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「弱虫ペダル」アニメ開始!長崎出身の作者、渡辺航さんに聞く

  • 2022年10月05日

長崎市出身の漫画家、渡辺航さん。自転車のロードレースをテーマにした「弱虫ペダル」の作者です。この漫画を読むと高校生のように気持ちが熱くなり、仲間やライバルとの関係性に心が揺さぶられ、「生きるって素晴らしい!」という感情が湧いてきます。渡辺さんが作品にこめた思いを聞きました。

NHK長崎放送局アナウンサー 池田耕一郎

NHKアニメ「弱虫ペダル」スタート

2022年10月8日(日)午前0時(土曜深夜)、NHKでアニメ「弱虫ペダル」のシーズン5がスタートします。

「弱虫ペダル」は2008年に連載が始まり、単行本80巻、累計2800万部を発行している人気漫画です。

主人公はアニメオタクの高校生、小野田坂道くん。坂道くんは大好きなアニメのためにママチャリで秋葉原まで通ったことで脚が鍛えられ、見た目によらず自転車で高いポテンシャルを持っています。そして、千葉県にある総北高校入学をきっかけにロードバイクに巡り合い、インターハイで日本一を目指すことになります。

小野田坂道くん

坂道くんは総北高校・自転車競技部のとても"個性的"なメンバーたちとともに大きく成長していきます。

 

「全力でがんばる」

今回の取材では渡辺さんが「弱虫ペダル」を執筆している部屋でインタビューをさせて頂きました。渡辺さんは総北高校のジャージで登場してくれました。

『弱虫ペダル』のテーマの一つが「全力でがんばる」ことです。自転車競技は長い距離を一人でこぎ続けるため、努力が結果に現れやすいスポーツです。主人公の坂道くんをはじめ、仲間やライバルたちはひたむきに、そしてチームのために献身的にペダルを回し続けます。

渡辺航さん

渡辺航さん
「全力でやる。そして、自分が持ってる全部を出す。その瞬間はすごく大事だと思っています。涙を流しながら、汗を流しながら、よだれまで垂らしながら、頑張ってやることで失敗したとしても、やっぱり次の扉が開くと思うんですよね」

 

頑張れば「次の扉が開く」
この言葉がぴったりなのが手嶋純太くんです。手嶋くんはけっして才能ある選手ではありませんが、そのがんばる姿はチームに影響を与えます。

手嶋純太くん

渡辺航さん
「坂道くんが2年生になった時の主将は手嶋純太。彼は本当に努力型で、本人も自覚してるとおり才能はない。そんな努力しないと頑張れない人が、より努力して(王者の)箱根学園のエース真波山岳と戦う。しかもギリギリまで接戦を繰り広げる」

渡辺航さん
「実際の生活でも、才能があんまりないタイプの人がめちゃくちゃ頑張る。めちゃくちゃ頑張って、ある種の壁を突破していく姿を見るとめちゃくちゃ震えるし。もっと自分も頑張ろうって思う。漫画の中でそういう部分はすごく描きたいと思ってます」

 

「仲間の可能性を引き出す」

『弱虫ペダル』では仲間の「可能性を引き出すこと」もテーマの一つです。坂道くんは得意の上り坂を同級生の鳴子章吉くんや今泉俊輔くんに褒められ、巻島裕介くんは落ち込んでいた時に神崎先輩に背中を押され、勝利への執念が足りない葦木場拓斗くんは福富先輩たちが才能を開花させる。

不器用だたったり、弱気だったり、自信がない性格だったりする登場人物たちは、仲間やライバルとのたくさんの出会いを通して、自分の得意なことに気づいて成長していきます。

渡辺航さん
「坂道くんの成長物語を軸に書いてるんですけど、実際の人たちもそうだと思うんですけど、いろんな人と出会って、いろんな意見を聞いて、時にはぶつかったり共感したりする中で、自分のいろんな面を知っていくんだろうなというのがあって」

 

その背景には、渡辺さん自身の苦しい経験もありました。子どもの頃から漫画好きで高校生ときには出版社の賞を受賞。そして、長崎大学を卒業後にマンガ家を目指しますが、その道のりは順調ではありませんでした。

アシスタント時代に首になりかけて自信を失います。しかし、同僚からかけられた言葉が救いになりました。

渡辺航さん
「同僚の人が『すごく背景うまいね』とか、『ベタの入れ方がうまいね』と言ってくれたんですよ。僕は普通にやっていたんで『ベタ、どこがうまいんだ?』と思っていたんですけど。言われて意識してみると『自然にやっていたことだけど、他の人からすると上手なことなんだ』と気付かされたんです」

渡辺航さん
「それからは背景を描くのがすごく楽しくなったし、早くなったし、正確になった。それは一人で作業していたら絶対気づかないこと。そのちっちゃい褒め言葉が、自分の可能性を広げてくれました」

渡辺航さん
「漫画の中でも書いたんですけど、自分の才能とか良いところって、自分の見えないところ、背中とか、頭の上とか、お尻の上とか、多分見えない所にあるんだろうなって思ってます。それを見つけてくれるのは友達とかであり、『絵うまいよね』『長距離速いよね』という本当にちっちゃな一言だと思うんですよね」

 

「失敗が次につながる」

渡辺さんは情報があふれ過ぎてている現代社会で、失敗をおそれずに挑戦することを大切にして欲しいと考えています。

渡辺航さん
「失敗してもいいので全力でやる、常に。全力でやった。でも結果は出ませんでした。僕はそれでもいいんじゃないかなと思ってます」

「そこから次の目標ができていく。または、こうやったら、うまくいくんじゃないかと人は考える。だから『全力でやる』とか『もがく』ことってすごく大事だし、それは『弱虫ペダル』を通して子どもたちに伝えたいことの一つなんですよね」

 

取材後記

『弱虫ペダル』作者の渡辺航さんはロードバイクが趣味です。毎年、夏休みは自転車で帰省されていて、今年は5日間かけて大阪から長崎まで自転車で駆け抜けたそうです。

実は私も30歳の時から15年以上、ロードバイクを趣味で乗っていて『弱虫ペダル』を愛読しています。長崎局に赴任したことに運命を感じて「ぜひお話を聞きたい!」と思い、インタビューをさせて頂きました。

さて、その長崎では今年、『弱虫ペダル』で盛り上がっています。長崎市内27か所にキャラクターマンホールが設置されて多くの人が訪れています。渡辺さんの出身地近くの公園には箱根学園の真波山岳くんのマンホールがありました。

渡辺航さん
「僕の出身地の古賀は植木が産業として栄えていました。実はおじいさんも植木屋さんをやっていたんですよ。植木は生きているし、生き物がたくさんいるし、自然もたくさんあるという思いを込めて『みんな生きてる!!』という言葉にしました」

「みんな生きてる!!」

とても素敵な言葉ですよね。長崎を訪れた際はぜひ『弱虫ペダル』マンホールめぐりも楽しんでみて下さい。

アニメ弱虫ペダル LIMIT BREAKはNHK総合で10月9日(日)午前0時(土曜深夜)からの放送です。そして、インタビュー動画はNHK長崎おすすめ動画から観られます。

  • 池田耕一郎

    NHK長崎放送局アナウンサー

    池田耕一郎

    2000年入局
    静岡→沖縄→札幌→大阪→東京→長崎
    スポーツ、妊婦・子育て支援などを取材

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