AYA世代のがんの悩み 患者さんの特徴や孤立・学校・仕事の問題

更新日

がん妊娠と出産全身こころ子宮・卵巣

AYA世代とは?

「AYA(あや)世代」とは、英語の「思春期と若年成人(Adolescent and Young Adult)の頭文字からつくられたことばで、一般的に10代後半から30代の人たちをさします。AYA世代は、学業、就職、結婚など、大きなライフイベントが集中する時期でもあります。

今、この世代のがん患者をどう支援するかが課題となっており、「AYA世代のがん」は、国のがん対策の柱の一つになっています。この世代特有の様々な課題を解決するには、医療機関だけでなく、行政、学校、職場など社会全体で支えることが求められています。

AYA世代の特徴

AYA世代のがん

15歳~39歳でがんにかかるのは年間およそ2万人で、全体の2%程度と少ないです。また、AYA世代は、リンパ腫、胚細胞腫瘍・性腺腫瘍(卵巣がん、精巣がんなど)、脳腫瘍、骨腫瘍など、「希少がん(新規に診断される症例の数が10万人あたり年間6例未満のがん)」と呼ばれる珍しいがんが多いのも特徴です。そのため、まだ治療法が確立されていない、がんだと思われずに治療が遅れるなどの問題もあります。

AYA世代のがんの問題

AYA世代のがんには、治療以外にもさまざまな問題があります。周囲から孤立したように感じる悩み、学業や仕事を続けていけるかという不安、治療の費用は大丈夫か?といった経済的な問題、さらに、将来結婚して、子どもをつくることができるのか?という心配もあります。

AYA世代のがんの問題「孤立」

AYA世代のがん患者の数が少ないため、入院しても周りに同世代の人がいる可能性は低くなります。多くは成人診療科で治療されるため、高齢者の多い病室で過ごす場合が多く、小児科で治療する場合は、小さい子どもの多い小児病棟に入院します。悩みを共有できる人が周りにいないことが、孤立につながる場合があります。

AYA世代のがんの問題「学校」

テストが受けられない、出席日数が足りずに進級ができないなど、精神的に取り残されることで苦しむ人もいます。小学校、中学校は、特別支援学校などが都道府県に1つ以上あり、院内学級もあります。それに対して、高校は院内学級がほとんどなく、高校生への学習支援が制度化されているのは一部の自治体にとどまっています。高校は義務教育である小中学校とは大きく異なります。

治療と勉強を両立し、進級したA君のエピソード
教室と病室
病室で勉強

高校生3年生のA君は、去年9月の高校2年生のときに大たい骨に骨肉腫が見つかりました。最初は休学しようと思いましたが、休学しないで授業を続ける方法があることがわかりました。それは、タブレットとカメラなどを組み合わせた機器を教室と病室に置いて、インターネットでつなぎ、入院しながら授業を受けるというシステムです。

授業の内容を見たり聞いたりするだけでなく、マイクを通して先生に質問したり、話し合いに参加することもできます。A君のお父さんが、学校と相談しながら作りあげました。そうした新しい試みをするには、学校側の理解も欠かせません。最初は、授業内容が流出するリスクやプライバシーの問題などがあり、反対する声もあったそうです。

しかし、校長先生、教頭先生らが学校の方針として、このシステムでA君が病室でも授業が受けられるように尽力し、県の教育センターも支援してくれました。また、病院も学習室の確保や治療時間の調整など支援をしました。

システムを作り上げる工夫や学校の理解、A君のケースは、恵まれた成功例ですが、実際、このようなシステムを受け入れてくれる高校ばかりでありません。文部科学省は、2015年に遠隔授業による単位取得を認めています。その適用には、病室の様子が分かるなど、いくつか条件があり、A君の場合は、それに則って学校と家族がシステムを構築しました。

【治療と学校の勉強についての相談】

・担任、校長、教頭
・病院のソーシャルワーカー
・大学生は学生相談室

AYA世代のがんの問題「仕事」

仕事を続けながら治療することは、最近、企業側も配慮するようになってきていますが、初めて就労する、職業につくというときには、さまざまな判断がなされます。なかには、がんを会社に告げた日に即日解雇された経験がある人もいます。

厚生労働省は、がんなどの難病を理由に就職や働くうえでの差別しないように」と提言しています。「がん」であることは、会社側に伝えた方が良いのか、それとも黙っていた方が良いのかは、ケースバイケースです。自分からがんの病歴を会社側に伝える必要はありませんが、業務上配慮してほしいことがあれば、面接時に必要最低限を伝えておくほうがよい場合もあります。

AYA世代のがん 治療中の就労

AYA世代のがん 治療中の就労

がん患者のなかで働いている人の割合は、50.8%、働きたくても働くことができない人は、28.2%です。入院治療や治療による副作用などのために働くことができず、休職や退職せざるを得ないという実態があります。

治療と仕事を両立させる仕組み 療養・就労両立支援指導料

治療と仕事を両立させる仕組み 療養・就労両立支援指導料

がんの治療と仕事を両立させるために、厚生労働省は、2018年に診療報酬を改定しました(療養・就労両立支援指導料)。患者の主治医が産業医と協力して、仕事と治療を両立できるプランをつくれば、診療報酬が支払われる仕組みです。職場ごとに環境が異なる患者に合わせて治療計画を立てられれば、仕事と治療の両立に悩む患者の安心感につながります。

【仕事の相談・情報】
・病院内のがん相談支援センターなどのソーシャルワーカー
・病院によっては、社会保険労務士
・国立がんセンター がん情報サービス
・AYA世代がんとくらしサポート

≫[AYA世代のがんの問題点②]経済的&妊娠・出産による問題はこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    “AYA世代のがん”▽メディカルジャーナル 支援どうすすめる?