語民間試験 自民からも
「政策的に欠陥」と延期論

大学入学共通テストに導入される英語の民間試験をめぐって、萩生田文部科学大臣は、先週、BSフジの番組で「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」などと発言したことについて29日、発言を撤回したうえで、改めて陳謝しました。

萩生田大臣は、30日の衆議院文部科学委員会の冒頭で、みずからの発言について「どのような環境下にいる受験生でも、自分の力を最大限発揮できるよう、自分の都合に合わせて適切な機会を捉えて、2回の試験を全力で頑張ってもらいたいという思いで発言した」と釈明しました。

そして、「結果として、国民の皆様、特に受験生の皆さんに対して、不安や誤解を与えてしまったと考えている。改めて、この場を借りておわびを申し上げる」と述べ、重ねて陳謝しました。

そのうえで、萩生田大臣は「英語試験の実施団体に対し、需要に応じた会場の確保などを求めるとともに、離島に居住する高校生などが離島外で受験する際の費用の補助経費を概算要求するなど、今後とも、受験生や高校関係者の不安の解消に向けて、全力で取り組んでいきたい」と述べました。

一方、萩生田大臣は、英語の民間試験の実施時期の延期論が政府内で浮上していると一部で報じられたことについて、「文部科学省としては議論を承知していない。いずれにせよ、高校や大学の関係者の合意に基づいた方針によるものであり、受験生は実施を念頭にすでに準備を進めてきていることから、受験生などの不安や懸念をひとつひとつ解消し、2020年度からの円滑な実施に向けて全力で取り組んでいきたいと考えている。政府のどこかで話があるとすれば、確認をきちんとしたい」と述べました。

与野党の反応

野党側は30日午前、国会対策委員長が会談し「撤回では済まず、不公平な制度になっていることが問題だ」として、発言の真意などを追及するとともに、英語の民間試験の導入を延期するよう求めていく方針を確認しました。

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「格差を認めるような制度を強行することが問題だ。若者たちの未来を守る闘いであり、大臣の謝罪で済むような話ではない」と述べました。

一方、自民・公明両党の幹事長と国会対策委員長らは、東京都内で会談し「受験生などに不安を与えることがあってはならない」として、文部科学省に対し不安の解消に向けて説明を尽くすなど十分対応するよう求めることで一致しました。

自民党の森山国会対策委員長は、記者団に対し「国民に誤解を与えるような発言は気をつけなければいけない。試験延期の話は聞いていないが、受験生などに不安を与えることのないような対応をお願いしたい」と述べました。

自民 参院幹部「英語試験は延期すべき」

自民党の参議院の幹部は、政策的に欠陥があるなどと指摘し導入を延期すべきだという考えを示しました。

自民党の参議院の幹部は記者団に対し、大学入学共通テストに導入される英語の民間試験をめぐって、「萩生田文部科学大臣の発言は、単なる失言ではなく、根本的な問題だ。試験のエントリーだけでも非常に難しい。受験生がかわいそうだ」と指摘しました。

そのうえで、「英語の民間試験を導入すること自体はいいが、政策的に欠陥がある。一定の所得以下の人には受験料を減免するなど低所得者への対策を整えるべきだ。数か月で対策が打てるなら進めてもいいが、おそらく無理だろう。今回は軌道修正し延期すべきだ」と述べました。

立民 川内氏「地域格差や経済格差が拡大」

衆議院文部科学委員会の野党側の筆頭理事で質問した川内博史衆議院議員は記者団に対し、「萩生田大臣は、『一生懸命頑張る』と言うだけで『文部科学省としてこうする』ということが何も出てこなかった。民間に入試をゆだねることで、地域格差や経済格差がより拡大するシステムになっているのに、きょうの答弁ではそうした問題点は払拭(ふっしょく)できておらず、導入を延期すべきだ」と述べました。

国民 玉木氏「国会の最大の課題」

国民民主党の玉木代表は、記者会見で「萩生田文部科学大臣の発言は、撤回したとはいえ大問題であり、許しがたい。地方の所得の低い家庭の子どもが影響を受ける制度で、今の国会の最大の課題として取り組みたい。野党4党は、導入を延期する法案を提出しており、政府に対して制度の再検討を強く求めていく」と述べました。

公明 石田氏「間違いのない対応を」

公明党の石田政務調査会長は、記者会見で英語の民間試験について「準備を進めている受験生もいるので、朝令暮改的に変えるのはどうかという気もするが、受験生が最大限実力を発揮できるような態勢を考えていかなければならない。間違いのないよう対応していくべきだ」と述べました。

維新 馬場氏「地方と都会で差が出る」

大学入学共通テストに導入される英語の民間試験について、日本維新の会の馬場幹事長は記者会見で、受験生の居住地によって不公平が生じるおそれがあると指摘し、導入を延期すべきだという考えを示しました。

この中で馬場幹事長は、英語の民間試験について「地方と都会では、試験会場までの交通費や宿泊費に差が出るなどの課題が整理されていない」と述べ、受験生の居住地によって不公平が生じるおそれがあると指摘しました。

そのうえで、馬場氏は「国民が理解し、納得できる制度設計にする必要がある」と述べ、導入を延期すべきだという考えを示しました。