甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが十分に出ないことで、体の不調につながる病気です。
疲労感、けん怠感、寒がり、体重の増加、皮膚の乾燥、抜け毛、月経異常、便秘、むくみといった症状のほか、病気が進むと、コレステロール値の上昇、認知機能の低下が現れる場合もあります。
症状が更年期障害に似ているなど、多岐にわたるのが特徴です。そのため、甲状腺に原因があることに気づきにくく、治療につながりにくいケースも少なくありません。
甲状腺ホルモンは、のどぼとけあたりにある臓器、「甲状腺」で作られます。
甲状腺とのどぼとけ
このホルモンが体中に行き渡り、心臓の鼓動を早くしたり、胃や腸の働きを高めたりと、細胞や臓器の働きを活発にしてくれる役割を果たしています。
甲状腺ホルモンが体中に散らばる
ところが、何らかの原因でホルモンが少なくなると、心臓や胃腸など体のさまざまな働きが低下。だるさや疲れなどが現れます。これが、甲状腺機能低下症です。
分泌される甲状腺ホルモン少なくなる
患者体験談 ―実際にあったケース
Tさん(40代・女性)が体調の変化に気づいたのは、30代後半。出産後、動悸(どうき)を感じることが増えました。しだいに異変は体のあちこちに現れ、その一つが、歩くのもつらくなるほどの激しいむくみでした。靴が入らなくなり、冬でもサンダルを履くほどでしたが、産後の疲れと思い込み、ごまかして過ごしていました。
ところが、不調はエスカレートし、手に力が入らなくなったり、息が上がったり、生活や仕事に支障をきたすほどになりました。それでもなお、育児の疲れや睡眠不足によるものだと考え、我慢を続けながら2年近くが経過したころ、転機が訪れました。
実家を訪ねたとき、母親からのどの腫れを指摘され、耳鼻咽喉科を受診することにしたのです。触診の結果、甲状腺の病気の疑いを指摘され、その後、甲状腺の専門病院で詳しい検査をしたところ、甲状腺機能低下症だと分かったのです。
しかも、検査の結果は、甲状腺にホルモンを出すための指令を出す「甲状腺刺激ホルモン」が基準値の40倍以上、それにも関わらず、甲状腺ホルモンは4分の1ほどしか出ていませんでした。医師からは、命に関わるぐらい危険な状態だと告げられ、処方された甲状腺ホルモンを補う薬で治療を始めました。
治療を始めたTさんは、症状が次第におさまっていったと言います。
「1か月くらいで効果が出てきて、まず動悸がなくなりました。いつもと全然疲れが違い、むくみも引いて、ふだんの生活が楽になりました」
首の腫れセルフチェック
甲状腺機能低下症を患っていても、みんな首が腫れるわけではありませんが、病気に早く気が付くための重要なポイントとなります。
ここからは、甲状腺機能低下症のための簡単なセルフチェックを紹介します。
- ステップ① 甲状腺の位置を確認
のどぼとけの1~2cm下、真ん中のあたりにあり、唾を飲み込んだときに上下に動く - ステップ② 鏡を見ながら確認
あごを上げて甲状腺のあたりを触り、腫れていないか、ゴツゴツした「しこり」ができていないかをチェック
セルフチェックで異常が見当たらなくても、甲状腺機能低下症である可能性はあるため、症状があって、心配な場合は医療機関を受診してください。
また、人間ドッグでは、オプションで甲状腺ホルモンの値を測る血液検査を追加することもできます。
甲状腺認定医施設
認定資格を持った甲状腺の専門医がいる専門施設が、全国に250件ほどあります。
認定専門医施設は、甲状腺診療にとって必要な検査が実施できるなど、幾つかの要件を満たした専門の施設で、日本甲状腺学会のサイトで、どこにそういった施設があるのか調べることができます。
認定専門医施設では、主に問診、触診、血液検査、エコー検査が受けられ、詳しく診てもらうことが可能です。また、認定資格を持った甲状腺専門医は、認定を受けていない施設にもいるため、日本甲状腺学会のサイトから名簿で見つけることができます。