電 筆頭株主の
大阪市にいきさつを説明

経営幹部らが不透明な金品を受け取っていた問題で関西電力は、筆頭株主である大阪市に対し、金品を受け取った幹部らの名前やいきさつなどを説明しました。

この問題で、関西電力は2日午後改めて会見を開くとともに、地域エネルギー本部の岡田重樹副本部長らが大阪市役所を訪れ、税財政企画担当部の職員などと面会しました。

このなかで関西電力は、金品を受け取った幹部らの名前や金額、いきさつなどを説明するとともに、今後、新たに第三者委員会を設置して金品の受け渡しが始まったきっかけなどを徹底的に調査し、年内をめどに報告書をまとめる考えを明らかにしました。

一方、大阪市側は、これまでに明らかになった以外に金品の受け渡しはなかったのか速やかに洗い出し、関係者を処分するよう求めました。

面会のあと、大阪市税財政企画担当部の大西敬一朗部長は記者団に対し、「2011年以前の調査ができておらず、それを含めた処分の検討も不十分だ。今後も不適切な事案が次々と露呈するようなら役員の刷新を求めていくことになる」と述べました。

大阪市 松井市長「経営から離れるべき」

関西電力の記者会見について、筆頭株主である大阪市の松井市長は記者団に対し「執行部の肩書と生活を守るための言い訳に終始しており、非常に残念な記者会見だった。市民の株式を預かる大阪市としては、全く納得がいくものではなかった」と述べました。

そのうえで松井市長は「バックマージンを受け取ったと疑われる人たちは経営から離れるべきだ」と述べ、改めて役員の辞任を求める考えを示しました。また、松井市長は関西電力が設ける第三者委員会について「関西電力の経営陣が選ぶ人だけがメンバーでは説得力はない」と述べ、第三者委員会に大阪市が推薦するメンバーを加えるよう、3日にも文書で申し入れる考えを示しました。

福井県 杉本知事「説明責任を果たしてほしい」

また、福井県の杉本達治知事は「立地地域との信頼関係を損なうもので言語道断で、怒りに近いものを感じる。信頼回復のために国民や県民に説明責任を果たしてほしい」と述べました。

そのうえで、森山元助役とは面識があったとして、「原子力との関係性は知らなかった。どなったりする場面を見たことがあったので、激するタイプの人だなと思った」と話しました。

高浜町 野瀬町長「再稼働同意への判断に影響ある」

福井県高浜町の野瀬豊町長は、関西電力が目指す高浜原発1号機と2号機の再稼働への地元同意について「少なからず影響はあり第三者委員会の調査結果を見極めたい」と述べました。

関西電力の会見を受けて、高浜町の野瀬町長は2日午後、報道陣の取材に応じ、「今回の問題をめぐるさまざまな構造が明るみに出た印象だ。森山氏との関係をどこかで見直す場面があったのではないか。課題を先送りしたことが今回の件を招いたのではないか」と述べ、関西電力の組織としての対応の甘さを批判しました。

そのうえで、関西電力が来年6月以降の再稼働を目指して安全対策工事を進めている、高浜原発1号機と2号機について、再稼働の条件となる地元同意への影響を聞かれると、「少なからず影響はある。社外の第三者委員会の結果で新たな事実が出てくるかもしれないので、事業者として組織体制をどうしていくかは判断材料の1つになってくる。第三者委員会の調査結果を見極めたい」と述べ、再稼働に同意するかどうかの判断に影響を与えるとする考えを示しました。

このほか金品を受け取っていた幹部らの処分については、「第三者委員会の結果しだいでは会長や社長が退任する可能性もあるように聞き取れた。減給処分では国民の理解が得られないと感じる」と話しました。

高浜町の住民は…

高浜町の住民からは「地元に対しても丁寧に説明してほしい」といった声が聞かれました。

このうち67歳の女性は「町民みんなが納得するような説明をしてほしい。高浜町は関西電力で成り立つ町であり、将来の子どもたちのためにもよくしてほしい」と話していました。

また、70歳の男性は「これまでの関西電力の説明は『答えられない』と言ってごまかしてきた印象だが、町にとっては大した影響はないと思う。原発がなければこの町は生きていけず、関西電力には何よりも事故が起きないよう原発を動かして頑張ってもらいたい」と話していました。

このほか、高浜町に隣接し、関西電力の原発がある福井県おおい町の69歳の女性は「私たちの知らないところでこのようなことが起きていたのはびっくりしたし不安になってしまう。許せないことで、関西電力には納得できる説明をしっかりしてほしい」と話していました。

吉田開発「社長は不在」

高浜町にある吉田開発の社員は関西電力の会見後、報道陣の問いかけに対し、「社長は不在で連絡はまだありません。会見が終わったばかりなのでこれからどう対応するか社長から連絡が来ると思います」と話していました。

郷土誌に森山元助役の功績

森山栄治元助役の出身地である高浜町の青郷地区で平成14年に出された郷土誌には森山元助役の功績が書かれています。

この中で「特に住民生活の安定と地域福祉の向上発展に理解と関心が厚く、常に地域住民とともにあって、この分野に尽くした役割は極めて大きいものがある」などと記されています。

そのうえで「原子力発電所の誘致に献身的に取り組み、原子力発電に関わる安全性の確保について広く啓もうする一方、住民との十分なる対話をつくし、実現にこぎつけるなどその活動実績は誠に顕著なものがあった」と功績をたたえています。

高浜町の関係者によりますと、森山元助役は原発誘致に尽力した中心的な人物とされていて地元産業ともつながりが深く、大きな影響力を持つ特別な存在として知られていたということです。

原子力関連の収入に大きく依存

福井県高浜町には関西電力の高浜原発1号機から4号機、合わせて4基が立地しています。

高浜町が昭和60年に編さんした「高浜町誌」によりますと町が原発を誘致した背景について「昭和30年後半から40年代初期は我が国の高度経済成長期の影響をうけ、地方では労働力の流出や過疎化が進み、地方自治体の財政難に拍車をかけていた」と当時の窮状を伝えたうえで「福井県が積極的に取り組んできた敦賀半島における原子力発電所建設がもたらす地域開発、経済活動の活発化に衆目が向けられていた」と記されていて、高浜町としても原発誘致によって地域経済の立て直しを図ろうとしていた様子がうかがえます。

そして「地域開発や過疎脱却は電源立地誘致によるほか手段なし」との結論に至り、昭和40年に原発誘致に向けた動きが本格化したとしています。

その後、住民による反対運動があったものの、県道の改良や固定資産税の膨大な歳入などで町の発展を進めるなどとした啓発活動が繰り返されたことで町民の大半が賛同するようになったとして昭和41年、町議会は全会一致で誘致することを決めたということです。

そして、関西電力も高浜原発の建設を決め、1号機が昭和49年、2号機が昭和50年に稼働、さらに3号機と4号機が増設され、昭和60年に稼働が始まりました。町誌には昭和51年から59年にかけて毎年、7億円から13億円余りの固定資産税が計上されたことを紹介しながら、原発の建設によって住民福祉の向上に役立っており町の発展に大きく寄与していると記されていました。

また、高浜町は現在も財源を原子力関連の収入に大きく依存しています。ことし2月に高浜町が発表した今年度予算案では、歳入は105億円余りでそのうち原子力関連は全体の53%を占める55億円余りでした。

具体的には固定資産税が23億8300万円、国からの「電源立地地域対策交付金」が18億7600万円、電力会社から県を通じて入る「核燃料税交付金」が8億円などとなっています。

こうした収入は道路の整備や観光事業、子どもの医療費、それに保育所や中学校の整備などの費用に充てられています。