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群馬と新潟つなぐ新三国トンネル開通 建設背景に奥深~いワケ

  • 2022年04月28日

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

文豪・川端康成の代表作「雪国」の冒頭にある有名な一節。群馬県のみなかみ町から新潟県の湯沢を貫くJR上越線の清水トンネルがモデルとされています。私たちを異世界へといざなってくれるトンネルですが、ことし3月、同じように群馬と新潟を結ぶ国道で新たに開通しました。

その名は「新三国トンネル」。建設の背景には奥深~いワケがありました。

(前橋放送局記者 木下健/2022年3月取材)

関東と北陸結ぶ大動脈支えるトンネル

並んだ2つのトンネル。
左が新たに開通した「新三国トンネル」。右がこれまであった「三国トンネル」です。いずれも長さはおよそ1.2キロで、群馬と新潟の県境にある標高1200メートル超の三国峠にあります。

このうち古い方の三国トンネルが開通したのは今から60年以上前の昭和34年。

発破によって生じた土砂をすくって運搬する「ずり出し」と呼ばれる作業を1年以上続け、当時としては有数の長さだった全長1218メートルのトンネルが完成しました。太平洋側と日本海側を結ぶ大動脈として、物流や観光に使われてきました。

その後、近くには関越自動車道も開通しましたが、タンクローリーなど危険物を載せた車両は、法律で関越トンネルの通行が禁止されているため、三国トンネルが使われてきました。
さらに関越自動車道が事故や雪で通行止めになった際には、県境をつなぐ重要なライフラインとなってきました。国土交通省の調査では1日平均で2000台の車が通行し、そのうち25%が大型車だったということです。

課題は酸性の湧き水

そうした中で、悩まされてきたのが山から出てくる「酸性」の湧き水でした。

工事中から大量に発生し、トンネルの完成後もコンクリートの壁を侵食。春には、雪解け水も含めて、トンネルに水が入ってくることもありました。

このため、国は30か所以上で漏水を防ぐための工事を実施。4回にわたって内側の壁を厚くするなどの対策を進めました。

対策の結果、道は狭くなり

その結果、狭くなったのがトンネルの道幅です。

大型車どうしのすれ違いが困難になり・・・

内側の壁には、トラックなどが対向車をさけようとして、壁をこすったり、衝突したりしたあとが無数に残されていました。

国土交通省高崎河川国道事務所 伊藤光宏 建設監督官(取材当時)
「大型車が低速でお互いにすれ違っているのがよく見られていたので、ドライバーさんには心理的な負担になっていたのかなと思います」

新トンネルにはさまざまな工夫が

こうした課題の解決に向けて、国土交通省高崎河川国道事務所は2013年に三国トンネルの真横で新たなトンネルの建設を開始。9年の歳月とおよそ140億円をかけて「新三国トンネル」が完成しました。

一番の課題だった道幅は拡大。三国トンネルでは2車線をあわせて5.5メートルでしたが、これを8.5メートルまで広げ、大型車も安全にすれ違えるようにしました。

湧き水についても対策を進めました。トンネルの壁の中に入れている防水シートはこれまでの2倍以上の厚さ2ミリのものを採用。コンクリートの壁自体も通常の1.5倍の50センチに厚くして、水が内部に漏れないようにしました。

沈殿物の除去や清掃のため、マンホールも200メートルおきに設置しました。

道路の安全を守り続ける

「新三国トンネル」はことし3月19日に開通し、新たな歴史を刻み始めました。一方、三国トンネルは、維持管理のコストがかかることから廃止されるということです。

全国におよそ約1万1000か所あるとされるトンネル。そのうち7割が地方公共団体が管理していて、財源や技術者の不足から満足な点検がなされていないものもあります。今後、トンネルの維持管理をどうしていくのか、地域の道路の安全を考える必要があると感じました。

  • 木下健

    前橋放送局記者

    木下健

    2008年入局 さいたま放送局、 山口放送局、経済部を経て現所属

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