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“化け物のような存在でした” |お風呂に入れない悩み|いま私が思う大切なこと

みんなでひきこもりラジオに多く寄せられている悩み、「お風呂に入れない」。 引き続き、このテーマを考えます。前回の記事に共感し、コメントを寄せてくれた高校生が、取材に応じてくれました。さまざまな苦しみを経て、彼女がつかんだ「お風呂に入る上で大切なこと」とは。

(科学・文化部 記者 福田 陽平)

不登校から“ひきこもり”状態に

取材に応じてくれたのは、女子高校生の元ヒキコウモリさんです。8月に公開した(「入りたくても入れない「お風呂の悩み」ひきこもり #となりのこまりごと」)にコメントを寄せてくれました。彼女も「お風呂」がつらかったひとりです。

どうしてお風呂が入れなくなったのか。元ヒキコウモリさんは、高校に入学して間もなく不登校となり、日常生活がうまく送れなくなりました。

「高校に入学して間もなく、家庭環境のトラブルや学校のカリキュラムへの適応、それまで抱えてきたつらい出来事やプレッシャーが重なり、糸がプツンと切れてしまいました。学校から足が遠のき、普段の生活を送ることができなくなりました。両親との関係も悪化し、最終的には児童相談所に介入してもらい、面談などでサポートをしてもらうまでになりました。近所の診療所に通い、カウンセリングを受けましたが、ただ自分の過去や体調を狂ったように話す日々でした。今思えば、本当に多くの人に迷惑や負担をかけ、つらい期間を過ごさせてしまったと感じる部分があります。なにしろ、その当時の私は誰にも対処できない化け物のような存在でした。周りもそして自分も信用できない状態でした」

お風呂が「面倒」「おっくう」「苦痛」になるとき

お風呂に入れなくなったのはその頃。食事や睡眠、それにトイレだけは、なんとか、こなしていましたが、それ以外のことはどんどんおろそかになっていったというのです。お風呂はどうしても入れませんでした。

「その当時の感情としては、決して“面倒臭い”だけではなかったようにも思いますが、何しろおっくうだったのは間違いありません。美容院に行けないため、髪は伸びっぱなし。長い髪を洗うのには当然、手間と時間がかかります。まして女性であれば、体を洗うのも湯船に浸かるのもしかり」

さらに元ヒキコウモリさんは狭いバスルームにひとり長時間いることも苦痛だったといいます。その苦しみは、どんどんお風呂を遠ざけていき、その状態はおよそ1年続きました。

「お風呂に関しても、お恥ずかしい話、5日くらい入らなかった時がありました。当時の個人的な感覚に過ぎませんが、狭いバスルームに一人で長時間いるのを苦痛に感じていました。元々狭いところが苦手というのもあり、閉じ込められているようで不安に感じていました。不登校になってからは、“自分が風呂場にいる間に両親が私のことを悪く言っているのではないか・・・”という不安にも襲われていました。元々きれい好きなので、“入りたくても入れない”という葛藤がありました」

“なにしろ無理をしない”

その後、周囲の支えも受けながら、なんとか通学を再開し、元の生活を取り戻してきたという元ヒキコウモリさん。いまでは、自分自身の経験を伝え、今悩んでいる人へのヒントにしてほしいとまで感じるようになりました。

元ヒキコウモリさんが、なによりまず伝えたいと言うのが「なにしろ無理をしない」ということ。

「これは、通っていた診療所の先生からも言われたことなのですが、それが一番だと分かりました。甘えだと言われることもありますが、心が壊れているときであればなおさら重要なことだと思います。どうしても必要なこと以外は、気が向いたときでもいいじゃないか!と楽観的に構えていれば、一つ一つの行動がノルマのように重く感じることもなく、マイペースでいられると思うのです」

“気が向いたとき”に得られる気持ち、大切に

実は、元ヒキコウモリさんはいまでも、お風呂に入らない時期があるといいます。でも、そんなときでも「入りたいときに入ればいい」と意識しているそうです。お風呂に入れていないことに罪悪感を抱くことよりも、入れたときの「快感」を大切に感じることが大切だと言います。

「今も長期の休みの時はお風呂に入らない日が続くこともあります。それに対して、あまり罪悪感や自身に対する嫌悪感を抱かないようにすることで、“意外と大したことじゃなかったのかも”と考えられるようになりました。外出する予定などがなければ、気が重いときに無理にやるより、気が向いたときにやって、そこで快感を得られたほうががいいと思うまでになりました。入らない時はタオルや汗拭きシートで拭いたりすることが多いです。でも、本当に心身が疲れているときは、それすらしないこともあります」

そしてお風呂だけでなく日常の中で“目標をいつも達成しようとしない”ことも今、意識していることの一つだといいます。

「目標を達成できなかったとき“自分自身に裏切られたような気持ち”にさいなまれることもありました。だから“毎日うまくいくわけではない”というのを意識しています。ちょっとずつでも“できた”を貯めていきながら、自分に合った新しい習慣を手にしていくのでいいのではないかと思うのです」

“復帰”というより「元の道に戻った」

最後に、元ヒキコウモリさんは、最近の自分自身について教えてくれました。進級ができなかった高校への通い直しです。まるでリハビリに取り組むように勉強や外出を少しずつ取り組んでいます。

「電車に乗ることもペンを持つこともできなかった当時の私にとっては、再び同じ学校に通うのは地獄の日々でした。リハビリのように、少しずつ外出する距離を伸ばし、勉強やテストもできることからゆっくりと。それでも毎日死んだ目をして、歩きながら、電車に乗りながら、周りの人は皆、敵に見えました。今はなんとか進級でき、高校2年生として生活を送っていますが、この選択が正しかったのか、明日がどうなるのかなど何もわかりません。考えるのも怖いくらいです。それでも今は、なんとか生きています。誰かのためになれなくても、まずは自分が生きていることだけでも肯定しようと・・・」

同じ悩みに苦しむ人に少しでもヒントになればと取材に応じてくれた元ヒキコウモリさん。
できない自分に罪悪感を抱き、苦しみをひとり抱えてしまう。そんな時こそ自分を受け入れ許す。彼女の言葉からは、そんなメッセージを受け取りました。お風呂のみならず日常の中にある様々な「べき」を一旦脇に置いて、自分のタイミングを待つことも大事かもしれません。

みんなのコメント(18件)

体験談
そら
40代 女性
2024年2月21日
私もなぜかお風呂に入ることができなくなってしまい、
検索かけたらここにたどり着けました。

私もうつ病、過呼吸、不安障害、解離障害です。

ここのサイトにたどり着けてよかった、同じ病気を持つ人の日常が知れました。
また拝見させてください。
感想
とん
30代 女性
2023年8月15日
わかるわかる... ! と共感しながら読んでましたが、「お風呂に関しても、お恥ずかしい話、5日くらい入らなかった時が」を読んで、え、すごい!十分入ってる方でえらい!!って思いました。

自分はどれくらいだろうと考えましたが、もはや分からないです。何日入ってないとかをそもそも把握してないって人も多いんじゃないでしょうか。

もちろんシャワーも歯磨きも洗顔も。
全然分からないのですが、半年に1回くらいかもしれません。

フケや歯垢や角栓が「気になり始めたら」入る感じです。人に会うことがなかったらたぶんもっと入りません。

最近、♯となりのこもりびと を知って、意外にお仲間が多いんだなって驚きました。
提言
ダリア
50代 女性
2023年8月14日
5日なんかお風呂に入らないには当てはまらないよ、大丈夫。入院したり、高齢者施設なんか週2だったりする。私は震災で8日入れなかった。伯母の住んでる地域は21日入れなかった。その基準だと、風呂なんか入らず1ヶ月くらい全く問題ない。
私も在宅で仕事だし、在宅介護16年目だし、望まずとも引きこもらざるを得ないけど、その中で、自分ひとりになれる時間を持つことにしている。1日5分とかもある。
自分の人生だから、自分の中で腑に落ちれば生きていける。とにかく、寿命がくるまで生きてください。
体験談
ケイコ
女性
2023年8月14日
投稿者さんと同じ年代のころ、お風呂に入ることが苦痛でした。たぶん、直ぐのぼせる、閉所恐怖症が影響していたと今は分かります。髪も伸ばしていたので、洗面台でシャンプーしたりでしたが、そんな私を見ても親は何も気にしなかったように思えました。
年を取りましたが、温泉などゆっくり入れないのは同じです。烏の行水!!湯あたりするのですよね。浴場で倒れることもあるので、温泉を楽しむなど不可能です。
今も冬以外はシャワー浴のみ。日本人ばなれしているでしょう!(笑)こんなでも通用しますので、気にしないでいましょうね!
感想
50代 女性
2023年8月14日
とても共感できます。
冊子などにして心療内科等に置けば良いと思います。
医者の言葉より共感できます。
体験者ならでは。
提言
ゆびこ
60代 女性
2023年8月14日
先程、一週間浴びられなかったシャワーをやっとの思いで浴びてきました。病状がひどかった頃は不眠に悩まされましたが、今は時々襲ってくる眠気で、トイレ、簡単な食事以外は、夢を見ては目覚めてまた寝てを繰り返すようになりました。
ウツ病は心の風邪と言う人もいますが、とんでもない。一生治らないと思います。
私にとってお風呂に入るということは、単に身体を洗うだけの事。リラックスも何もありません。毎日お風呂に入るなんて潔癖性の多い日本人だけで、外国では一生お風呂に入らない人達もいます。だから、皆さんそんなに心配しないで、気の向いた時に入るくらいの感じでいいと思います。
感想
ゆびこ
60代 女性
2023年5月8日
うつ歴20年以上になりますが、現在は症状も軽くなり、躁状態になることもしばしば…
それでもときどき無性に眠くなることがあり、布団から起き上がれず、お風呂に何日も入れなくて困る事があります。先程、5日振りにシャワーを浴びてさっぱりしましたが、お風呂に入れない人が沢山いることを知り、自分だけじゃないんだと安心しました。一般の人はお風呂に入らないことを汚いと思っているようですが、私はそうは思いません。
体験談
あゆ
女性
2023年2月2日
私もひきこもり状態になるとお風呂に入ることができません。
頑張ってシャワーを浴びるだけでクタクタになります。
お風呂に入る習慣というか、その工程の多さにめげそうになってしまうのです。

私の場合、髪をばっさりと切り、ドライヤーの時間の短縮に努めました。
お風呂に入ると気持ちいいよ、というアドバイスは単なる押し付けにしか聞こえなかったため、お風呂に入れない自分を責めないようにしました。
ご家族は気になるでしょうが、アドバイスをせず温かく見守っていていただきたいと思います。
感想
クッキー
40代 女性
2023年1月30日
現在ひきこもりで買い物、料理、洗濯、掃除、入浴といった当たり前の生活ができなくて困っています。食事量が少ないので痩せてほとんど布団の中にいます。退職して経済的不安が強く働きたいけど怖くて動けません。どうすればいいでしょうか。
体験談
30代 女性
2022年12月27日
私も、いつから、かなかなかお風呂に入れなくなりました。長年ひきこもり状態です。自分でも、なぜこうなったのかわからず、人に説明もしづらいです。

この間、頭を掻いたら、耐え難い痛がゆさにどうしようもなくなり、声を上げても家族も困るだけだろうと、黙ってうずくまっていました。何も言われませんでした。洗えばいいのに…と思いながら、しんどくてできませんでした。

それから数日、まだ洗っていません。着替えも、洗顔もしていない。
ひきこもりが長期化し、自分の世話を困難に感じて悩みながら、やればできるはずなのに…と思い、こんな状態から洗っても綺麗にするのが難しい、どうしたらいいの…というとほうにくれている部分もあります。
祖母は晩年ひきこもり状態で、介護サービスも拒んでおり、家族もサービスを拒んでいて、入浴は夏でも数か月に一度くらいでした。病気になった父も、着替えず入浴しなくなりました。