員のみで聞き取りが
3分の2 厚労相が答弁訂正

厚生労働省の統計不正問題で、根本厚生労働大臣は、第三者委員会の調査では部局長ら幹部への聞き取りを有識者が行ったとしていた国会での答弁を訂正し、厚生労働省の職員のみで行ったケースがあったことを明らかにしました。また、別の統計調査でも決められた手法が守られていなかったことも含め重ねて陳謝しました。

この問題で、外部の有識者でつくる「特別監察委員会」などが行った調査をめぐり、今月24日、衆議院厚生労働委員会の閉会中審査で、根本厚生労働大臣は、調査対象の37人のうち部局長や課長ら幹部20人への調査は、委員である有識者が聞き取りを行ったと答弁していました。

これについて根本大臣は、閣議のあとの記者会見で、調査対象の幹部のうち8人は、厚生労働省の職員のみで行っていたと答弁を訂正したうえで「誤りがあったことは大変遺憾で、今後しっかり説明していきたい」と述べました。

また元幹部らへの調査には、厚生労働省の宮川厚生労働審議官と定塚官房長が同席し、質問も行っていたことについて、「厚生労働省としての姿勢を示す意味で同席したと聞いているが、結果として、第三者性に疑念を生じさせてしまった」と述べました。

そのうえで、特別監察委員会の委員による調査を改めて厳正に行い、事実関係を把握したいという考えを示しました。

また28日、賃金の実態を労働者の雇用形態や職種ごとに把握するための「賃金構造基本統計調査」でも、決められた手法で調査が行われなかったことが明らかになったことについて、根本大臣は「遺憾であり、基幹統計に関する政府の一斉点検の時に報告されなかったことも遺憾だ」と陳謝したうえで、早急に調査する考えを示しました。

“第三者委の聞き取り”実態明らかに

厚生労働省は、29日、外部の有識者でつくる第三者委員会「特別監察委員会」などが行った、聞き取り調査の状況について明らかにしました。

当初、厚生労働省は、調査対象となった37人のうち課長補佐以下の17人は厚生労働省の職員が聞き取りを行ったが、課長級以上の幹部20人は、第三者委員会のメンバーが直接聞き取ったと説明していました。

ところが、実際には幹部20人のうち8人についても第三者委員会のメンバーによる聞き取りは行われず、厚生労働省の職員のみで聞き取っていたということです。調査対象者37人のうち厚生労働省の職員のみで聞き取りを行ったのは、およそ3分の2の25人に上ることになります。

なぜ当初、事実と異なる説明をしたかについて、厚生労働省は「精査をした結果、きょうの発表に至った」としています。
また、職員が聞き取りを行った理由については「迅速に調査を進めるため職員が聞き取った」と説明しています。

一方、委員会のメンバーが聞き取りを行ったケースでも、すべて厚生労働省の職員が同席していました。
このうち3人の聞き取りについては官僚ナンバー2の宮川晃厚生労働審議官が、別の4人の聞き取りには定塚由美子官房長が同席し、みずから質問をしたこともあったということです。

定塚官房長はこのほか、職員のみで行った部局長級の幹部1人への聞き取りにも加わっていたということです。

石田総務相「なぜそういうことになるのか」

厚生労働省の「賃金構造基本統計」が決められた手法で行われていなかったことが28日、明らかになったことについて、政府の統計を所管する石田総務大臣は閣議のあとの記者会見で「誠に遺憾だ。厚生労働省は、総務省の統計委員会の審議も踏まえながら、適切な調査実施に向けた改善に取り組んでもらいたい」と述べました。

また、この件が先週24日の最初の公表に含まれていなかったことについて「こういうことはあってはいけないわけで、なぜそういうことになるのか」と不快感を示しました。

菅官房長官「点検後に新たに確認は遺憾」

菅官房長官は、閣議のあとの記者会見で、「基幹統計の点検結果を先週、公表した中で、厚生労働省において新たに不適切な取り扱いが確認されたのは極めて遺憾だ。統計の信頼性の回復に向けて、今後、総務省において統計委員会に新たな専門部会を設置し、再発防止、統計の精度の向上を目指した検証を行っていきたい」と述べました。

聴取対象は40人

厚生労働省の統計不正問題で、外部の有識者でつくる第三者委員会「特別監察委員会」は再調査を進めています。

厚生労働省によりますと、批判を受けて、第三者委員会は再調査を進めていて、関係者37人に行った聞き取り調査を全員分やり直しているということです。

再調査では、対象を3人広げて合わせて40人に委員会のメンバーが聞き取りをしているということです。

野党側 調査自体を疑問視する声相次ぐ

厚生労働省の統計不正問題をめぐって、野党側のヒアリングが行われ、第三者委員会が行った聞き取り調査に厚生労働省の官房長らが同席していたことについて、調査自体を疑問視する声が相次ぎました。

この中で、出席した議員からは、第三者委員会が行った聞き取り調査に厚生労働省の官房長らが同席し、質問も行っていたことについて、「第三者性がなく調査報告自体をやり直すべきだ」とか、「調査結果を一度認めた委員が再度調査をやっても、信頼性に欠ける」などと、今回の調査自体を疑問視する声が相次ぎました。

これに対し厚生労働省の担当者は「『認識が甘かった』という指摘はそのとおりだ。幹部が同席したのは、退職した職員に『しっかり説明してください』という意味だった」などと釈明しました。

徹底した国会審議求める方針確認

このあと野党6党派の集会が開かれ、真相の究明に向けて、政府・与党に、徹底した国会審議を求めていく方針を確認しました。

国会内で開かれた集会には、野党6党派の国会議員およそ70人が参加し、立憲民主党の辻元国会対策委員長は「公文書は改ざんし、統計の不正も明らかになった。政治の土台が壊れ、社会の底が抜ける事態だ。しっかりと真相を究明しなければならない」と述べました。

また国民民主党の原口国会対策委員長は「アベノミクス自体が偽装だが、アベノミクスをはかる数字まで偽装している。根本厚生労働大臣は、もう辞めさせようではないか」と述べました。

共産党の穀田国会対策委員長は「国会の行政監視機能が問われている。与野党を超えた真相究明が責務で、安倍政権の責任は極めて重大だ」と述べました。

そして集会では、真相の究明に向けて、政府・与党に徹底した国会審議を求めていく方針を確認しました。