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吉岡町 74歳町長が奔走し実現 長~い1日“スポーツデー”

  • 2022年06月15日

「コロナ禍だからこそ、町ぐるみで“チャレンジデー”に参加したい!」
「“チャレンジデー”って何ですか???」

町長室で向かい合った町長とのこんな会話から、取材はスタートしました。

その“チャレンジデー”なるもの、調べてみると、なんと最長で午前0時から午後9時まで、21時間行われるスポーツイベントだとか。「1日15分以上」続けて運動した人の割合を、ほかの自治体と対戦形式で競うというのです。

初参加の吉岡町が、どのような結果になるのか、気になる!
朝から晩まで、取材クルーも走り回りながら、長~い1日をともに過ごしました。

(前橋放送局記者 丹羽由香/2022年5月取材)

無事着いた、ラジオ体操していた

朝5時半 暑い1日になりそうだ

私、寝坊しないか、前の夜から不安でした。

緊張が続いた浅い眠りから目覚め、無事現場に到着。
朝6時半。吉岡町の人たちは元気でした。
40人ほどの人たちが集まり、ラジオ体操をしていた中に…。

いました!

吉岡町 柴崎徳一郎 町長

仕掛け人、発起人、呼びかけ人…どれも当てはまるこの町のトップ、74歳の柴※崎※徳一郎町長です。新型コロナの影響で町ぐるみのイベントは久しぶり。狙いは明確でした。

吉岡町 柴崎徳一郎町長
「今、閉塞感がどうしても漂ってますから、みんなで心身のリフレッシュ。チャレンジデーをきっかけに、皆さんに外に飛び出してもらいたいなと。参加者の笑い声が絶えないような楽しんでいる姿を見たいですね」

参加してくれるのかな

吉岡町が初めて参加した“チャレンジデー”は、実は歴史あるイベントです。
運動習慣を身につけてもらおうと、笹川スポーツ財団が29年前に始め、毎年5月の最終水曜日に全国一斉に行われています。

ことし参加したのは全国68の自治体。このうち人口およそ2万2000の吉岡町が掲げた目標は「参加率25%」です。

町内の自治会や保育園や学校などの多くに協力を依頼し参加を呼びかけましたが、そもそも“チャレンジデー”を知らない人ばかり。どこまで浸透して実際の参加につながるのか…不安を抱えながらの初挑戦でした。

画像提供 鹿角市

そんな状況なのに、主催者が決めた対戦相手はなかなかの強豪でした。
参加10回目の大先輩、秋田県鹿角市です。過去には参加率が70%を超えたこともあります。

スーツでしっかり公務もしていた

弱気になってもしかたない相手に対し、町長は「相手は自分自身」と泰然自若。

ラジオ体操を終え、その姿は2時間後の午前8時半、町役場にありました。パリッとしたスーツに身を包み、議会対応をしました。ただ1時間半後、再びTシャツとジャージに着替え、町長室から出てきました。

柴崎町長

「チャレンジデーに出かけます。夜9時まで体の続く限り頑張ります!」

すぐに役場を飛び出し、その後は1日中、町内各地で体を動かす人たちの激励に走っていました。

はじめまして、久しぶり

河川敷のグラウンドには午前10時半に到着。
すでに日ざしが強くなってきた中で、行われていたのは「スカイクロス」という競技でした。

スカイクロス

輪投げとゴルフを組み合わせたようなこの競技。町長もさっそくゲームに加わりました。
参加者の中にはチャレンジデーに合わせて、町の外から来ていた人の姿もありました。

参加者

「きょうは榛東村から3人、お邪魔しています」

柴崎町長

「吉岡町ではチャレンジデーをやっていて皆さんウェルカムですから。これからも交流をお願いしますね」

さらに、久々に会った人たちもいました。

柴崎町長

「おー、久しぶり。10数年ぶり?」

参加者

「そう12、3年かな?」

スポーツが自然に「はじめまして」や「久しぶり」の会話を生み出していたのです。

参加者
「家に引っ込んでいるより、ここに出てくれば皆さんに会えていろんな話もできる」

参加者
「楽しいですね。ストレスが解消できます」

歩く、跳ぶ、打つ、投げる

体を動かすだけではない効果を生むチャレンジデー。

<午後0時半>
町の職員が昼休みにスーツ姿で一緒にウォーキング。

<午後1時20分>
中学生およそ700人が休み時間に長縄に参加。

パークゴルフにテニス、弓道、気功教室まで…。
なんと町内各地で60ほど、スポーツができる「場」が作られていました。

<午後7時>
夜の体育館には、仕事終わりの大人たちも駆けつけていました。

ふだんは仕事や家事に追われている時間帯ですが、この日は大人も子どもも一緒にプレー。じっくり子どもたちと向き合い、声を掛け合う姿がありました。

歓声やアドバイスも行き交い、世代を超えた交流も自然でした。

参加者
「いろんな世代が一緒になって交流できるので、すごくいい機会だと思います」

参加者
「子どもたちが来年をもう楽しみにしていたので一緒に参加したいと思います」

強豪相手に善戦!

翌日、鹿角市との対戦結果がいよいよ町長のもとへ。

吉岡町職員
「吉岡町の参加率が21.9%、鹿角市が参加率22.6%…」

うーん、、、なんと0点7ポイント差での「敗戦」。

人数では170人ほど、というわずかな差でしたが…。

町長は晴れやかでした。

吉岡町 柴崎徳一郎町長
「初参加でここまでできれば善戦、大善戦です。各会場に行かせてもらい、町民皆さんの歓声だったり、笑顔だったり、声をかけてくれたり、自分としては感動させてもらいました。ぜひ体を動かすこと、スポーツをきっかけにして地域の人たちが外に出てもらって。地域のみんなが連携して、街の活性化につながっていけばいいですね」

チャレンジデーの主催者は、スポーツが地域の活性化や課題解決に、貢献できると強調します。

笹川スポーツ財団 チャレンジデー担当 清水恵美さん
「対戦になるとやっぱり負けたくないっていうところが人の心としてある。各自治体はさまざまな課題を持つ中で実施するんですけれども、ひとつ何か街づくりとか街のつながりを作るって意味で活用していただける」

やっぱり“必勝”

チャレンジデーから2週間後。柴崎町長のもとを再び訪ねました。

するとうれしそうに、参加した人たちから「楽しかった」とか「またやってほしい」との声が町に届いていることを語ってくれました。

そして来年に向けて、地元の企業や商工会と協力することで、チャレンジデーを通じて町をさらに盛り上げていけたら、と見据えていました。

目標は?

もちろん「必勝」です。
やっぱり悔しかったんですね…。

来年はどのような結果になるのか?町ぐるみでの挑戦が今から楽しみです。

(※町長名前は※タツサキ、「徳」の心の上に「一」)

  • 丹羽由香

    前橋放送局 記者

    丹羽由香

    福井局から去年前橋局に異動し現在、県政担当。前任地から医療的ケア児など医療・福祉分野を中心に幅広く取材

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