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斎 康敬

島根を離れます お世話になりました

斎康敬です。

いつかは来る日ではありますが

実際来てしまうと、なんとも寂しいものです。

過日、転勤の内示を受け、島根を離れることになりました。

 

この4年間、島根県の多くの皆様にお世話になりました。

ありがとうございました。

思いかえせば着任して1か月

大雨特別警報が発表され

三隅町の避難所に中継に出たのが最初の仕事でした

 

その後は鉄道の仕事が続きます

三江線廃線の現場に立ち会っての「ゆく年くる年」

川戸駅に六角精児さんと田中輝美さんを招いての特番

観光列車の旅では運行開始まもない「天地」を間近に感じ

「奥出雲おろち号」で亀嵩駅のそば駅弁をいただきました

 

番組も作りました

「インタビューここから」では宮廻正明さんのクローン文化財を

現在松山局の山口寛明アナの万全の手引きの中で制作し

小泉八雲の朗読特番では

紺野美沙子さん、小泉凡さんと一緒に八雲の世界を堪能

ここではいま千葉局の喜多賢治アナの絶妙な仕切りがありました

 

 

街を歩いていると、

いつも多くの皆さんに声をかけていただきました

特に西部にいくと会う人あう人から

大田で震度5強の揺れを観測した地震のときの話をされ

「ありがとう、あんなに早く、

そして夜まで現場から伝えてくれて」とお話をいただきました

 

私は青森局に勤務していたときに東日本大震災に遭遇しました

あのときもっと自分にできたことがあったんじゃないかと

いまでも思い返すときがあります。

その中でもいちばん悔いが残るのは

太平洋側の八戸に津波が来たとき

ラジオで放送を出していた私の目に飛び込んできた

一台の車がライトをつけたまま

引き潮に流されていく様子をとらえた

情報カメラの映像

 

しかし結局、どうすることもできずに

津波の到来を伝え続けることになりました

 

あとからきいた話では

その車の持ち主は

いつもNHKではないものを聞いていて

あの日もそうだったとのこと

「自分の伝えていることばでは

この状況においても人を救えないのか」と

深い無力感に襲われたことを覚えています

 

だから、というわけではありませんが

それ以来

自分のできうる範囲で

その時できる最大限のことをしようと心に決めていました

それがたまたまあのような形になった、ということです

 

地震があった日、浜田支局の記者やカメラマンは

私より早く現場に入りその様子を伝え続けてくれていました

 

東日本大震災の時に感じた無力感は

いってみれば私ひとりの思い上がりのようなもの

私たちの仕事は一人でできることは限られている

だからこそ皆でやり続ける

そういうことなのだとここ島根で改めて気づけたことは

今後の自分の仕事の指針になると思います

 

 

今年度になってからは

それまでの「朝の顔」を澤田アナにゆずり

しまねっとNEWS610の水曜日のコーナー

「いまコレ!しまね」の制作業務にかかわっていました。

しばらく顔を出さなかったのはそのためです

 

小笠原・井本・薄井・山口という個性豊かな4人のキャスターと

都度代わるロケ現場に行ってカメラを回し

編集室にこもってVTRを作り

音楽ライブラリーから音を探してきて

放送に出す という仕事

 

三瓶山の頂上でこの上なく美しい朝日をみたのは

山口さんとのロケ

雨で中止になり2回目の挑戦でようやく撮影でした絶景でした。

 

年度の変わり目、悩む子どもの心をいかに救うか

そんな問題意識は薄井さん

現場の皆さんの言葉に背筋が伸びる思いでした

 

災害時に必要な備えとは クマに遭遇したらどうするか

暮らしに根づいた内容は小笠原さん

いざというとき必要となる内容を、コンパクトに、的確に

 

インターネットでバズった島根を紹介するのは井本さんの十八番

宍道湖ほとりのカフェ マスキングテープアート カツラの木

こちらの撮影・演出技術が問われる難題ばかり でも楽しかった

 

もともとアナウンスの仕事が一番苦手で

テレビラジオ問わず制作業務が好きな私。

本人はかなり楽しんでやっていたのですが

気づいてみれば体重が3か月で4㎏減るなど

(見た目があまり変わらないのが悲しいところですが)

いま思えば過酷な仕事だったのでしょう。

でもいい放送を出し続けることができたのではないか

そんな独りよがりなことも思っていますが…

 

 

総じてこの4年

いい出会いに恵まれたんだと思います

だからこそ、いまがこんなに穏やかな気分なのかもしれません

 

 

7月からは九州・大分放送局勤務となります

20年前、北見に赴任するため津軽海峡を越えましたが

こんどは西の関門海峡を越えます

 

転勤の挨拶をしていると

誰もが「大分はいいところだ」とおっしゃいます

その良さを実際に住んで、取材して

実感してきたいと思います

 

 

私は番組キャスターではないので

放送の時間をいただいて挨拶するほどの人間ではありません

これまでの24年間もそうでした

ですが今回はあえて

6月24日の「しまねっと845」で

島根のみなさんに

ひとことだけ挨拶させていただきました

たまたまお聞きいただいた方は

「あれ? こいついつもより一言多いぞ」

と思われたかもしれません

その5秒ほどの言葉に

私の島根の皆さんへの想いを込めたつもりです

 

 

長文になってしまいました

 

改めまして4年間ありがとうございました

また戻ってくるかもしれません

そのときは「こいつまた来たよ…」と思わずに

温かく迎えてやってください

お仕事体験記 

投稿者:斎 康敬 | 投稿時間:16:05

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