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新潟水俣病訴訟 原告の思いは

提訴から10年余 原告の高齢化進む
  • 2024年04月24日

新潟水俣病と認定されなかったり特別措置法による救済策でも対象から外れたりした県内などに住む149人が国と企業に賠償を求めた裁判は、最初の提訴から10年以上が経過し、原告の平均年齢は75歳になりました。先行して審理が終わった原告47人に対する4月18日の判決を前に、原告のひとりを取材しました。                   (新潟局記者・今井桃代)

原告の男性

阿賀野市に住む75歳の男性です。水俣病特有の症状に長年苦しめられてきたとして、水俣病と認められるよう裁判で求めています。

 

原告の男性

原告の男性
四六時中、指の先端がしびれるっていうか。あとワイシャツのボタンをかけるときも支障があったり。今も耳鳴りがあるんですけど、ミンミンゼミが常時、両耳に10匹ぐらい鳴っている。

男性は旧安田町、いまの阿賀野市で生まれ育ちました。家の近くを流れる阿賀野川でとれた川魚が、毎日の食卓に並んでいたといいます。

原告の男性
子どものころに魚をとるのも楽しいし、親に「よくとれたね」とほめられると誰でもうれしいもので、ますますきょうだいでとりに行ったのを今でも覚えている。それがわれわれの食卓に朝昼晩並びました。

1965年に公式確認された新潟水俣病

当時、阿賀野川の上流では旧昭和電工の工場から有機水銀が排水されていました。この川でとれた、有機水銀に汚染された魚を食べて、手足のしびれなどの症状を訴える住民が相次ぎ、1965年には新潟水俣病が公式に確認されました。

原告の男性

男性が症状を意識したのは公式確認から5年後の1970年、22歳のころ。手のしびれを感じるようになり、ボタンの掛け違いが多くなりました。
30代後半になると手足のしびれのほかに、こむら返りや耳鳴りなど別の症状も出て、職場での作業にも影響が出たといいます。

原告の男性
出荷のこん包の作業ですね。当時はみんなひもでこん包していたので、自分ではしっかり締めているようなつもりではいたんですけど、やっぱり正確には、こん包できてなかったのかななんて。そういうのが苦労としては今思い出せますね。

66歳で医師から水俣病と診断

症状の原因がわからない状態が続くなか、男性は2014年、65歳のころに水俣病被害の救済を呼びかけたチラシに出会います。

水俣病被害の救済を呼びかけたチラシ

当時、水俣病の患者会が水俣病だと気付いていない被害者を見つけるために配っていました。

チラシをもとに患者会と連絡をとり、紹介された医師から水俣病と診断される人が多くいたということで、男性も66歳で水俣病と診断されました。

原告の男性

原告の男性
今までの自分の障害が「あっそういうことだったのか」のかという。水俣病に起因しているのかなということが分かって非常に心が落ちた。

水俣病の認定申請は「棄却」

長年、症状に苦しめられてきた自分を水俣病の患者だと国に認めてほしい。男性は水俣病の認定申請を行いましたが、結果は「棄却」。感覚障害があることは認められたものの、それ以外の症状は認められなかったためだとみられています。

原告の男性
こんな苦しんでるのに理解されなかったのはなぜかなとがっかりしました。
やっぱり水俣病なんだっていうことで、それに対する救済が裁判という手段で訴えられれば。

男性は、国などに賠償を求める集団訴訟に加わって、水俣病の認定を求めています。

全国4か所で集団訴訟 司法の判断分かれる

水俣病を巡る同様の集団訴訟は全国4か所で行われていて、このうち大阪地方裁判所は原告全員を水俣病と認めて国などに賠償を命じた一方、熊本地方裁判所は、原告の訴えを退けました。
司法の判断が分かれるなか、男性は4月18日に判決を迎えます。

原告の男性

原告の男性
新潟では訴訟している全員の救済が届くように。判決は水俣病を認定していただいて、47人全員認定を受け付けてほしい。それが救済の道につながるんじゃないかと思っています。

判決で男性は水俣病と認定

4月18日に新潟地方裁判所が言い渡した判決では、原告47人のうち26人が新潟水俣病と認められ、男性も認定されました。判決では原因企業に賠償を命じた一方、国に対する訴えは退けました。判決のあと、男性が取材に応じました。

原告の男性
率直に認められてよかったなと思っています。ただ、19人の原告が認められなかったことや国の責任が認められなかったことは残念です。きょうの判決で痛みや苦しみが解消されるわけではないので人生の中で病と付き合っていこうと思います。

  • 今井桃代

    新潟放送局 記者

    今井桃代

    2022年入局。新潟局が初任地。事件・事故や司法、クマ対策などを取材。

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