15号の被害イメージか

台風19号のイメージを複数回答で聞いたところ、
▽「停電が不安だった」が68%と最も多く、
▽次いで「雨より暴風に注意が向いていた」が29%でした。

▽また、「そもそも大規模な河川の氾濫が起きるとは考えてもいなかった」が19%で、福島と長野ではそれぞれ30%余りに上りました。

関谷准教授は、千葉県などで暴風の被害が出た台風15号のイメージが強く、多くの人の備えが停電対策に集中していた可能性があると分析しています。

「初めて備えをした」台風15号で防災意識も

一方、今回の台風19号の前には、多くの人の防災意識が高まっていたという結果も出ています。

アンケートに対し、81%の人が事前に何らかの備えをしたと答え、このうち40%は「今回が初めてだった」と答えました。

事前に備えをした理由を複数回答で尋ねると、
▽「放送で呼びかけていたから」が53%と最も多く、
▽「台風15号による千葉県の停電を思い出した」と答えた人も31%に上りました。

「どのような呼びかけ必要か 検討を」専門家

関谷 准教授は、アンケート結果について「狩野川台風ということばでは具体的に必要な備えのイメージを伝えることができなかったのだと思う。台風19号の直前に台風15号があったため、多くの人が停電や『風台風』の被害をイメージし、結果として河川の氾濫や土砂災害への注意が弱くなると言う課題が残った」と分析しています。

そのうえで「今回は初めて備えをした人が多く、多くの人の防災意識が高まってきたと言える。これが川の氾濫や土砂災害といったみずからの命のリスクに対する備えにつながれば、多くの犠牲者を減らすことにつながる。今回のような広域災害でどのような備えの呼びかけが必要か、考えていかなければならない」と指摘しています。