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中之条町“吾妻中央高校×SDGs”高校生が地域連携で挑戦

  • 2022年06月08日

最近よく耳にするようになった「SDGs」ということば。

国連が掲げる持続可能な開発目標で、貧困や気候変動といった世界の課題を解決しようというものです。
その大きな目標の実現に、少しでも貢献したいと立ち上がったのは中之条町の高校生たち。地域の人たちと連携し、挑戦を始めました。

(前橋放送局記者 木下健/2022年5月取材)

牛のエサから考えた

SDGsの取り組みを始めたのは、中之条町の吾妻中央高校の動物科学研究部の生徒たちです。
部活動の一環として牛を飼育する中で、最近エサの価格が上昇していることに気づきました。エサとなるトウモロコシなどの穀物は、ウクライナ情勢を受けて価格が上昇し、これを地域で廃棄されている食品でまかなえないかと考えたのです。

吾妻中央高校 動物科学研究部部長 狩野千亜希さん
「地域の廃棄物を使えば地域の人たちも助かるし私たちも飼料コストを抑えられるのではないかと考えました。最近SDGsの話題をよくニュースで見るので私たちも挑戦しようと思いました」

“眠れる資源”があった

穀物に代わるエサとなるものはないか。生徒たちが目をつけたのが、ふだんから交流のあった地元のJAで作られていたリンゴジュースです。

地域でとれたリンゴを毎年冬にしぼってジュースにしていますが、どうしても出るのが芯や種などの「しぼりかす」でした。その量、年間6トン。そのまま捨てられていたのです。
この「しぼりかす」が、他の県ではエサとして活用されていることを知った生徒たちがJAに提供を依頼。すると無償で提供してくれました。

JAあがつま 都筑秀次加工部長
「しぼればかすが残るだけなので処分もお金もかかるし大変です。今回高校生がやってもらえるならうちも少しでも助かるなと思い協力しました」

町がサポートしてくれた

エサの「原料」を手に入れた生徒たちですが、まだ、壁がありました。エサにするには“かす”を乾燥させて粉末状にする必要がありましたが、学校にあったのは小さな機械だけでした。

「たくさん作るために大型の機械がほしい」

その願いを実現してくれたのは、地元の中之条町でした。
お茶を生産していた町の施設で、使われなくなった業務用の機械を貸してくれたのです。

中之条町役場 中沢一さん
「地元の農家さんと学校の方が連携して何か新しい物が生まれて欲しい。積極的に協力したいと思ってて使ってもらうことにしました」

地域に“つながり”が生まれた

構想から半年。

地域の全面的な支援でエサの試作品が完成しました。

生徒たちは飼育する牛に、穀物と混ぜ合わせて早速与えてみたところ…。

身を乗り出して積極的に食べていました。

今後、牛の体調に変化がないかや、より手間がかからずにエサを作る方法などを研究していくことにしています。

生徒たちは試作品の完成を受けて、協力してくれたJAに成果を報告しました。

JAの人たちも、高校生たちの力作に感心していました。

JAあがつま 都筑秀次加工部長
「うち(JA)がするんじゃなくて、高校生がしてくれてこんな良い飼料に仕上げてもらったのがありがたいかなと思います」

吾妻中央高校 動物科学研究部部長 狩野千亜希さん
「ほかの農家さんたちも飼料コストが高くて悩んでいると思うので、リンゴかすを使って少しでも飼料コストを下げて収入面とか助かればいいなと考えています」

高校生のアイデアを元に、地域が連携して進める「SDGs」の取り組み。

生徒たちには新たな夢があります。
それは「今後も研究を続け、エサを学校内で使うだけでなく、地域の農家にも配るなど還元していきたい」というものです。

地域の「宝」でもある若者たちが動いたことで生まれた今回の取り組みをきっかけに“地域のつながり”が深まっていることを感じました。

  • 木下健

    前橋放送局記者

    木下健

    2008年入局 さいたま放送局、山口放送局、経済部を経て現所属

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