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犯罪を犯した夫と同居する女性28歳が、誰にも共感されない結婚生活の話を聞いてほしいとVR空間に飛び込んでみたら…自分の人生は自分の足で生きようと思った/『プロジェクトエイリアン』出演者のその後

現実社会では出会わないような4人が、自分が何者かを伏せたままVR空間上でエイリアンのアバターに身を包んで交流する番組「プロジェクトエイリアン」。

参加者の1人で、犯罪を犯した夫と同居している、こあらさん(28歳/仮名)。夫が盗撮で逮捕されたものの、「性依存症」という医師の診断から、「病気なら治せばいい。そして回復した夫を見てみたい」と夫を支え続けていますが、夫との距離をどうすべきか今も悩み続けています。VRでの交流を経て、いったい何を感じ取ったのか、取材しました。

(「プロジェクトエイリアン」ディレクター 松田 真奈)

【関連番組】 NHKプラスで11/19(日) 午前1:30 まで見逃し配信👇

ある日帰ってこなかった夫が犯した性犯罪…夫との距離感に悩む

『プロジェクトエイリアン』では、VR空間を舞台に、見た目に影響されないアバターでの交流を通じて、ジェンダーや国籍などを理由とした“分断を乗り越える”きっかけとなる場を作ろうとチャレンジしています。犯罪を犯した夫と同居を続ける、こあらさん。当時の状況と夫への割り切れない思いを語りました。

こあらさん

「夫が犯した罪は“盗撮”です。ある日、夫が帰ってこない日があって、連絡も全然とれなくて。もう心配で、夫のことを探しに行ったりもしました。次の日、警察から連絡があって『逮捕されました』っていう報告を受けて発覚しました。『駅のトイレにカメラをしかけてました』っていうふうに言われて。夫が、女子トイレの中に忍び込んでいて、その場で逮捕されたような形です。それ以降、あまりのショックでしばらく眠れなくなり、食事も食べられないし、もうずっと泣いてるような状況が続いてました。あの時のことは昨日のことのように毎日思い出します」

夫との離婚を考えたこあらさんですが、逮捕後、夫が「性依存症」であると診断されたこともあり、夫とどう向き合うべきか悩み始めたと言います。

こあらさん

「離婚を思いつくこともあったんですけど、それよりも、夫は病気で治療しなきゃいけないんじゃないかっていうふうに考えたので、本を読んだりとか、お互いの話を聞いて一緒に回復していくことができる自助グループに夫婦で参加したりして、回復を目指していました。前向きに回復に向けて努力している夫を見て、回復してくれた未来を一緒に過ごしたいなっていう」

こあらさん

「でも1年後、夫はまた…再犯してしまったんです。これだけ一緒に頑張って、回復してるんじゃないかっていうふうに安心してたところがありましたので、裏切られたっていう気持ちにもなりましたし、もう絶望したような気持ちになりました…。2回目連絡を受けたときは、もう離婚しかないだろうな、というふうにとっさに思ったところはあったのですが…一緒にいると楽しくて、夫の今まで見てきた一面は全部大好きだったので、夫をずっと見続けたい気持ちも半分あって、離婚してしまいたいっていう気持ちも半分あります。毎日ずーっとそのことで悩んでます」

VR空間で“エイリアン”になってみて気づいたこと―

番組では、現実社会では交わり合わない4人が外見や素性を伏せて、エイリアンのアバターに身を包みVR上で一緒に月面旅行をしてもらいました。こあらさんには、プロジェクトエイリアンの世界はどのように映ったのでしょうか?

こあらさん

「参加者が女性4人だとわかったとき、『夫の性犯罪のことを明かすなんて、気持ち悪くて引かれて、嫌われてしまうのではないか』と不安だったのですが…結果この4人で話せて本当に楽しかったです。2週にわたって交流をしたのですが、1週目が終わったときは『じゃあまた来週!』って来週話せることが楽しみになるくらい楽しくて。顔や素性を知らない状態なのに、話がはずみました。でも、その分もし自分の属性を明かしてイヤな顔をされたら、自分としてはすごい傷つくだろうなっていう思いも一緒に生まれました。楽しかったからこそ、嫌われたらすごい怖いなと…。でも、皆さん私を受け入れてくれて一緒に悩んでくれて、悩みは違えど、いろんな事情を抱えた人たちと深い話ができて、ほかの3人と一緒に前向きに生きていこうと思いました」

VR空間で交流を続ける中、特に印象的だったのは同性パートナーと一緒に子育てをするリラさん(34)からの言葉でした。

こあらさん

「自分は“共依存性”だと思っているので。おせっかいしちゃって、夫を自分が治してあげないととか、私が何かしてあげないとって思っちゃうところに、自分の中でも境界線を引こうとは思ってるんだけど、引けないところがあって。夫の家族である私が彼の犯罪を止められたんじゃないかとずっと自分を責めていたんですけど、そんな私に対してリラさんが『犯罪を犯したのは夫だから私は悪くない、ぐらいの気持ちでいれればちょっとは楽かも』と声をかけてくれて。そうなりたいな、と強く思いました」

こあらさん

「家族についてのそれぞれの話を聞いて、実は“自分の幸せ”が大事なんだなって気づけました。『ほかの3人も全員幸せになってほしいし、私が幸せにしてやるよ!』ってまで思いました(笑)夫のことで頭がいっぱいで長らくお仕事を休職していたんですけど、復職のリハビリができるプログラムをやっている病院があって、そこの申し込みを受けに行ってきました。少し肩の荷が下りたような感覚で、今は、自分の人生、自分でちゃんと地に足つけて生きて行こうと思ってます」

他者との交流のハードルを下げ、さらには距離感を縮めることも可能なVR空間。「VR×社会課題」プロジェクトでは、今後もVRの有効活用法を模索していきたいと思います。

この記事のコメント投稿フォームから番組への感想やこあらさんへのコメントをお待ちしています。

みんなのコメント(2件)

感想
とろろ
40代 女性
2023年11月16日
自分と重なりました。
主人も同じような犯罪で逮捕歴があります。最初は現実を受け止められず、主人を止めることができなかった自分を責めました。
再犯のとき、幼い子供達をどうやって育てていこうか、子供達が辛い目に会うのではないかと不安になりました。
現在、まだ主人とは家族でいます。子供達も大きくなり私自身も働いています。働くことで生まれた何があっても生活できると言う気持ちの余裕と、番組内でもあった「私が罪を犯したわけではない」の気持ちで少しだけ割り切って生活出来るようになりました。
過去の選択が正しかったのかどうかはわかりません。でも、こあらさんにはこれからも自分を大切に将来の選択をしてもらえたらと思います。
感想
鯛焼き
60代 男性
2023年11月12日
今回ご出演された方々が抱えている事を聞いて、私も辛い気持ちになりました。なかでも「こあら」様のご主人の件は、私も男性なので人ごとと思えませんでした。痴漢や盗撮といった罪を犯すと、1ストライク試合(人生)終了で、即離婚だと思って生きてきましたので、通勤時間帯など、犯罪者だと間違えられないよう細心の注意を払ってきました。「こあら」様のご主人は罪を犯し、再犯もしたとのことですので、その対応で大変な思いをされたと推察します。ご主人が救われたのは、性依存症を治すため「こあら」様が寄り添い続けたこと。最後はご夫婦の問題だと思いますが、自助グループへの参加継続や、性依存症患者を診てくれる専門医を受診する等、考えられることを実行されたらよろしいと思います。「こあら」様がご主人が大好きな気持ちは伝わってきましたので、完治されることをお祈りしております。