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宮崎 青島の名菓"ういろう"はどう見ても"うかわろう"?

  • 2023年04月21日

NHK宮崎のニュース情報番組「てげビビ!」の名物コーナー「てげ探」。視聴者の疑問に答える、このコーナー史上で最年少、小学5年生の男の子からの質問です。ある宮崎名物のお菓子についての質問なんですが、まずはどんなものか、じかに聞きに行ってきました。

「ういろう」?「うかわろう」?なんでこんなパッケージ?

疑問を投稿してくれた宮崎市に住むヒロアキくん(11)のもとへ。

「お父さんが『“ういろう”はなんで“ういろう”と言うんだろう』と言い出したんです。『あれはどう見ても“うかわろう”と読むのに、なんで“ういろう”と言うのか、教えてほしいです」

ヒロアキくんが言っているのは宮崎市の青島名物、ういろう。このパッケージ、よーく見てください。確かに漢字のような文字が書かれていますが、「う」や「い」とは読めません。

安間記者

ういろうは好きですか?

ヒロアキくん

白と黒の味があって、僕は白が好きです

そんなヒロアキくんのために早速、調査開始!

ういろうのお店で聞き込み

向かったのは青島。「こどものくに」から県道沿いにずらりと、ういろうのお店が並んでいます。

すぐにも調査、といきたいところなんですが。実は私、まだ食べたことがなかったので、まずは味を知るところからと思いまして。

素朴な味わいで、クセになる感じでした。この日も、この味を求めて客が絶えません。

安間記者

何でこんな字なのか知っていますか?

買い物客

言われてみれば知らないです。昔からこの字になっているから違和感はないですね。

安間記者

何でこんな字で書いているのか不思議では?

買い物客

確かにね

"う"、"い"の正体は変体仮名!?

諦めかけていたところ、昔から商店街で店を営むこちらの方から、ある情報が。

それならば、文字に詳しい専門家なら知っているかもしれません。日本語を研究している宮崎大学の塚本教授に話を伺いました。

安間記者

これはなんと読むんでしょうか?

塚本教授

“う”は宇宙の“宇”の崩した字で、“い”は以上以下の“以”を崩した字です。変体仮名と言われているものですね。これで、ういろうと呼びます。

変体仮名とは?

変体仮名とは、何なのでしょうか。ひらがなが出来る以前、日本語の「う」の音に対して「宇」「雨」「有」など、さまざまな漢字が当てられていました。それが平安時代になって、漢字を崩して書かれるようになりました。明治33年に現在のひらがなに統一され、それ以外の字はまとめて変体仮名と呼ばれるようになりました。

塚本教授

商品名とかあるいは看板に使われることで細々生き延びてるんだろうということになります。

あのパッケージを作ったのは「ういろう」の生みの親!? 

では、なぜこの文字を“ういろう”に使ったのか。宮崎で最も老舗のういろう屋さんに話を聞くことにしました。昭和14年の創業以来、3代にわたって変わらない製法でういろうを作っています。

青島にあるういろう屋さんのほとんどが昔から、このデザインの包み紙をそろって使っているとか。

文字の謎について聞いてみると・・・。

西河さん

叔母が聞いている話だと鈴木サトさんという、ういろうを作られた方が、100年以上前の方なんですけれども、その方がただひらがなで“ういろう”と書いたただけじゃ商品としてお土産としてインパクトがないというので、“うい”の字を昔の仮名文字にしたんじゃないかって叔母は聞いているそうです。目にもパンと入るような感じでマーク的な感じで考えられたのかもしれない。

この方が鈴木サトさん。明治10年頃、青島で旅館を営み、お茶うけとして「もち菓子」を出していました。当時、近くの茶屋で出されていた宮崎の郷土菓子、「いりこ餅」が人気でしたが、鈴木サトさんはこれに対抗しようと「もち菓子」に改良を重ねます。

その結果、「おサト羊羹」の名で親しまれるほどの名物になりました。いつしか、これをサトさん自身が「ういろう」と名付けたと伝えられています。

貴重な資料を発見!

鈴木サトさんに関する資料はもうほとんど残っていませんが、調べていく中でこんなものを見つけました。

大正末期から昭和初期の絵はがきです。宮崎の古い絵はがきを収集している男性が所蔵していました。

後ろの看板に「青島名物ういろう鈴木さと本店」と書かれています。看板をよく見ると、ういろうの「う」はひらがなで、「い」だけが変体仮名です。

 もうひとつあります。こちらは戦前に売られていたと思われるういろうの包み紙です。「ういろう餅」と書かれています。

今のパッケージとほとんど変わらないデザインです。こちらは「う」と「い」の両方が変体仮名。今と同じです。

サトさんはういろうを有名にするため、変体仮名にする文字を変えるなど、試行錯誤を重ねていたのかもしれません。老舗ういろう店の女性も、こんなことを話していました。

西河さん

ういろうをおみやげとして売り出そうと思ったサトさんの勢いというか、サトさんもすごいやり手だったと聞いているんですけど、あの頃の女性は強かったなと思いますね。

取材を終えて

滑川アナ

パッケージのデザインは商品の売れ行きを左右する大事な要素ですからね。あの時代に、あえて商品の文字を変体仮名にしてみようと考えるなんて、鈴木サトさん、ただ者ではなかったんですね。まだご存命でしたら話を聞いてみたかったです。

安間記者

ういろうは、元をただすと室町時代に生まれたお菓子で、江戸時代ごろに全国に広まり、各地で名物となりました。有名なところで言うと名古屋や京都などがありますが、和菓子の業者で作る「全国和菓子協会」に聞いてみたところ、「ひらがな以外の文字を使っている地域は聞いたことがない」ということでした。

滑川アナ

なるほど、青島のういろうは、ほかの産地と比べると、ある意味、新参者だったんですね。

安間記者

はい。そうした意味でも、もしかしたら差別化を図りたかったのかもしれません。

“青島ういろう”を通じて、1人の女性から受け継がれる宮崎の歴史が見えてきたというところで、今回はひとまず、てげ探終了。疑問を投稿してくれたヒロアキくん、どうでしたか~。

調査をした私としては、もっと真相に迫りたいので、引き続き調べていきたいと思います。鈴木サトさんをご存じの方や、新たな情報をお持ちの方は、ぜひ、お寄せください。

  • 安間 来夢

    NHK宮崎・記者

    安間 来夢

    宮崎局4年目になりました。ういろうをはじめ、宮崎はどの名産品も美味しいので思わず食べ過ぎてしまいます。

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