薄毛(AGA・女性型脱毛症)の悩み 治療法とガイドラインによる推奨度

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髪が抜ける髪の毛

毛髪のサイクル

毛髪は太く成長を続ける成長期、毛根が縮んでいく退行期、成長が止まる休止期の3つの時期を繰り返しています。成長期は通常2年から6年で、次の成長期に入ると脱毛し、新しい毛が生えてきます。こうして毛髪の量は保たれます。

毛髪のサイクル
毛髪の成長期が短くなると薄毛の原因になる

しかし、なんらかの原因で成長期が短くなることがあります。すると髪は太く成長する前に抜けてしまいます。これが続くと髪のボリュームが減り、徐々に毛髪量の少ない薄毛の状態になってしまうのです。

男性型脱毛症と女性型脱毛症

男性型脱毛症と女性型脱毛症の写真

薄毛は男性と女性とでタイプが異なり、原因も治療もわけて考える必要があります。
男性の薄毛は男性型脱毛症、AGAと呼ばれます。男性ホルモンが原因で、その受容体がある頭頂部や前頂部から薄毛が徐々に広がっていきます。

一方、女性にみられる男性型脱毛症のことを最近は「女性型脱毛症」と呼びます。しかし男性型とは異なり、頭頂部から側頭部にかけての広い範囲に、ハリとコシの失われた細く柔らかい髪の毛が多く生えるようになります。ある程度、男性ホルモンの影響があると考えられますが、明確な発症メカニズムはわかっていません。更年期に女性ホルモンが低下することも一つの原因だと考えられます。

女性の薄毛は、ほかにも鉄や亜鉛が欠乏してなる場合や自己免疫疾患による場合、急激なダイエット、出産などがきっかけで発症する場合があります。皮膚科専門医による注意深い診断が必要です。

女性の薄毛の原因

薄毛の治療法

薄毛の治療法とそれぞれの評価基準の一覧

薄毛の治療法は自由診療です。ドラッグストアで購入できる手軽な治療から、数百万円かかる手術などさまざまです。日本皮膚科学会では2017年にガイドラインを作成して治療法の評価を行なっています。

薄毛の治療に使われる内服薬、のみ薬はフィナステリドとデュタステリド。どちらも男性ホルモンが髪に及ぼす影響をとめる薬です。男性型脱毛症に強く勧められる治療です(推奨度A)。ただし海外の臨床試験では、女性型脱毛症に効果が認められなかったので、行うべきではない治療です。

外用薬ではミノキシジルという塗り薬が男性型、女性型、ともに有効です(A)。休止期に入っている毛髪を成長期に移行させる薬です。一時的に抜け毛が多いと感じる場合もありますが、そのまま4〜6か月薬を継続すれば効果が実感できてくるでしょう。
ミノキシジルの内服薬を個人輸入するという話を最近よく耳にします。しかし、日本ではミノキシジルののみ薬は、脱毛症の治療薬として承認されていません。注意が必要です(内服薬としてはD)。

外用薬ではアデノシンも有効性が確認されています(男性型B・女性型C)。現在、医薬部外品に分類されていますので、ドラッグストアなどで手軽に購入することができます。
また、内服薬と外用薬は組み合わせて使用することもできます。

機器を使用する治療には、赤色LEDがあります。毛髪を成長期に促す成分が産生され、効果も報告されています(B)。

植毛については自毛と人工毛を使う方法があります。自毛の場合、男性型でかなり薄毛が進行していても定着すれば再び毛髪のサイクルが再生する可能性があります。ただし、費用は高額です。植毛の範囲にもよりますが100万円以上かかる場合もあるようです。十分な経験と技術をもつ、信頼のおける医療機関に相談されることをお勧めします(男性型B・女性型C)。
人工毛の植毛は、自毛を使う場合に比べて比較的安価ですが、過去には脱落や感染症などの有害事象が報告されています。最近はその技術も改良されていますが、ガイドラインでは推奨しておらず注意が必要です(D)。

かつらやウイッグは脱毛症状を改善するものではありませんが、使用することで生活の質や満足度が上がったとの報告があります(C)。

トラブルになったら

副作用によるかゆみなどの皮膚障害の場合は皮膚科へ。そして未承認薬は使用しないことが前提ですが、もし動悸(き)などの副作用が起きてしまった場合には、使用した未承認薬を持参のうえ、かかりつけ医師にご相談ください。

医療安全支援センターと消費者ホットラインの案内

また、トラブルに関する相談窓口もあります。医療に関する苦情、相談は全国の「医療安全支援センター」へ。医療安全支援センター総合支援事業HPでお近くの相談窓口の連絡先が調べられます。
契約に関するトラブルやその他困った時の相談は「消費者ホットライン 188」へ連絡してください。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年5月 号に掲載されています。

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