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在日韓国人3世の男性43歳が、偏見について考えていることを分かち合いたいとVR空間に飛び込んでみたら…声にならない声を拾って届けていきたいと思った/『プロジェクトエイリアン』出演者のその後

現実社会では出会わないような4人が、自分が何者かを伏せたままVR空間上でエイリアンのアバターに身を包んで交流する番組「プロジェクトエイリアン」。

参加者の1人で、在日韓国人3世のウテリーさん(43歳/仮名)。小学校の時から偏見をもたれていると感じる機会が多く、偏見は誰しもが持ってしまうものなのではないかと考えながら日々を暮らしてきました。VRでの交流を経て、いったい何を感じ取ったのか、取材しました。

(「プロジェクトエイリアン」ディレクター 伊豫部紀子)

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みんなの中にある“偏見”への気づき

『プロジェクトエイリアン』では、VR空間を舞台に、見た目に影響されないアバターでの交流を通じて、ジェンダーや国籍などを理由とした“分断を乗り越える”きっかけとなる場を作ろうとチャレンジしています。在日韓国人3世で教員をしているウテリーさん。“偏見”に気づいた当時について話を始めました。

ウテリーさん

「入学式の時に6年生の男の人が僕の本名3文字なんですけど『うわー名前3文字や』って言って、そっからですよね。やっぱりケンカをしても『朝鮮帰れ』とか『韓国帰れや』みたいに。さげすまれてますからね、やっぱり。最近は民族差別を直接受けるなんてそんなにないけど、本当につらいなっていうのは、飲み会とかお酒が入るとね、『ぶっちゃけウテリー先生って、在日っていうことで、私たち日本人を差別してるよね』と。『あなたは在日韓国人だって言ってる時点で、日本人のことが嫌いでしょ』と。『いや、そんなことないですよ』って、『決して在日韓国人であるがゆえに、日本人はみんな僕たちのことを差別してるなんて思ってないんですよ』っていうようなことが、結構ありますね、職場でも」

ウテリーさん

「その背後には在日外国人やマイノリティーを低位に位置づける社会構造みたいなものをたぶん毛穴から吸収されてて無意識に出てるんじゃないかなと。例えば政治に関する報道などで、僕たちの立場っていうのは揺らぎやすい。マイノリティーっていうのはどうしても、やっぱり偏見や差別にさらされやすいって思うことは多いですよね」

そうした中、ウテリーさんの人生の原点にあったのは、“祖母のまなざし”だったと語ります。

ウテリーさん

「こうしたさげすみよりも何十倍も他者からの良い評価、眼差しを受けて僕は育ったと思うんですよね、その原点がやっぱり、おばあちゃん。韓国語ハングルで“ハンメ”ですよね。在日1世として苦労したんやと思いますよ。3畳あるかないかぐらいの小屋で住んでて、僕が『いじめられてるんちゃうかな』とかよく保育園での様子も見に来てくれてましたね。本当に純粋に僕の可能性とか僕への期待を一心に思いを持って見つめてくれてるそのハンメがやっぱり土台になってくれたんですよね」

今は教員として児童や生徒を支える立場となったウテリーさん。しかし、自分自身も“偏見”と向き合うことが難しいと感じるそうです。

ウテリーさん

「例えば僕は性的にはマジョリティー。異性愛者やっていうことに、僕、無意識でいられますよね。その意味で言うと僕も自然に性的マイノリティーの方の差別や偏見はしたかもしれん、したくないけど。偏見って重力と同じで、無自覚だけど、だからこそ誰もが偏見からは自由にはなれないんだと思うんです。そんな中で僕も、セクシャリティーや社会的弱者といったマイノリティーへの無自覚な偏見を持っているかもしれないと考えると、結構悩むことが多いですね」

VR空間で“エイリアン”になってみて気づいたこと―

番組では、現実社会では交わり合わない4人が外見や素性を伏せて、エイリアンのアバターに身を包みVR上で一緒に月面旅行をしてもらいました。ウテリーさんには、プロジェクトエイリアンの世界はどのように映ったのでしょうか?

ウテリーさん

「それはもう本当にいい出会いでしたね。僕はマイノリティーの星になりたい、たくさんの人たちを輝かせたいと思ってきましたが、今回出会った3人のような人たちをより応援したい、自分が闘っている教育の現場で、そこに力を入れていきたい思いをより強くしました。何がつらいってアバターでの交流で2回、それしかもう会えない、コミュニケーションできないということですね。それが僕の胸にずっと刺さっています」

偏見についてそれぞれの思いをぶつけた4人での対話。特に、印象に残っていることを教えてもらいました。

ウテリーさん

「がん患者のルーさんが『“かわいそう”って声をかけられる時に偏見だと感じる』という話を聞いて自分にかぶるなと思って。そうかと思えば、自分自身精いっぱい生きているのに、『マイノリティー特権』のように言われることがあったり…マイノリティーだということで受けざるを得ない偏見の複雑さを改めて感じました」

ウテリーさん

「やっぱり、僕の中ではドーアツさんとの交流が刺さっています。生活保護受給者の苦しい生活ぶりを目の当たりにして『これじゃいけない』という思いを強くしました。ルーさんはドーアツさんに『人は1人で生まれて1人で死んでいく』と語られていたんですけど、僕はやっぱり、他者の中からどこか共感できるとこは、見つけたいなと思います。例えば、この人のことは仲良くできないけど、同じスパゲティ好きやとかで、共感できる部分を探そうねって。もちろん人の気持ちってわからへん部分も多々あるんですが。これからは、教員として、民族マイノリティーとして、声にならない声を届け続けたいですよね、それがドーアツさんへの応援になるといいなと思いますし、僕のもう勝手に使命やと思ってます」

他者との交流のハードルを下げ、さらには距離感を縮めることも可能なVR空間。「VR×社会課題」プロジェクトでは、今後もVRの有効活用法を模索していきたいと思います。

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この記事のコメント投稿フォームから番組への感想やウテリーさんへのコメントをお待ちしています。

みんなのコメント(1件)

体験談
ここる
19歳以下 男性
2023年11月26日
僕は小学生なんですけど「韓国行けよ」とか「日本に来んな!」って言われたりしてそれだけでいじめされたり首絞められたりして遊ぶ時も「韓国人は入れない」とかニュースで韓国と戦争しかけたりするといじめが激しくなってきつかったです、全てはわかりませんが少しは分かります。