CEP年内妥結断念
来年署名目指すも先行きは…

日本や中国、インドなど16か国が参加するRCEP=東アジア地域包括的経済連携の首脳会議が4日夜タイで開かれ、目標としていた年内の妥結を断念しました。改めて来年の署名を目指しますが、鍵を握るインドが関税の撤廃などの分野で慎重な姿勢を転換するか、先行きは不透明です。

RCEPの首脳会議は、日本時間の4日夜、タイのバンコク近郊で開かれ、終了後、共同声明が発表されました。

それによりますと、インドを除いた15か国は基本的にすべての交渉を終えたとして進展を強調した一方で、「インドには未解決のまま残されている重要な課題がある」と指摘し、目標としていた年内の妥結には至りませんでした。

RCEPは日本や中国、インドなどアジア太平洋の16か国が参加し、人口で世界の半分、貿易額で3割を占める最大規模の経済連携協定です。
今回の首脳会議に向けて詰めの調整が行われましたが、インドは中国からの安い輸入品が急増することを警戒して、最後まで大幅な関税の引き下げなどに応じませんでした。

RCEPは交渉開始から6年がたち、中国やASEAN各国などは妥結を急いでいて、改めて来年の署名を目指すことになりました。

しかし、鍵を握るインドの国内ではRCEPに対する産業界の反発は根強く、慎重な姿勢を転換するか先行きは不透明です。

断念背景にインド国内の事情が

RCEPが年内の交渉妥結を断念した背景には、関税を大幅に引き下げることに強く反対するインド国内の事情があります。

インドではスマートフォンなどの工業品が大量に中国から輸入されていて、中国に対する貿易赤字は昨年度は530億ドルを超え、日本円でおよそ5兆7000億円にのぼっています。

RCEPによって関税が引き下げられれば、さらに安い輸入品が大量に流入し国内産業が打撃を受けるとして、繊維産業などインドの主要な産業は警戒感を高めています。

首脳会議が開かれているさなかにも、農家や酪農家などでつくる団体がインドの各地で反対集会を開きました。

ことし5月の総選挙で再選されたインドのモディ政権は、格差解消のため外国資本の誘致などを通じて雇用の受け皿となる製造業の育成や強化を図っています。

しかし、関税引き下げなどで安易に妥協すれば自国の製造業に打撃を与え、自らの政策と矛盾しかねない状況でもあることも、慎重な姿勢の要因となっています。