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小さな島の弾道ミサイル避難訓練

  • 2022年11月02日

11月1日、日本海に浮かぶ粟島で弾道ミサイルの着弾を想定した避難訓練が行われました。北朝鮮による相次ぐミサイル発射は、人口およそ300人の村にも影響を与えています。(NHK新潟放送局・草野大貴)

島に広がるミサイルへの危機感

フェリーは多くて1日2往復

新潟県北部・村上市の岩船港から約35キロの沖合にある粟島。自治体は人口およそ300人の粟島浦村です。岩船港とのフェリーは多い日で1日2往復(私も訓練の取材のため2泊を要しました)。美しい景色で知られるこの島で11月1日に行われたのは「弾道ミサイルを想定した住民避難訓練」。ことしに入って北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返していることに危機感を強めた村が、国や県とともにこの訓練を実施することにしたのです。(北朝鮮は訓練の翌日にもミサイルを発射しました)。

お年寄りから園児まで参加

頭を抱え体勢を低くして危険を避ける

今回の訓練ではあらかじめ住民に参加が呼びかけられ、このうち内浦地区では訓練開始前から住民約70人が避難場所に指定されている村役場前に集まりました。顔見知りも多い住民どうし和やかな雰囲気となっていましたが、午後3時半、防災無線からけたたましい警報音とともに「ミサイルが発射されました」という放送が鳴り響き住民は役場内に避難しました。村役場の2階にはホールがあり、住民は爆風による被害を受けないよう窓から離れ、頭を抱えて身を低くしました。訓練には保育園の園児たちも参加し、声を上げることもなく、防火頭巾をかぶって見よう見まねでうずくまっていました。ミサイルが発射されてから着弾するまでを想定していたこともあり訓練は15分ほどで終了。住民からは訓練の意義とともに、切実な声も聞かれました。

参加した男性 北朝鮮がミサイルを発射している中、訓練をすることは意義があると思う。

参加した女性 ミサイルに対しての避難の訓練ができたのはよかったと思う。ただ粟島にはミサイルの被害を遮るようなものがなく心配だ。

粟島浦村の脇川村長

訓練後、粟島浦村の脇川善行村長は住民に呼びかけました。

脇川村長 これからもこうした訓練をしっかりと実施していきたいと思っている。不可抗力でどうしようもないところもあるが、訓練を重ねることによって命が助かることにもつながるので積極的に参加してほしい。

取材後記 ミサイルが落下したことを想定した住民の避難訓練は、県内では5年前、平成29年に燕市で実施されて以来、2度目です。今回、訓練の取材を通じて、北朝鮮によるミサイルの発射が島の人々にとって具体的な脅威になっていることを実感しました。住民が避難することができる地下施設などハード面の整備も、今後の課題になると感じました。

  • 草野大貴

    新潟放送局 記者

    草野大貴

    新聞社を経て2019年にNHK入局。徳島局から2022年8月に新潟に赴任。趣味は長唄三味線。歌舞伎や文楽など伝統芸能に大きな関心。

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