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“偽の広告”で被害拡大 メタの副社長・単独インタビュー公開

4月24日のクローズアップ現代では、急速に被害が広がっている「SNS型投資詐欺」を特集。有名人になりすまして投資を呼びかける“偽の広告”によって被害が拡大する中、実業家の前澤友作さんらが、SNSの運営事業者=プラットフォーマーへの規制を訴えている。番組では、渦中のメタの副社長で、偽広告への対策を行う責任者でもあるモニカ・ビッカート氏を直撃。いま求められる対策や責任について問うた。今回の件を受け、初めて日本メディアの取材に応じたビッカート氏は、何を語ったのかー。

(取材:科学文化部・植田祐記者 社会番組部・布浦 利永子ディレクター)

インタビューは、4月19日にオンラインで行われたものです。

オンラインインタビューの様子

(取材班)
まずは、今回、私たちのインタビューに応じた理由を教えてください。

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

私たちは日本の人々と直接お話しして、私たちが、オンライン上の詐欺や不正行為と闘うために、自分たちの役割を果たしているということを知ってもらいたいと考えています。


詐欺は、人々に実害をもたらしますし、オフラインでもオンラインでも非常に深刻な問題だと捉えています。特に、オンラインの詐欺は、それが、当社のプラットフォームで発生するか、他のプラットフォームで発生するかにかかわらず、非常に深刻な問題であり、当社のサービスでは一件も発生しないようにしたいと考えています。


もう1つ申し上げたいことがあります。私は、メタに来る前は、検察官でした。その仕事を通じて、詐欺師が、電話や郵便、電子メール、ソーシャルメディアを使って活動するのを見てきましたが、彼ら全員に共通していることがあります。それは、とても執拗で、とても敵対的だということです。

当然、私たちは、当社のサービスで詐欺が発生しないようにするために、役割を果たしていきます。そのために、今後も投資を続けていきます。しかし、強調したいのは、こうした詐欺師が、頻繁に戦術を変えるという点です。彼らは、様々な異なる言語を使用し、国境を越えて活動します。そして、ユーザーをあるアプリから別のアプリ、または、メッセージングサービスや電話回線に誘導します。それらはすべて、当社の検出システムを回避するためなのです。

日本では、有名人になりすました偽広告による投資詐欺の件数が急増しています。その被害額は277.9億円にのぼっています。ソーシャルメディアを利用した投資詐欺は、日本でも社会問題となっています。この現状を、メタはどのように認識しているのか、教えてください。

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

当然、私たちは、非常に深刻に受け止めています。パンデミック以降、インターネット上で詐欺が増加しており、それは日本だけではなく、世界各地で起きています。

そこで、メタでは、対策として総合的なアプローチをとっており、「詐欺のライフサイクル」とも呼べるものを調べています。それが、どこから始まり、どこで終わっているのか。それは、オンラインとオフラインの組み合わせかもしれません。メタのサービス上で起きている部分については、悪意ある行動をとっている者を特定し排除するために、自分たちの役割を果たしていきたいと考えています。また、お金のやり取りなど、当社のサービス以外で行われている部分については、メタ以外の人たちと連携していきたいと考えています。金融機関やその他のグループと協力して、学んだことを共有し、改善を図ろうと考えています。

有名人になりすました偽広告

今、日本の著名な実業家の前澤氏や堀江氏が、メタが十分な対応策をとっていないと批判しています。彼らは、自民党本部で開かれた勉強会に参加して、ソーシャルメディアの事業者に対する規制を求めました。そして、メタに対しては法的措置も検討する可能性があるといいますが、現状をどう捉えていますか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

金銭をだまし取る目的で、著名人の名前を使って人々を欺き、クリックさせるような広告を掲載することを、私たちは許可していません。そのような広告とその背後にあるアカウントは、見つけ次第、削除します。

これは非常に敵対的な空間といえます。悪意のある者が戦術を変え、編集を加えたり、ぼかした画像を使用したり、あるいは、画像の上にテキストをしたりして、私たちの検出対策を何とか回避しようとしているのが確認できます。そのため、私たちは、こうした者たちの先を行くことができるよう、今後も投資を続け、より優れたテクノロジーを取得していきたいと考えています。

メタは、さらなる被害を防ぐために十分な対策を講じていますか?不正広告の審査基準について、できる限り具体的に答えてください。

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

私たちは、詐欺広告や不正な広告を阻止する役割を果たすため、(AIなどの)テクノロジーと人間の眼を組み合わせて、広告を審査しています。当社には日本語で作動するテクノロジーがあり、日本語を話す審査担当者もいます。

ここで強調したいのは、不正な広告を使って詐欺を行う者たちは、私たちが導入しているシステムが何であれ、それを回避するために全力を尽くしているということです。私たちは、継続的に、彼らが何をしているのかを特定し、彼らの先を行くための技術的ソリューションを構築しようとしています。

メタは2016年以来、詐欺防止を含むセキュリティ対策に200億ドル以上を投資しているとしています。しかし、これまでのところ状況は改善されていないと感じます。なぜ、対策がうまく機能していないと思いますか?うまくいっていないという認識はありますか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

パンデミック以降、インターネット全体で詐欺が大幅に増加しているため、ある広告の例などを見て、全体像を評価するのは必ずしも容易ではありません。

今、言えるのは、私たちは、詐欺との闘いにさらなる投資をしているということです。それに対して、詐欺師たちは、私たちの検出システムを回避しようとあらゆる手段を講じようとしていますが、私たちは、彼らに先んじるために、新しいテクノロジーを構築する決意をさらに固めています。


私たちは、つねに事態を改善したいと考えていますし、最近は大幅な進歩も遂げています。その一例は、不正な行為や詐欺行為を排除する際に、彼らの手口の傾向を観察し、そこから学習したことを(AIなどの)技術システムにフィードバックして、最新の詐欺行為や不正行為を識別する能力を高めていることです。


私たちの社会は、詐欺を完全に食い止めることはできませんし、業界も、オンラインの詐欺を完全に食い止めることはできないと思います。しかし、私たちが、それぞれに果たすべき役割に力を注げば、状況を大きく改善することができるはずです。私たちメタは、自社の製品が大きな影響力を持っていることを知っています。それだけに、詐欺的な広告を特定して削除するという役割を非常に真剣に受け止めていますし、悪意ある行為が止まらない以上、これらの広告を削除する役割を果たせるよう、テクノロジーやコンテンツを審査する人材への投資を今後も継続していきます。

人員も含めて、広告を審査する体制は十分だと思いますか?広告を1つ1つ、人間の目で確認できるよう、社員を増やす考えはありますか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

私たちはつねに詐欺的なコンテンツをより適切に削除したいと考えていますが、特効薬はありません。魔法の答えはありません。日本語を話す有能な審査担当者と、強力な技術ツールの両方が必要です。私たちはその両方を持っていますが、悪意ある者に先んじて行動できるよう、投資と改善を続けていきます。

私たちが、先の質問をした理由は、一部の専門家は、自動検出ではなく、人間の目で確認する審査の方が、本物の広告と不正な広告を区別できると指摘しているためですが、こうした指摘については、どう考えますか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

広告を眼で見て、それが詐欺かどうかを判断するのは必ずしも容易ではありません。容易であれば、これらの広告は成功しませんし、多くの場合、そうした詐欺広告は非常に説得力があります。そのため、広告の審査を人間の眼で行っている場合でも、担当者がそれを見抜くためのコンテキストを常に持っているとは限りません。


詐欺的な広告を削除する時の最大の課題は、詐欺のライフサイクルの一部しか見えていないことです。多くの場合、詐欺師は、意図的に人々を別の場所に誘導します。たとえば、あるソーシャルメディア・アプリから別のソーシャルメディア・アプリ、またはメッセージ・アプリに移動させます。そのため、担当者が確かな決定を下すために必要なすべてのコンテキストを持っていないことも多いのです。

それでは、一方の自動検出については、詐欺広告と本物の広告を区別するために、検索する言葉の範囲を拡大するなど規制を強化して、詐欺広告を防ぐ方法はないでしょうか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

詐欺師が使う単語のリストが1つだけで、フィルターを設定してそれらの広告を削除できれば本当にいいのにと思います。しかし、実際には、詐欺師は、つねに使う言葉を変えます。そのため私たちは、彼らの先を行くように努めなければならないのですが、その際、プライバシーに配慮し、私たちメタのポリシーに違反しない無害な広告を削除しないようにする必要があります。

検索する言葉の範囲を広げれば、本物の広告も削除する可能性があるということですか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

私たちのポリシーに違反していると思われるコンテンツを削除する時は、つねに注意する必要があります。特定の単語や絵文字が危険だと考え始めると、無害なものが、その網にかかってしまう可能性があります。私たちはそのことに留意し、悪いものを排除するだけではなく、無害なものを排除しないようにする必要があります。


私たちのサービスの目的は、人と人とがつながる場所を提供することです。私たちが無害な言論や適切な広告を削除することになれば、それは、私たちにとって問題です。私たちは、悪意ある者を撲滅して排除すると同時に、善良な言論とプライバシーを確実に保護する必要があります。

先日、メタが日本語で発表した声明文には、具体的な改善策が盛り込まれていないと指摘する声もありました。これについて、日本の人々にどのように説明しますか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

これは動的な空間であり、私たちが、技術ツールや審査の担当者によって行っている対策は、私たちが学習するにつれて変化しており、最新のトレンドを追うために戦術を進化させています。それについて具体的なことを発表することはできません。私たちはつねにどのような傾向が起きているかを確認しながら、悪い者に先んじて行動できるよう調整しているからです。

多くの日本人は、メタにとって日本での対策の優先順位は低く、後回しにされていると思い始めていると思います。それについてはどう思いますか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

日本はメタにとって非常に重要な国です。私たちは、日本の人々に、詐欺的な広告を見ることなく、当社のサービスを利用し、お互いのつながりを楽しんでもらいたいと考えています。これは、私たちが非常に真剣に考えていることです。


この分野の最大の問題は、詐欺師が使用する言葉や戦術について魔法のリストが存在しないことです。彼らは、敵対者であり、今後も、使用する言語や広告の掲載方法などを変化させ続けるでしょう。しかし、私たちも強い決意を持って彼らの先を行き、詐欺や不正行為を排除するために、より高度なシステムを構築し続けます。

フェイスブックやインスタグラムを運営する巨大なプラットフォーム事業者として、メタは広告配信における安全な環境を確保する大きな役割を担っていると、私たちは考えています。メタが世界中で詐欺広告を摘発するという責任について、どう考えていますか?

メタ副社長 モニカ・ビッカート氏

私たちは、当社のサービスが広範囲に及び、非常に大きな影響力を持っていることを認識しています。詐欺や不正な広告に正しく対処することは、私たちにとって非常に重要であり、それらを当社が提供するサービスから削除するために、私たちは引き続き自分たちの役割を果たしていくつもりです。

私たちにとっての最大の課題は、このネット空間が持つ敵対的な性質です。そのため、私たちは技術ツールの構築とともに、日本語を話し、不正な広告を見つけて削除するために必要なスキルを備えたチームの構築に多額の資本を投じています。

しかし、これらを見つけて削除する完ぺきな方法はないことも明確にしておきたいと思います。今後も、オフラインでもオンラインでも詐欺が問題となると思いますが、私たちはそれと闘うために、自分たちの役割を果たすことに全力で取り組んでいきます。

みんなのコメント(2件)

体験談
かに
40代 男性
2024年5月21日
モニカさんが詐欺師の共通点として指摘している「とても執拗で、とても敵対的」というのは、SNSだけでなく、インターネット上で表示される広告でも当てはまるんですよね。
実際に、広告のフィードバックで同じ広告や同じ商品でパターンの違う広告が何度も表示されたり、広告の内容そのものに問題があると報告しても、なぜかその広告に興味があると判断されてしつこく表示され続けたりしたことがありましたし、特に、無理やり買わせたり同じ商品を次々に買わせたりする目的で、最初の表示から2年近く執拗に表示を続けた広告があって、「詐欺の疑いがあるので、この広告(問題の広告)の表示は拒否します」と広告の表示主にメールで送信してやっと表示されなくなったこともありました。なので、広告を見ている人々を感情的にさせて、とにかく考える隙を与えないようにする手法が使われ続けてきたことも大きなポイントなんじゃないかなと思います。
体験談
sakura
30代 女性
2024年5月14日
明らかな詐欺広告をいくら通報しても「問題ないと判断しました」と返事が返って来ます。
誰も見ていないし何の対策も取られていないと感じます。