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新潟 クマ出没に警戒! エサ不足が深刻

人里や市街地にも出没の可能性 理由と対策は
  • 2023年09月29日

9月に入って新潟県内で相次ぐクマの被害。県は「クマ出没警戒警報」を発表して命を守る行動を呼びかけています。主な理由はエサ不足。ことしの秋はクマのエサとなるブナの実が凶作となったほか、他の木の実も不作となっていて冬眠前のクマがエサを求めて人里に出没する可能性が高いためです。さらに専門家はクマの出没が増える要因はエサ不足だけではないとしたうえで、これまで目撃情報がなかった場所にも出没する可能性があるとして警鐘を鳴らしています。クマ出没の背景と対策を取材しました。(新潟放送局 記者 油布彩那)

深刻なエサ不足 ブナは凶作、ミズナラなどは不作

新潟県は毎年、クマの出没を予測するため山奥の木の実の豊凶調査を行っています。
それによりますと、この秋、クマが最も好むブナの実は県内全域で凶作
ミズナラやコナラ、クリは不作となり、調査を始めた平成23年以降で最も低い豊凶指数となりました。これには、ことしの猛暑も影響したとみられています。


特にクマ出没の増減に大きく関わっているとされるブナの実のできは、ことしは出没件数や人身被害が過去最多となった令和元年、2年と同様に悪くなっています。
こうしたことから、ことしもクマが冬眠前にエサを求めて人里に出没する可能性が高いとして県は「クマ出没警戒警報」を発表しています。

エサ不足だけじゃない 豊作の年はクマが増加

クマ出没の要因はエサ不足だけではありません。

クマの生態に詳しい新潟大学農学部の箕口秀夫教授によりますと、豊作もクマ出没の理由の1つになっています。子グマが増え、その結果、次の年に親子グマが人里に出てくる可能性が高まります。

箕口教授
昨年ブナが大豊作だった。秋に沢山エサをとることができた、栄養をとることができたという年には冬ごもりの間に子どもを産むことになるので子グマの数が増えているという状況になります。

母グマは子グマを守ろうと神経質 非常に危険

これは、教授の研究室が県内の山に設置したカメラが撮影した映像です。

研究室ではクマの個体を識別するためにハチミツが入ったペットボトルを山中に設置し、カメラで撮影しています。この日の映像には、たまたま通りかかったとみられる犬の鳴き声に反応した母グマが、子グマ(赤色の丸のなか)を守ろうとペットボトルを激しくひっかいて威嚇している姿がとらえられていました。教授によりますと、子グマを守ろうとする母グマは神経質になっていて非常に危険だということです。

箕口教授
子グマが近くにいて、お母さんが威嚇行動をして子どもを逃がそうとしている。
母グマは神経質になっているので親子グマに遭遇したときは危ない。

出没には長期的要因も 生息域が拡大

教授によりますと、クマの生息域の拡大も出没が増えた理由の1つです。
こちらは県の調査をもとにクマの生息域を表している地図。

緑の部分が平成19年度の生息域。平成28年度までにピンクで示された部分が増え、10年間でおよそ1.5倍に拡大しました。

人口減少や里山の荒廃も

教授は、人口減少による里山の荒廃などでクマの生息域と人の生活圏との緩衝地帯がなくなったことが生息域の拡大につながったとみています。

箕口教授
中山間地というようなところで、どんどん人が少なくなってきていて例えば田んぼや畑だったところが放棄されてしまった。そういった場所が動物たち、ツキノワグマをはじめとする動物たちの隠れ場所であったりエサをとったりする場所になってきている。人間活動が衰退することによって動物たちにとって都合のいい、住みやすい場所が私たちの生活圏のすぐ近くにできてしまったということになります。

人に慣れたクマ「アーバンベアー」

また、生息域が広がったことで人に慣れたクマも増えていて人と遭遇する可能性が高くなっているということです。

9月に関川村でクマ1頭が住宅に侵入しましたが、このクマもそうした一例だと教授は指摘しています。

箕口教授
人間生活、人に慣れてきてしまっているということになると人間を恐れるというよりは人間をうまく避けて行動するような形になる。避けて行動していますけど、当然ニアミスがより発生しやすいような状況になってきて、さらにはエサを求めて生ゴミを求めてといったように人里近くまで出てきてしまうクマ、「アーバンベアー」といわれるようなクマが出没するようになる。

着実に私たちの生活圏の近くに

箕口教授はクマは気づかないうちに着実に私たちの生活圏に近づいているとしたうえで、これまで目撃情報がなかった場所にも出てくる可能性があると指摘しています。

箕口教授
多くの人が感想として「ここに何十年も住んでるんだけどクマなんか見たことなかった。クマが出てくるとは思わなかった」という感想を言われてます。逆に考えるとそういった場所にクマが出てくるというのが現在の状況だということで、どこに住んでいてもツキノワグマが出てくる可能性があるんだと、そういった認識を持ってもらいたいと思います。

命を守るための対策は

では、どのような対策があるのか。

クマの隠れ場所にならないよう間伐をしたり、やぶを払ったりするといった中山間地の管理も大切ですが、私たちにすぐにできる対策は大きくわけて2つあります。

山に入る場合(キノコ採りや山登り)
●目撃情報がある場所には近づかない。
→ 県のホームページやクマ出没マップで最新の情報を確認してください。
●複数人で行動し、鈴やラジオで音を出してクマに存在を知らせてください。
→ クマは人の声を嫌がるため複数でにぎやかに行動することが効果的です。
●クマ撃退スプレーを携帯する。

クマを近づけないための身の回りの対策
●生ゴミの適切な処分。
→ 収集の直前に出すなど長時間、屋外に放置しない。
●家庭菜園の果物や野菜は、収穫しないものはそのままにせず処分を。
●柿の木など果実を収穫しないものは切ってしまう。

もしクマに遭遇したら

もしクマに遭遇した場合は、慌てずにゆっくり後退し、少しずつ離れてください。
そして万が一、襲われた場合は地面に伏せて頭や首・おなかを守ってください。

クマの被害を防ぐため、できることから実行していただけたらと思います。

  • 油布彩那

    新潟放送局 記者

    油布彩那

    令和元年入局
    新潟生活5年目。
    行政や拉致問題の取材を担当。

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