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NHK宮崎 紅白に込められた思い 横断歩道の歴史とカラー化の訳

  • 2022年09月15日

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赤と白のストライプの横断歩道を見ました。どんな意味・効果があるの?

視聴者の疑問に答える「てげ探」。今回は、宮崎の街中に現れた紅白の横断歩道の話題。カラー横断歩道の背景を取材するうちに、日本で初めて作られた大正時代の横断歩道の形や、昭和35年のチェッカー柄の横断歩道の映像まで見つかりました!

どうして紅白?

まずは紅白の横断歩道の現場を見てみることにしました。宮崎市大塚町の交差点に「紅」と「白」のカラー横断歩道があります。

確かに私がイメージする横断歩道とは違います。さらに、紅白の横断歩道は宮崎県庁の近くにもありました。疑問に答えるために「横断歩道のことなら警察だ!」と思い、宮崎県警察本部に聞くことにしました。

疑問に答えてくれたのは、宮崎県警察本部交通企画課の田中智樹さんです。

田中智樹さん(宮崎県警察本部交通企画課)

田中智樹さん(宮崎県警察本部交通企画課)
横断歩道を目立たせようと考えたんです。

あっさりと疑問に答えてもらいましたが、ここで新たな疑問が湧いてきました。「横断歩道は白だけじゃないの?色の決まりがないの?」

調べてみると、横断歩道は道路交通法やそれに関連する命令で明確に色や標示の仕方が決められていました。その規定では横断歩道は白のしま模様。これは私たちが普段、目にしている横断歩道です。しかし、このデザインは昔からずっと同じではありませんでした。

日本初の横断歩道

気になったので、横断歩道の歴史についても調査することに。すると横断歩道が日本に誕生したのは大正時代ということが分かりました。昔は今と違って、白色の縦線2本のシンプルなものが使われていました。

そして横断歩道が初めて法律で定められたのは昭和35年。そのときは、縦線の間に真ん中で互い違いに横線を配した<チェッカー柄>のような横断歩道になっていました。

このあと、横断歩道は縦線の中に今のしま模様といういわゆる<はしご形>になります。

そして、この<はしご型>では白い塗装に囲まれる部分に水がたまり、車のスリップが起きる可能性があることや国際的な標準となっている標示に合わせようと縦線が省かれ、今の横線だけのしま模様の横断歩道となったことが分かりました。

横断歩道の歴史が分かったところで、今の横断歩道のことを調べてみることに。規定にあった「横断歩道は白のしま模様」というもの。実は「白のしま模様の間の色」については明確な規定はないということが分かりました。そこで最近になって誕生したのが、今回のような白と「もう一色」を使った横断歩道です。

県警察本部が各都道府県の実態を確認したところ、今年5月の時点で41の道府県で、横断歩道に「もう一色」が使われていたそうです。これらを参考に県内では特に交通量や事故が多い27か所の横断歩道を選び、紅白にしたということでした。

道路の「色」に込められた思い

では、もう1色をなぜ「赤」にしたのか?
県警察本部によると、横断歩道を目立たせるうえで、赤信号のイメージがあるようにドライバーに「止まらないといけない」という印象をもってもらうためということでした。しかし、私はそこでさらに疑問が浮かびました。実は私が取材を担当している地域の都城市には、「紅白」ならぬ「緑と白」の横断歩道があるのです。

そのことを警察に聞いて見ると「緑色」の横断歩道は見たことがない、把握していないとのことでした。

田中智樹さん(宮崎県警察本部交通企画課)
横断歩道の色は、法律で「白」と定められていますが、白色以外の部分は、法定外標示といって、道路管理者(国や県、市町村など)が塗ることができます。赤に塗った部分も道路管理者と協議して決めました。

そこで都城市の担当者になぜ「緑色」にしたのかを聞いてみました。

(都城市担当者)
緑色は、通学路の路側帯に使われている色です。「歩行者の場所」というイメージを持ってもらうために緑色にしました。

緑と白の横断歩道は都城市だけでなく、神戸市や仙台市などほかの自治体にも存在していました。「赤」と「緑」の2つの色。どちらがより効果的なのか?1つの色に統一できないのか?専門家に尋ねてみました。

志堂寺和則 教授(九州大学大学院・交通心理学が専門)

志堂寺和則 教授(九州大学大学院・交通心理学が専門)
「赤」や「緑」が混在しているのは法律や指針で統一するようになっていないからで、ドライバーは全国どこでもハンドルを握る可能性があることを考えると統一した方がいいのかもしれません。ただ、地域の状況はそれぞれ違いますし、横断歩道を目立たせるという点では色が違っていても効果に差がないようにも思います。

「赤」と「緑」の効果についても説明をしてくれました。

赤色のメリット
▽目立つ色なうえ、「危険」をイメージさせる。
▽危険・禁止などが連想され車に停車してもらいやすい。

緑色のメリット
▽全国的に歩道を緑色に塗っている地域も多く「歩行者の場所」というイメージがある。
▽暗くなっても目立ちやすい。

「赤」「緑」それぞれ同じように横断歩道を渡る歩行者の安全を守るための効果が期待されていました。志堂寺教授によると「赤」や「緑」を使った横断歩道ではスピードを落としたり、一時停止したりする車両が増える傾向があるそうで、横断歩道近くに段差を設けるなどほかの方法よりも比較的、簡単にできて効果も期待できるということです。ただ、注意点もあるようです。

志堂寺和則 教授(九州大学大学院)
目立たせようと「赤」などの色を使った横断歩道が増えすぎてしまうと、それが普通になってしまい目立つという効果が薄くなる可能性があります。必要な横断歩道に効果的に活用するのがよいのではないでしょうか。

いつも見慣れていた横断歩道。ちょっと変わった色の横断歩道が生まれた背景には事故による犠牲者をなくしたいという思いが込められていました。ただ、ハンドルを握る人たちには、そんな色の違いなど関係なく、「横断歩道は歩行者優先」という当たり前のルールを改めて徹底してほしいと思います。

宮崎県の昨年1年間の交通事故データ
事故件数4461件。死亡事故29件。死者30人。
このうち、横断歩道での事故94件。横断歩道での死亡事故5件。死者5人。

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