強い痛みが襲う三叉神経痛 最も多い原因は血管による圧迫

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三叉(さ)神経痛とは?

三叉(さ)神経痛とは?

歯を磨く、顔を洗うなどの日常のありふれた動作をきっかけに、突然、顔に強い電撃のような痛みが襲う三叉(さ)神経痛。その痛みは「ナイフ」「電流」「焼け火箸」などと例えられ、あまりの痛さに患者は何もできなくなってしまうといいます。それほど強い痛みなのに、顔が腫れる、ゆがむなどの目で見てわかるような異常はないので、痛みが周囲の人に理解してもらえないというつらさもあります。

※この病気は「顔面神経痛」と呼ばれることがありますが、正式には「顔面神経痛」という病名は存在せず、多くが三神経痛であるといわれています。

三叉神経

三叉神経痛は、顔に広がる12対の脳神経の一つ、「三叉神経」に異常が起こる病気です。三叉神経は“顔の感覚”、つまり触った感覚や痛み、熱などの情報を脳に伝えているので、何らかの原因でこの神経に強い刺激が加えられると、脳が痛みとして感じてしまいます。

痛みが起こるきっかけ

三叉神経痛が起こるきっかけ

三叉神経痛の痛みは、顔の特定の場所に何かが触れたり、当たったり、あるいは振動が伝わったりしただけで発生します。そのため、「歯磨き」「洗顔」「化粧」「ひげそり」「物を噛む」など、日常のありふれた動作でも痛みが起こってしまいます。患者はこのような刺激となる動作を避けて生活することになり、日常生活の大きな支障となります。

「歯の痛み」と間違いやすい「三叉神経痛」

歯の痛みと間違いやすい三叉神経痛

三叉神経は、名前の通り3つに枝分かれした神経で、顔全体に分布しています。
そのうち、三叉神経痛で主に痛むのは「顔の下半分」です。そのため、「歯に近いところが痛む」、「歯の痛みと似ている」という理由から、よく歯の痛みと間違え、まず歯科に行ってしまうことが多いといいます。その結果、発見までに時間がかかってしまうことが少なくありません。
最近の歯科医師は、三叉神経痛のことをよく知っているので、早期発見できることも多くなっていますが、過去には、歯科で正しい治療を受けられず、悪くもない健康な歯を抜いてしまったケースもあったといいます。

三叉神経痛と歯痛の見分け方

三叉神経痛と歯の痛みを見分ける方法としては、「痛みの持続時間」を確認します。
歯の痛み(虫歯など)の場合、歯の異常が治らない限り、痛みはずっと続きます。一方、三叉神経痛の場合、特に発症したばかりの頃は、激しい痛みは数秒から数十秒で、それが一日の中で何度も繰り返し起こります。
そのため、顔に短時間の激痛を感じた場合、三叉神経痛の可能性があるので、主治医に「痛みが短時間であること」もしっかり伝えることが大切です。

三叉神経痛の原因

三叉神経痛の原因

三叉神経痛の原因には、「帯状ほう疹ウイルス」「脳腫瘍」「多発性硬化症」などがありますが、最も多いのは、「血管による圧迫」です。

血管による三叉神経の圧迫

顔の内側には、たくさんの神経とともに、たくさんの血管(動脈)が走っています。動脈は本来、血液をまっすぐ目的の場所へ送る役割を果たしています。

曲がった動脈が三叉神経に当たって神経を圧迫

ところが、動脈硬化などによって、動脈が変形すると、曲がった動脈が三叉神経に当たって神経を圧迫します。その圧迫が刺激となり、痛みが引き起こされると考えられています。
動脈硬化は、加齢のほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病によって起こります。このような病気が疑われる人は、特に注意が必要です。

正しい治療法で痛みをコントロール!

三叉神経痛と診断された場合、最初に使う第一選択薬はカルバマゼピンという抗てんかん薬の一種です。神経は血管に圧迫されることで「過敏な状態」となっており、それが痛みを引き起こしているので、神経の興奮を抑える作用がある薬を使うことで、痛みを抑制できます。

薬をのむタイミング

痛みが起こる前に薬をのむのが基本です。例えば食べものをかむときに痛みが起こる方は、食事の数時間前にのむようにします。症状によって、一日何回かに分けて服用するのが原則です。

薬の量

一度にたくさん服用すると、効果は高いですが、副作用が出ることがあります。そのため、比較的少なめの量から薬を調整しながら、痛みを抑制していきます。痛みがコントロール出来るようになったら、徐々に薬の量を減らしていくという治療をしていきます。

市販薬

多くの人は、最初に市販の痛み止めを使いますが、これらは効果がありません。市販の鎮痛薬は、神経の炎症を抑える薬なので、血管の物理的な圧迫によって三叉神経痛が起こっている場合には、効果が期待できないと考えられています。そのため、専門の病院への受診が必要になります。

三叉神経痛のさまざまな治療法

血管減圧術

薬物療法で上手くいかない場合は、他の方法を検討します。最初に考えるのは、血管減圧術という手術です。この手術は、耳の後ろを切開して、神経を圧迫している血管を神経から離し、その間にスポンジのようなクッションを入れます。血管が再び神経を圧迫しないようにすることで、痛みの原因を根本的に排除することができるといわれています。

三叉神経痛の治療法

三叉神経痛の治療には、薬や手術の他にも、薬剤などによって痛みを伝える神経を遮断する神経ブロック療法や、放射線を利用するガンマナイフ治療があります。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年8月 号に掲載されています。

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