宮崎県知事選挙 私たちだって変えられる!宮崎の若者が動いた
- 2022年12月23日
選挙のたびに低い投票率が指摘される若者たち。
考えていないわけじゃない!
だって私たちの将来がかかってるんだもん。
でも、候補者の訴えもよく分からないし。
投票したって結局、変わらないでしょう。
そんな若者たちとNHKがコラボして、ちょっと真剣に選挙について考えてみました。
宮崎大学✕NHKの『特別授業』
宮崎県知事選挙の告示から4日後の12月12日。宮崎大学木花キャンパスの図書館1階のホールで、早朝からある特別授業が開かれました。
宮崎大学の地域資源創成学部とNHK宮崎放送局のコラボ企画です。
授業に参加したのは、オンラインも含めて学生およそ120人。そこに登壇したのが、国際部の山下涼太記者(30)です。
県知事選挙が告示されたばかりの宮崎で、なぜ、国際ニュースに携わる記者が話すの?
そこに今回の特別授業の大きな狙いがありました。
実は山下記者は、ことし(2022年)11月に行われたアメリカの中間選挙を、1か月近くにわたって現地で取材をしてきました。その際に力を入れた取材が主に2つ。
トランプ前大統領の登場以降、深まったアメリカ国内の分断のなか、選挙結果を認めない民主主義の危機ともいえる状況と、アメリカの若い世代、特に「Z世代」と呼ばれる若者たちへの取材でした。
現地で見たアメリカのリアルを、山下記者は、みずからが制作した全国放送の企画やWEB記事を使って伝えました。
“民主主義のもろさ”と“若者の可能性”
山下記者が学生たちに伝えたかったこと・・・。
それは、「民主主義はもろい。だからこそ関心を持ってみよう、行動しよう」ということです。
アメリカの中間選挙では、選挙に不正が行われないよう投票所の近くで銃を構えて監視する人や選挙管理委員会の職員を脅迫する人まで出ました。山下記者はこうした民主主義の、ある意味での“もろさ”を取材実感をもとに伝えました。
そして、そのような中で、学生たちと同じ1990年代後半から2010年代前半に生まれた若者たち、いわゆる「Z世代」の投票行動が、民主党の善戦という結果の要因の一つになったことを、選挙後のデータなどを使って説明しました。
さらに民主党に投票した若者の多くが、妊娠中絶の問題や気候変動対策といったみずからのくらしや将来に関わる問題を重視したことも紹介しました。
「アメリカの人たちは自分の信じたいものをとても強く過剰に信じすぎているからこそ対立が生まれてしまっている一方、宮崎県も含めて日本では、候補者や政治家のことを信じられないからこそ投票率が下がっていると思う。信じられるような状況になってくれるといいなと思います」
大学構内に初の期日前投票所が!
なぜ、こうした特別授業を行ったのか。
実は、今回の県知事選挙にあわせて、宮崎大学木花キャンパス内にはこの日(12日)から2日間だけ、臨時の期日前投票所が設置されることになっていたのです。
しかも、この投票所の設置は、学生たちが宮崎市の選挙管理委員会に陳情したことがきっかけでした。
せっかく設置された期日前投票所。大学側としても学生たちに利用ほしいということで、このコラボ企画が実現しました。
でも…気になる学生たちの意識
特別授業の前に大学とNHKが合同で行ったアンケートで、少し気になる結果が出ていました。
学生の半数近くはこれまでに選挙の投票に行ったことがないと答えました。
さらに「自分の意見や希望が政治に反映されていると思いますか?」という質問に対しては、「そうは思わない」と答えた人がおよそ70%にものぼりました。
「どうせ投票しても変わらない」
「若者の声なんて聞いてもらえない」
これまでの選挙取材でも若者たちからよく聞いてきたことばです。
自分たちで“争点”を考える
政治に無関心になってほしくない。
そんな思いで、特別授業も後半に入りました。今度は自分たちの県知事選挙について考える時間です。
まずは主な争点、①新型コロナウイルスや物価高騰に対する地域経済の打撃、②人口減少、③農林水産業の振興、④教育・子育て支援、⑤台風14号の復興や南海トラフ地震などの災害対策の5つについて、3人の候補者がどんなことを訴えているのか、調べました。
使ったのは「選挙公報」と「NHK候補者アンケート」です。自分たちの意見と、どの候補者の訴えが比較的近いのか、考えてもらいました。
さらに、グループに分かれて、投票するうえで最も重要視することは何か、話し合ってもらいました。ほかの人の意見を聞くことで、より視野を広げて、地域の課題について深く考えてもらうためです。
地元の地域経済が成り立ってないと、そもそも他の課題とか、人口減少対策とか災害対策とか農林水産業、教育・子育てとかがうまく機能しないんじゃないか
公約で掲げられている観光振興策が、自分たちの生活にどう直結しているのか、もっと知りたい。あまり政治とかに詳しくないので、公約はもう少し具体的に書いてほしいな
地域経済を活性化するためには若者の力が必要だと思う。だからどうやって若者を県内にひき入れるかっていう、宮崎の魅力の発信のしかたがやっぱり重要だと思う
学生たちのリアルな声
グループ発表のあと、特別授業のしめくくりです。
学生たちに「よりよい宮崎に」するために最も大切にしたいことを、5つの争点から選んでもらい、テーマごとに色が分かれた付箋に、その理由も含めて書き出してもらいました。
77枚の付箋のうち、最も多かったのは教育・子育て支援の20枚。次に人口減少が17枚、そして新型コロナウイルスや物価高騰に対する地域経済の活性化が15枚などとなりました。
「物価上昇によって地域経済の活性は進んでいないと思う。特にガソリン代の高騰が気になる。出かけるときも車を出すのをためらうことがある。そこを解決していくこで、より地域経済の活性につながっていくと思う」
「宮崎牛など農林水産物のブランド力強化や販売輸出を促進することは大切だが、まずは、宮崎で農林水産業を担う人材を育てる、守ることが大切だと思う。当事者の意見を聞き、支援してほしい」
期日前投票はどうなった?
この特別授業のあと始まった大学構内での期日前投票。
どうだったのか。
大成功ともいえる結果でした。
宮崎市選挙管理委員会によると、2日間で投票した人はあわせて519人。選挙管理員会が当初予想していた300人を1.7倍も上回りました。
学生たちが4割余りで、大学の近くに住む人たちも利用したということです。
男子学生
「授業の合間に投票に行きました。選挙について友だちと話をするいいきっかけにもなりました」
予想を超えた利用に、選挙管理員会も今後の選挙でも、大学構内での設置を「前向き」に検討しているということです。
私たちも政治に参加する!
まだまだ宮崎の将来も捨てたもんじゃない。
そんな思いにさせられる結果も学生たちへのアンケートから見えてきました。
「候補者を選ぶのって、すごく悩むと思います。自分たちが投票して当選した候補者が、本当に宮崎にとってよかったのかどうかはすぐ分かるわけじゃないので。でも、そういうことの一つ一つに、きっと意味があるんだろうなって思って、これからの選挙もしっかり向き合って参加したいなというふうに思いました」
取材を終えて
自分の1票で何かが変わるわけがない。
若い世代に限らず、こう思って投票に行かない人は少なくないと思います。
でも、数人の学生たちの思いが、行政を動かして期日前投票所が設置され、そして予想を超える人たちが投票しました。
「自分たちの行動で変えられる」
大学生たちの姿を見ていて、改めてそんな当たり前のことを感じさせられました。
宮崎県知事選挙は今月25日に投票が行われ、即日開票されます。
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