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日本一奪還へ!新たなラーメン開発 込められた新潟への思い

プロジェクトの鍵は「辛さ」とネットワーク 地場産業との連携も
  • 2023年10月03日

 

2021年の総務省による家計調査で、1年間にラーメンにかけた外食費用の日本一に輝いた新潟市。しかし翌年には山形市が1位の座を奪還し、新潟市は2年連続の日本一を逃しました。この結果を受け、日本一奪還に向け新たなプロジェクトが始動。その舞台裏を取材すると「ラーメンを通して新潟を元気にしたい」という熱い思いが見えてきました。(新潟放送局 記者 髙尾果林)

放送した動画はこちら

新潟県民はラーメン大好き!?

 

そもそも新潟県民はどれくらいラーメンが好きなのか。
新潟市の中心部で道行く人に「ラーメン好きですか?」と聞いてみたところ・・・。
「大好きです」(20代女性)
「頻度は週5くらいで食べてますね」(20代男性)
「しみますね。より味が濃いのを疲れたときに入れてストレス発散します」(30代女性)

新潟県の食文化の一端を担う「ラーメン」。
各地にご当地ラーメンもあり、県民の愛着は全国トップクラスです。

2021年の1年間にラーメンにかけた外食費用で新潟市は日本一に輝きました(総務省家計調査)。       しかし翌年には山形市が1位に返り咲き、新潟市は2年連続の1位を逃しました。

1位奪還へプロジェクト始動! 発起人は神職の男性

この悔しさから動きだしたのが新たなラーメン開発のプロジェクトです。
その先頭に立ったのは三条市の神職、三上正行さん

長年、街の活性化に取り組み新潟市のまちづくりにも携わった経験があります。
ラーメン作りには無縁ですが、三上さんは多くの県民が愛着を持つラーメンには地域を盛り上げる可能性があると感じていました。

三上さん
(結果が)単純に悔しいっていうのと、新潟市にとって非常によい地域発信のチャンスだった。
それを自分でできたらいいなと考えたのが一番ですね。

新たなラーメンの開発に向け、三上さんが最初に取り組んだのが需要の調査。
友人や知人、計100人にアンケート調査をして好みのラーメンを調べました。

アンケート調査の結果(三上さん提供)

その結果、多かったのが「辛いラーメンのバリエーションを増やしてほしい」という意見でした。

そこで三上さんは新しい辛口ラーメンの開発を相談しようと各店舗を回りました。
すると、あることがわかります。

新たな味の開発は、思った以上にハードルが高かったのです。

三上さん
新しい味を作るにしても、材料や仕入れ方法などを1から調べなければならないのがラーメン店にとってすごく重荷だということが分かりました。

この課題を乗り越えるために三上さんはあるアイデアをひらめきます。
それは、ラーメン店どうしの横のつながりを作ること

三上さん
いろんな情報を共有できれば新しい味を作るのにも役立ちますし、新しい挑戦をするにも非常に踏み出しやすいのかなと感じました。

つながるラーメン店の輪 それぞれが「鬼ラーメン」開発へ

ことし7月、三上さんの呼びかけに賛同した県内の10店舗が開発プロジェクトへの参加を決めました。

9月12日に開かれた記者会見での記念撮影の様子

それぞれの店舗が新潟市で作られているとうがらしの調味料「鬼殺し」を使って、オリジナルの辛口ラーメン、その名も「鬼ラーメン」を開発して販売するのです。

記者会見後のミーティングの様子

この日、ふだんはライバルでもある店主たちが初めて顔をあわせ、辛口ラーメンの開発に向けて意見が飛び交いました。

新潟市内でラーメン店を営む笠原義貴さん

店主たち
「自分たちの商品を交換して食べ合いっこして『どっちも辛いね』みたいな」
「どっちももん絶してる姿を(SNSに)うつすのもおもしろいかもしれない」
「いいかも」

こうした提案を参考にしながら、開発途中に試食会も開催。お互いが味つけや辛さについてアドバイスします。

SNS上でも宣伝方法について意見交換するなど、これまでなかった店主どうしの交流が活発化しました。

参加したラーメン店 手応えは?

今回のプロジェクトに参加した1人、新潟市中央区と秋葉区でラーメン店を営む小泉翔太さん(33)です。

18歳からラーメン業界に入り、「地産地消」をテーマにラーメン作りに打ち込んできました。このプロジェクトを機に新たな交流が生まれたことに手応えを感じています。

小泉さん
全然今までしゃべってこなかった人たちとしゃべる機会を与えてもらったので、そのことによって、新しいものが生まれたのは間違いない。感謝ですね。味の作り方や接客のしかた、どういうふうに新潟のラーメンを盛り上げようとしているかなどの話がすごく深くできました。

他のラーメン店の店主と交流する小泉さん

こうしたラーメン開発の輪は業界の外にも広がっています。
小泉さんの依頼に応じ、地域で働く人たちも開発に協力しています。

農家、養蜂家、ジム経営者などさまざまな職種の人たちが集う

こちらは、阿賀野市伝統の安田瓦で作ったどんぶり。知人の瓦職人が特別に作りました。

小泉さん
このどんぶりを使うとなったらスープを最後まで飲んでもらいたい。
農家の男性
蜂蜜入れるとまろやかにおいしくまとめてくれるよ。

スープを飲み干してもらえるよう蜂蜜で味をマイルドにする提案が出されました。
そのほかにも麺の太さやスープの味付けについて、話し合いは夜遅くまで続きました。

そして、みんなのアイデアを詰め込んだ小泉さんの鬼ラーメンが完成!

魚粉ととうがらしをミックスした粉末をたっぷりのせ、とうがらしの調味料が入ったカプセル蜂蜜入りのスポイトを添えました。

カプセルを溶かすと一気に辛さがプラス!汗が噴き出ます

スープにカプセルを溶かすと一気に辛さがプラスされるほか、蜂蜜を加えることによって好みの辛さに調整することができます。「スープを飲み干せる絶妙な辛さ」を目指しました。

新たなラーメンには味のほかにもうひとつ、こだわりがあります。
小泉さんがテーマとする「地産地消」の実現です。

蜂蜜や調味料はもちろん、麺に使う小麦も新潟産です。
この一杯に「地域を元気にしたい」という思いを込めました。

そして9月23日、ついに鬼ラーメン販売の初日を迎えました。
ちゅう房に次々と注文が入ります。

さて、鬼ラーメンを食べたお客の反応は。


カプセルにとうがらしがいっぱい入ってて、溶かして入れたあとが汗バーッみたいな。
でもおいしくてとまらない。あっという間に食べちゃいました。


カプセルをラーメンに入れるのも蜂蜜をスポイトに入れるのも初めてで楽しく食べました。
カプセル入れる前と後で全然味が違って、辛さが「ぶわっ」て増すんですけど、食欲も増して、おいしくてスープまで飲んじゃいました。

日本一奪還への思いをきっかけに、ラーメン業界、さらには地域がつながり生まれた「鬼ラーメン」。小泉さんはこれを機にラーメンの輪が広がり、地域がさらに盛り上がってくれればと願っています。

小泉さん
これから新潟とかラーメン業界を盛り上げていくためには、ほかの業種の方と手と手を取り合うわけではないですけど、新しい発想とか形を作ることでもっとよくなるんじゃないかと思って、うれしかったですね。
外食費用の順位は個人的にはどっちでもいいんですけど(笑)、地域を盛り上げることに関してこういう事があるとみんなが一致団結する機会にもなる。こういう時は『みんなで頑張ろう』でいいかなと思ってます。

今後も新しいプロジェクト立ち上げへ

鬼ラーメンは県内の10店舗で2023年11月12日まで提供されます。
同じとうがらし調味料を使いながら、それぞれの店の個性が見える「鬼ラーメン」、楽しみですね。

外食費用1位奪還に向けて、三上さんは「今後も新しいプロジェクトを立ち上げて、ラーメン店の輪を広げていきたい」と話していました。すでに動き出しているプロジェクトもあるとのことで、これからの新潟ラーメン業界から目が離せません!

  • 髙尾果林

    新潟放送局 記者

    髙尾果林

    2021年入局。事件・事故や裁判の取材をへて、現在、新潟市政などを担当。

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