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高崎の学童保育 外国人材を生かせ“オール英語でも採用”

  • 2022年06月02日

群馬県は外国籍住民の割合が全国3位。

街でもよく会いますよね。

でも、留学生などのキャリアを積んだ外国人の働く場は少ないんだそうです。
せっかく群馬に縁が出来たのに、働く場所がないため東京に行ってしまうという現状。どうしたいいものかと思っていたら、県内でも働ける場所を提供しようと取り組んでいる会社がありました。仕事は学童保育。国際意識の高まりが新たな“共生”を生み出していました。

(前橋放送局記者・山枡慧/2022年4月取材)

日本語ができなくても…元留学生が活躍

「多文化共生で頑張っている企業があるので紹介しますよ」

そう言われて向かったのは、JR高崎駅近くにあるマンションの1室。
音楽に合わせて、子どもたちが英会話を学んでいました。でも、ここ、塾ではなく学童保育なんです。共働きの家庭など、親の帰宅を待つ小学生たちが通っています。
 

スタッフの1人、ジンバブエ出身のアナ・モヨさん。
高校で地理の先生をしていましたが、5年前、群馬大学に留学するため国費で来日しました。
でも暮らしているうちに、「群馬で働き続けたい」と考えるようになったそうです。
さすが教員経験者。子どもたちの興味を引くよう、身ぶり手ぶりで話しかけ、子どもたちの集中力を途切れさせません。ただアナさん、日本語は特訓中でほとんど話せません。支障は無いのでしょうか?

アナ・モヨさん
「流ちょうに日本語が話せなくても他のスタッフが通訳や手助けをしてくれますし、会社も日本語のレッスンが受けられる環境を用意してくれていますので、うまくやっていけています」

英語ができるのは欧米人だけじゃない!

そんなアナさんを支えているのはフィリピン出身のニーナ・セバスチャンさんです。
アナさんと子どもたちとのやりとりも、さりげなくサポートします。
 

アナさん

「What did you learn today?」

ニーナさん

「きょうは何を習ったの?」

英語も日本語も流ちょうに話せて学童保育の運営責任も担っているニーナさん。
語学力を生かそうと以前は別の英会話教室での就職を考えていました。ところが面接で耳を疑う言葉を投げかけられたそうです。

ニーナ・セバスチャンさん
「欧米出身者でなければ採用できない。国籍を変えられないかと言われました。なぜ『フィリピン人』で評価するんですか、英語の先生は欧米の人だけですかと、すごいショックでした」

“群馬に働く場を”希望に応え

群馬で働きたいという外国出身の人たちの気持ちに応えられないか。
動き出したのが高崎市で外国人観光客向けの通訳派遣などの会社を経営している相京恵さんです。
6年前に学童保育を開設しました。事業の立ち上げにあたっては、地域住民の話しにヒントがあったといいます。

学童保育経営 相京恵さん
「学童保育はサービスが良くない。100人ぐらいの児童を2~3人で見ていると。だったら子どもたちをお預かりして英語のレッスンだったり学校の宿題も出来れば親御さんが利用を考えてくれるのではないかと」

狙いは当たりました。

料金は週5日利用で月額約5万円。
地域の学童と比べ割高にもかかわらず、現在利用者は40人で経営的にも順調だといいます。国際感覚が身につくと評判になったからです。その結果、日本人スタッフと同じ待遇で外国籍のスタッフを5人雇用することができました。

外国人材の積極的な採用などの成果が認められ、4年前には、経済産業省が選ぶ「高度外国人材活躍企業」、全国50社のうちの1社に選ばれています。
働いている人たちからも好意的な反応がありました。

ニーナ・セバスチャンさん
「私の頑張りを認めていると思うともっと頑張ろうと思います。人間としても、国籍とか、知っていることばとかではなくて、本当にスキルを受け入れてくれることが一番うれしいです」

ニーズを掘り起こすことで意欲と能力のある外国人材の活躍の場を見いだした相京さん、取材の終わりにこう語ってくれました。

相京恵さん
「日本で働いてキャリアを積んでいきたいという外国籍の人は多いので、群馬のダイバーシティの価値を底上げしていけるような活動をこれからしていきたい」

相京さんたちの取り組みは「共生社会ぐんま」のヒントになるのではないでしょうか。

  • 山枡慧

    前橋放送局記者

    山枡慧

    2009年入局。青森局、政治部を経て、2021年11月から前橋局。現在、県政担当のほか多文化共生をテーマに取材中

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