宮崎 台風14号の甚大な被害 テレビの電波を守るNHKの最前線
- 2022年10月18日
大きな被害をもたらした台風14号
放送を届けるための舞台裏
テレビやラジオの放送を届けるための中継局では、停電時でも放送を届け続けるために、自家発電装置や非常用電源(蓄電池)を整備しています。9月18日、宮崎に最接近した台風14号は中心気圧935hPaと非常に強く、倒木や土砂災害で、電力会社の送配電設備が被害をうけて県内各地で停電が発生。NHK宮崎が保有する中継局も、停電の影響を受けました。
TVはどうやって映っている?
~県内のご家庭へ電波が届くまで~
まず初めに、簡単に宮崎県内のご家庭にTV電波が届くまでをご説明します。TV電波は、宮崎市にあるNHK宮崎から、標高1118mにある鰐塚山に送られ、ここから、みなさんのご家庭のTVに向けて電波が送信されています。山かげなどで受信しにくい地域には、TV中継局を設置し、ここから再送信して県内あまねく家庭に放送を届けています。県内には47の中継局を設置しています。
猛烈な台風14号が襲来
県内各地で停電発生
今回の台風14号通過で、放送設備にどのような影響が出たか。9月18日の台風14号通過時に暴風雨の影響で県内各地で停電が発生、県内ほとんどのTV中継局で停電が発生しました。TV中継局の送信機器はみなさんのご家庭と同じように、電力会社からの電気を使用し、24時間休みなくTV電波を送信しています。電気がなくなれば、TV電波は止まり、各家庭にTV電波をお届けする事ができなくなります。今回は県内47局所のTV放送所のうち、27局が2時間以上の停電となりました。
停電でも放送が継続できるように!
備えあれば憂いなし
NHKでは停電時でも放送を継続できるように、非常用電源(自家発電装置、バッテリー)を備えています。非常用電源のおかげで、停電が発生しても放送を継続できますが、長時間続くと非常用バッテリーの容量を使い果たしてしまいます。今回の台風14号では停電が長時間にわたったため、自家発電装置の燃料や非常用電源がなくなり、放送を届けることができなくなるおそれがあり、点検員が危機的な状況にある中継局に緊急出動して対応に追われました。
行く手を阻む、倒木、倒木、倒木
そして土砂崩れ・・・
台風の暴風域を抜けた9月20日からは、停電が続いている7中継局の電源を確保するために緊急出動しました。途中、倒木や土砂被害などで通行できない道も多くありましたが倒木を撤去するなどして、通常よりも時間をかけて中継局へ向かうことになりました。
到着 携帯型発電機セッティング
電源バックアップ開始
中継局に到着したら携帯型発電機で電源を供給、約3時間おきに給油が必要な中継局では夜通し有人で対応し、放送を継続させました。中継局の停電は最長で144時間(約6日間)に及びましたが、9月24日にすべての停電が解消されました。
鰐塚山TV放送所でも長時間停電
~県内のTV電波がピンチに!~
県内で最も重要な鰐塚山TV・FM放送所でも、9月18日から停電が続いていました。自家発電装置で電源バックアップをしていましたが、暴風雨が続き、道路の崩落と土砂崩れのため車が通行できず、9月20日に車両が通行できない地点から徒歩で鰐塚山TV放送所へ向かいました。倒木を潜り抜け徒歩開始約3時間後に到着、設備点検実施して大きな被害がないことを確認しました。その後も停電は続き、過去最長となる70時間を超えて、異様な緊張感が漂う中、その時は突然訪れました。9月21日「停電回復」。一斉に職場に歓喜の声が上がりました。
作業の安全管理については、現場出向時は2人以上とし、ダブルチェックや声掛けなど、安全を確認しながら作業を実施しています。通信が可能なら、現地到着、作業開始・終了、現場離脱など、随時、情報を共有し、現場の動きがわかるようにしています。今回は道路事情が悪く現場到着に時間を要することは想定されていたので、現場の作業はもちろんですが、現場到着までの安全確保により注意していました。
台風接近・通過後の9月18日~24日の1週間でNHKに寄せられたテレビの映り具合に関する相談は約60件(参考:8月1日~31日は約50件)。多くは強風により自宅のアンテナが被害を受けたことによるものでした。また山間部では電波が届きにくく、共同アンテナでテレビをご視聴頂いている地域がありますが、集落内の停電が回復してから設備の被害が判明したところも多く、復旧作業は9月末まで続きました。現在も、停電しなかった中継局も含めた設備の事後点検を順次行っています。これからもNHKグループ一丸となり放送をお届けします。