後に2千万円必要”
「誤解与えた」首相が釈明

老後の資産形成をめぐり、「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会の指針について、安倍総理大臣は、参議院決算委員会で、不正確で誤解を与える内容だったと釈明したうえで、公的年金の信頼性は変わらないと強調しました。

老後の資産形成をめぐり、「高齢夫婦の世帯では、老後30年間でおよそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会の指針をめぐって、野党側は「『年金制度は100年安心だと言っていたのはうそだったのか』と国民は憤っている」などと指摘しました。

これに対し安倍総理大臣は「不正確であり、誤解を与える内容だった」と釈明しました。

そのうえで、「『年金100年安心がうそだった』という指摘には、『そうではない』と言っておきたい。今年度の年金は0.1%の増額改定となり、現在の受給者、将来世代の双方にとってプラスとなるものだ。公的年金の信頼性はより強固なものとなったと考えている」と述べました。

また麻生副総理兼財務大臣は指針について、「冒頭の部分、目を通した。全体を見ているわけではない」としたうえで、「高齢者の家計は、貯蓄や退職金を活用していることに触れることなく表現した点は、国民に誤解や不安を広げる不適切な表現であったと考えている」と述べました。

このほか与野党から、景気認識や新たな景気対策の必要性などについて質問が相次ぎ、安倍総理大臣は「経済財政運営に万全を期していきたいと思うが、仮にリスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行していく方針だ」と述べました。

金融庁 審議会の報告書が議論呼ぶ

老後の資産形成をめぐり議論が起きるきっかけとなったのは、金融庁の審議会が今月3日に公表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書です。

この報告書の中では、収入が年金中心の高齢夫婦の世帯は、収入よりも支出が上回るため、平均で毎月およそ5万円の赤字になっているとしています。

これが老後の30年間続けばおよそ2000万円が必要になると試算されますが、この分は貯蓄などの金融資産から取り崩す必要があるとしています。
しかし、退職金は近年減少しているなどとして、現役世代から長期の投資などを行って資産形成を進める必要性を指摘しています。

これについて野党などから批判が出たことを受けて、麻生副総理兼金融担当大臣は、7日の記者会見で、「一定の前提で割りふった単純な試算を示しただけで、貯蓄や退職金を活用していることをあたかも赤字ではないかという表現をしたのは不適切だった」と釈明しました。

そのうえで、公的年金が生活設計の基本的な柱であるという認識は変わらず、報告書はより豊かな老後を送るための指針だと強調しました。

自民 二階氏「年金制度の信頼性とは別では」

自民党の二階幹事長は、記者会見で「指針は『老後に備えて、個人の置かれた状況に応じ、有利な資産形成ができるように』という観点からの提言であり、年金制度の信頼性とは別のものではないか。国民もその内容は、ちゃんと受け止めているだろう」と述べました。

立民 蓮舫氏「麻生大臣が読んでないことに驚き」

立憲民主党の蓮舫参議院幹事長は、記者団に対し、「5分で読める報告書を担当の麻生大臣が読んでいなかったことに驚いた。報告書のどこにも『豊かな生活の額だ』とは書いていない。読んでいない人がめちゃくちゃなことを言っている。どうして、生活が苦しく、非正規雇用で頑張っている人たちなどに、『お金をためろ』と、上から目線で言うことができるのか」と述べました。

国民 玉木氏「読みもせず答弁自体不適切」

国民民主党の玉木代表は、山形市で記者団に対し「報告書を読みもせず、答弁している態度自体が不適切ではないか。年金財政が非常に厳しいことは、これまでの財政検証からも明らかになっており、ことばでごまかしたり、不適切だったと言い逃れをするのではなく、年金財政の真実の姿や、公的年金制度で国民が老後の生活をできるのかという、シンプルな問いに明確に答えてほしい」と述べました。

共産 小池氏「国民の暮らし 全く見えていない」

共産党の小池書記局長は、記者会見で「『安倍総理大臣は、年金問題になると、どうして、急にむきになるのか』というのが率直な印象だ。過去の選挙が頭をよぎって、トラウマになっているのではないか。安倍総理大臣は『年金の制度さえ維持されればよい』というロジックで、国民の暮らしは全く見えていない」と述べました。

社民 吉川氏「年金 参院選の最大の焦点の一つ」

社民党の吉川幹事長は、日本記者クラブで会見し、「『年金は出るが、2000万円くらいは資産を持たないと暮らしていけない』ということでは、国民の不安は一向になくならない。公的部門が果たすべき役割は非常に重要で、年金をどうするのかは参議院選挙の最大の争点の一つだ」と述べました。

10日の政府税調 大部分は非公開

老後の資産形成をめぐって国会で論戦が繰り広げられる中、政府税制調査会は10日、老後の資産形成に向けた税制の議論を大部分、非公開で行いました。

政府税制調査会は、去年の秋から、高齢化を踏まえて老後に備えた資産形成を税制でどう後押しすべきか議論を進めています。

10日は、調査会の委員たちが欧米の制度について現地調査をした結果を報告する会議が開かれましたが、冒頭の会議の趣旨に関する説明以外は非公開で行われました。

政府税制調査会の会議は、多くの場合、すべて公開で行われています。

財務省は、非公開にした理由について「実務的で技術的な議論を率直に行ってもらうためだ」として、野党から批判されている金融庁の審議会の指針の問題とは関係がないとしています。