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第1271回
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平成28年11月25日(金)公表
  ※2 審議事項(1) 平成29年度予算編成の考え方について は平成29年2月3日(金)公表

日本放送協会第1271回経営委員会議事録
(平成28年11月8日開催分)

第1271回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1271回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成28年11月8日(火)午後1時00分から午後4時55分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  石 原  進 本 田 勝 彦 上 田 良 一
    佐 藤 友美子   堰 八 義 博 中 島 尚 正
    長谷川 三千子   宮 原 秀 夫 森 下 俊 三
    渡 邊 博 美      
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  籾 井 会 長 堂 元 副会長 木 田 専務理事
  森 永 技師長 今 井 専務理事 坂 本 理 事
  安 齋 理 事 根 本 理 事 松 原 理 事
  荒 木 理 事 黄 木 理 事 大 橋 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員会室  21階役員会議室

 

<議   題>

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(秋田)登壇者報告

 

○ 会長任命に関する指名部会

 

付議事項

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(鹿児島)開催報告(資料)

 

1 議決事項

 (1) 公益財団法人放送番組センターへの出捐について(資料)

 

2 審議事項

 (1) 平成29年度予算編成の考え方(資料1)(資料2)

 

3 会長報告(資料1)(資料2)

 

4 報告事項

 (1) 平成28年度中間決算・中間連結決算について(資料)

 (2) 契約・収納活動の状況(平成28年9月末)(資料)

 

5 その他事項

 (1) 会計検査院による平成27年度決算検査報告について(資料)

 (2) 平成28年秋季交渉について(資料)

 

 

議事経過

 

 石原委員長が開会を宣言し、経営委員会を開催。

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(秋田)登壇者報告
 10月29日(土)に秋田放送局で開催された「視聴者のみなさまと語る会(秋田)」に登壇した委員から感想の報告を受けた。

 

○ 会長任命に関する指名部会

 会長任命に関する指名部会を開催した。

 

<会長、副会長、専務理事、技師長、理事入室>

 

 本日の付議事項および日程について説明。第1270回(平成28年10月25日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成28年11月11日に公表することを決定した。

 

 

付議事項

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(鹿児島)開催報告(資料)

 (歌川経営委員会事務局長)
 平成28年度、4回目の開催となる「語る会」を、9月24日(土)、鹿児島放送局で開催しました。時間は午後1時30分から3時30分までの2時間です。登壇は、経営委員会から、石原委員長、佐藤委員の2名。執行部から、今井専務理事、荒木理事、鹿児島放送局の清水局長の3名を加えた合計5名で、司会は、伊藤博英アナウンサーでした。公募の結果、はがき、ホームページなどを通じて68名から参加の申込みがあり、当日は、42名が「語る会」に参加されました。「語る会」終了後には、「『あさが来た』ドラマ制作の舞台裏」と題して、佐野元彦エグゼクティブ・プロデューサーによる講演会を開催しました。
 概要や反響等については、報告書の1〜2ページに記載しています。冒頭、協会の基本方針や重要事項の説明として、佐藤委員から経営委員会の役割、平成27年〜29年度経営計画、28年度の収支予算と事業計画について説明しました。その内容は3〜5ページに記載しています。
 意見聴取は「経営全般」と「放送」の2つのテーマで実施し、「適正な支出」「公平公正な報道」「地域放送の拡充」「『視聴者のみなさまと語る会』のあり方」「大河ドラマ」など、多岐にわたる意見や提言が寄せられました。これらは6ページ以降に掲載しています。
 終了後の参加者当日アンケートの結果とアンケートに記された具体的内容は21ページ以降に記載しています。
 報告書案については、特段ご指摘がなければ、これを確定して公表させていただこうと思います。

 

1 議決事項

 (1) 公益財団法人放送番組センターへの出捐について(資料)

 (黄木理事)

 公益財団法人放送番組センターへの出捐についてご説明します。この出捐は、NHKが民放とともに毎年行っているものです。今回は、昨年と同じく、5,659万5,000円を要請されています。本日経営委員会にお諮りし、議決をいただけましたら、放送法第20条第14項に基づき、総務大臣に認可申請を行い、認可が得られた段階で実行することになります。
 「放送番組センター」についてご説明します。項目「3.経緯および出捐の考え方」をご覧ください。
 放送番組センターは、横浜の「放送ライブラリー 」という施設で、NHKや民放の放送番組の収集・保存と公開を行っています。平成元年の改正で、放送法の中に定められた事業です。役員は放送界各社および有識者から選ばれています。NHKからは、理事を堂元副会長、木田専務理事、そして私が務め、監事を河内関連事業局長が務めています。財源は、NHKと民放、横浜市の拠出による基金の運用益です。基金として拠出した金額は、NHKが30億円、民放が59億8,000万円、横浜市が2億円で、合計で91億8,000万円になっています。
 しかし、低金利が長引き、基金の運用益だけではライブラリー事業の運営が困難になっています。このためセンターでは、平成17年度からNHKと民放に対して、毎年、出捐を要請しています。NHKとしても、センターの社会的意義を踏まえ、民放と歩調を合わせてこれに応じてきました。
 NHKの出捐額は、平成19年度以降は8,085万円でしたが、 センターが平成24年4月に公益財団法人に移行したことを契機に、出捐に依存した運営を改め、業務改革により出捐額の抑制を図るようセンターに申し入れました。これを踏まえ、センターは「向こう5年間の事業方針」を定めて、平成25年度から5年の間に出捐額を30%減額することを決めました。まず平成25年度、26年度は10%削減し、NHKの出捐額は7,276万5,000円になりました。そして平成27年度は30%減額し、5,659万5,000円になりました。今年度も同額の出捐要請がありましたので、この金額で出したいと考えています。時期は総務大臣認可後の12月中の予定です。センターに対しては、今後も経費削減計画の確実な実行を求めていきたいと考えています。
 続いて、NHKと民放の負担割合やセンターの事業方針について補足いたします。2ページ目の参考資料1をご覧ください。出捐金のNHKと民放の負担比率は、設立時の基金への拠出割合をふまえ、NHK35%、民放65%の割合で負担することになっています。放送番組センターの「向こう5年間の事業方針」の骨子は、2ページ目の下段①から⑥にある通りです。「事業の全国展開」「大学等教育現場での利活用推進」などの施策とともに、「事業の選択と集中」「脆弱な財政基盤の解消」などの業務改革施策があります。出捐額の削減については、骨子⑤に記載されています。
 3ページ以降には、放送番組センターが策定した「28年度事業計画および収支予算」の抜粋と、「役員名簿」を添付していますが、説明は省略します。


 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

2 審議事項

 (1) 平成29年度予算編成の考え方(資料1)(資料2)

 (籾井会長)

 本日は平成29年度予算編成の考え方についてご審議いただくわけですが、説明に先立ちまして私のほうから基本的な考え方を申し上げたいと思います。なお、この予算編成の考え方につきましては、今朝の理事会で満場一致の了承を得ています。
 受信料で事業運営を行っているNHKは、収支均衡予算を編成することが原則です。当面の財政面での大きな課題は放送センターの建て替えでしたが、この8月に基本計画が固まりました。建物工事費は1,700億円、建設積立資産も28年度末で1,707億円となり、今後は積み立てる必要がありません。以前より経営委員会からも放送センターの建替計画が決まった時点で収支を見直し、直近の予算、事業計画に直ちに反映させるよう再三求められています。経営委員の皆さまからもさまざまなご指摘をいただきました。そのようなご指摘を踏まえ、執行部内で種々検討を重ねてきました。
 29年度は経営計画では黒字を積み立てる計画でした。今、説明したように、その必要がなくなりました。また、現時点で想定される4K・8K放送やネット同時配信への対応、東京オリンピック・パラリンピック等に必要な経費を見込んでもなお黒字が発生し、財政に余裕があることが分かりました。こうした収支の現状を踏まえ、いったん収支均衡の原則に立ち返り、視聴者に還元すべきと考えております。また、こういうことをやることにより、NHKの姿勢を視聴者に見せるということも必要なことだと考えています。この視点におきまして、受信料額を引下げ、収支均衡予算を組み、区切りをつけることで、経営委員の皆さまからご指摘のありました将来のメディア環境の変化や制度改革について、時間をかけて見極めながら対処できるようになると思います。
 以上により、29年度予算は受信料額の引下げを行って収支均衡予算を編成したいと思います。よろしくご検討をお願いします。

 

 (大橋理事)
 平成29年度の予算編成にあたり、本日は最初の審議となります。予算編成の基本的な考え方や収支構造案等について、ご審議いただきたいと思います。
 1ページです。平成29年度予算編成についての考え方をまとめています。冒頭に、基本的な考え方を2つ掲げました。1つは、平成29年度は3か年経営計画の最終年度として、経営計画の達成に向けた事業運営を着実に実施するとともに、メディア環境の変化に的確に対応すること。2つ目は、ことし8月に公表した「放送センター建替基本計画」を受けて、収支及び建設積立資産を見直し、29年10月から受信料額の引下げを実施して、収支均衡予算とすることです。考え方のポイントを以下4点にまとめました。1点目は、受信料については29年度予算を収支均衡させるため、10月から28年度受信料収入の3%相当、地上契約で月額50円の引下げを実施します。また、契約件数の増加や未収の削減に努め、経営計画で掲げた営業目標である支払率80%の達成を目指します。2点目は、「経営計画の重点事項に経営資源を重点配分」です。経営計画の重点事項に経営資源を重点配分するとともに、4K・8K実用放送開始に向けたコンテンツ制作力の強化や情報セキュリティの強化など、経営環境の変化にも適切に対応していきます。3点目は、経営資源を重点事項に配分するために、業務全般にわたる見直しにより経費の削減を行い、経営資源のシフトを行います。また、グループ全体での経営改革を断行し、業務の抜本的な見直しを行います。4点目は、「建設積立資産」についてです。28年度末で、放送センターの建物工事費相当分が確保できる見通しとなるため、29年度以降は積立を行わないこととします。
 2ページです。平成29年度収支構造案についてご説明します。表の左側「現行受信料額での29年度収支構造 B」をご覧ください。現行の受信料額とした場合の29年度収支構造です。事業収入は、7,118億円、事業支出は7,020億円で、一番下の欄にある事業収支差金は、98億円の黒字となります。この98億円の黒字は、現経営計画に掲げた金額と同じです。経営計画では、放送センター建て替えのための積立資産に繰り入れるために、予算段階から黒字を確保する計画でした。今回、その積立が必要なくなった以上、総括原価の原則から積立目的の黒字をそのまま計上することは難しく、ここをゼロにして収支均衡にすることが必要ではないかと考えました。一方、冒頭ご説明しましたように、29年度は建設積立資産への繰り入れが必要なくなったことを受けて、収支均衡予算とすることにしますので、この考えに沿った収支構造を赤色の線で囲んだ「受信料額引き下げ時の29年度収支構造 C」の欄で示しています。事業収入は、28年度受信料収入の3%相当の引下げにより103億円の減収となり、7,015億円です。この事業収入の規模は、28年度予算と同規模になります。また、事業支出は抑制を図り7,015億円とします。この支出規模は、28年度予算に比べ79億円の増を確保します。これにより事業収支差金ゼロの収支均衡としています。この収支構造が本日ご審議いただきたい考え方の中心となります。
 3ページです。収支均衡予算とした背景や根拠について説明します。表に平成24年度からの経営計画と決算との比較をまとめました。上段には経営計画、下段はその決算値です。まず経営計画は、赤い線で囲んだ事業収支差金の欄をご覧ください。24年度からの3か年経営計画では、受信料の7%の引下げを実施し、3年間ほぼ収支相償の計画としました。27年度からの現在の経営計画では、建設積立資産へ繰り入れるため毎年度黒字とし、3か年で合計240億円の黒字を生み出すこととしました。放送センター建て替えの積立のための黒字予算となっています。そして計画最終年度の29年度末に、1,282億円を積み立てる計画としました。これが経営計画の想定でした。これに対し、実際の決算では、24年度から27年度までの決算は毎年度黒字となり、27年度を含む4か年合計で1,063億円と、1,000億円を超える黒字が発生しました。経営計画で予定していた黒字額、4年合計で25億円の黒字と比べますと、4年間で1,038億円と計画を大きく上回って黒字が拡大し、この先も更に計画を上回る黒字が出るものと見られます。こうした黒字を建設積立資産へ繰り入れた結果、27年度末時点では決算ベースで1,627億円を積み立てました。この積立資産の規模を経営計画と比べますと、27年度末の比較で500億円あまり計画より多く積み上がっています。また、経営計画で最終的に予定した29年度末の1,282億円と比べても、およそ350億円と大幅に上回っています。つまり経営計画の初年度で、3か年で目指していた積立金の規模を、すでに大きく超えているというのが現状です。現在の経営計画では、29年度予算で積立のための黒字を予定していますが、現実には黒字が出ても繰り入れる必要がありません。積立のための黒字が必要なくなったこの時点で、公共放送の総括原価の観点から、29年度の黒字の扱いについて、どう考えるのか。経営計画と大きくかい離して黒字が続いてきた収支構造を、どう考えるのか。ここで、いったん整理する必要があると考えています。これが、29年度予算において受信料額の引き下げを行うことを判断した根拠です。
 4ページです。受信料額の引下げの考え方について、改めて総括的に記しました。ここに記載した通り、放送センター建て替えの計画が具体化した時点で、建設積立資産を見直し、各年度の予算・事業計画に反映するとしています。これは現経営計画に明記されていることです。また、経営委員会・経営委員長からも、「建て替え計画が成案を得た時点で、収支を見直し、直近の予算・事業計画から直ちにそれを反映した執行部案を示す」よう求められております。これらを踏まえ、執行部として収支の状況を見直した結果、受信料額の引下げを実施し、29年度は収支均衡予算を編成することが妥当だと考えました。(1)に受信料額の引下げの考え方を整理しました。まず、「放送センター建替基本計画」では、建物工事費を1,700億円と想定しました。一方、24年度以降の決算状況は、4か年の合計で経営計画と比べて1,000億円を超える黒字が発生しています。これにより、建設積立資産は、想定を超え、28年度末に1,707億円となり、経営計画の最終年度に予定していた金額も大幅に上回りました。今後、黒字を積み立てる必要がなくなりました。こうした収支状況をいったん整理するため、放送センター建て替えに必要な資金に一定の見通しがついたことを機に、29年度予算において受信料額の引下げを実施し、収支均衡予算を編成します。つまり、これまで想定以上に出てきた黒字について、建て替えのために必要だと繰り返し説明してきました。しかし、建て替え資金にめどが付いた以上、積立のための黒字確保を前提としてきた収支構造をいったん見直し、直近の予算に反映させる必要があると執行部としても考えました。具体的には、29年度の積立のための98億円の黒字予算を見直して、収支均衡予算とすることで、総括原価の原則に戻します。これまでの経緯を踏まえると積立の必要がなくなった、このタイミングで、直ちにこうした措置をとることが妥当だと判断しました。これは、公共放送の総括原価・収支相償の観点から必要な措置であり、大幅な黒字が続いてきた収支状況をいったん整理し、区切りを付けた上で、次の経営計画の策定に臨むことが、これまでの視聴者のみなさまへの説明責任から考えても妥当であり、必要な対応だと考えています。次に、受信料の引下げ額と引下げの方法についてご説明します。引下げは、28年度受信料収入予算の3%相当で実施し、年間影響額は206億円です。29年10月から実施しますので、29年度の影響額は、103億円になります。原則すべての契約者に対して引き下げができるよう、地上契約部分の受信料から月額50円を引下げます。最後に、実施の時期です。営業システムの改修や周知広報などの準備に時間を要するため、29年10月から引下げを実施します。
 5ページです。29年度の受信料の規模についてご説明します。現行受信料での29年度受信料は129億円増収が見込まれますが、ここから受信料引下げの影響で103億円の減を織り込んで、6,790億円の規模となります。引き下げの影響は出ますが、平成28年度予算と比べますと、引き下げ後も32億円の増となります。
 6ページです。平成29年度の建設費について説明します。4K・8K実用放送開始に向けた制作・送出設備や地域放送会館の整備等については大幅増とし、全体として28年度予算に対して70億円増の898億円を想定しています。一方で、番組設備等は、放送センター建て替えを見据え、既存設備の延命などにより圧縮を図っております。
 最後に、今後の予算編成スケジュールです。本日の審議を受け、このあと、予算編成方針として、予算編成にあたっての具体的な考え方や収支の概要を説明し、12月20日には収支予算編成要綱として、事業計画の詳細や予算科目の内訳をご説明いたします。ここでの審議をもとに、年明けの1月17・18日の経営委員会で放送法施行規則に則って、収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、審議・議決して頂ければと考えております。

 (長谷川委員)

 まず、これだけ決算で黒字を積み上げてきたことは、本当に営業の方々をはじめ皆さまの努力のたまものと思いますので、本当にすばらしいことだと思います。建て替えについても基本計画ができ上がり、当初、外に出ることを考えていたが、その予算から大幅に安い費用でできるようになり、そして、随分ゆとりができたということは、大変よかったと思います。ですから、広い意味で値下げを考える基盤ができたということ自体、また大変よいことだと思います。ただ、どうして来年度大急ぎで値下げをしなければいけないのか、ということについて疑問がありますので、お答えいただければと思います。また、4ページに受信料引下げについて考え方が一番詳しく出ているところだと思います。「こうした収支状況をいったん整理するため」と記載があります。先ほどから会長も理事も「いったん」ということばを繰り返しています。例えば、仮にこの値下げが皆さまに感謝する短期限定の値下げであれば何の問題もないと思います。営業の方も、本当に受信料を払っていただいている方には感謝の気持ちでいっぱいだとおっしゃっていました。それこそ10円でも20円でもいいから感謝の気持ちを表現したいという、このお気持ちは非常によく分かりますし、とてもよい考え方だと思います。ただし、受信料は「いったん」というような性質のものではないと思います。物価でしたら、ちょっと原料費が上がればすぐに値上げして、「皆さま、納得してください」の話ですみますが、受信料の場合は、いったん下げたらそれこそ上げることはまず無理です。その常識を覆すのであれば別ですが、受信料はいったん下げたら上げられないと考えるべきだと思います。さしあたって、放送センター建て替えについては一応めどがつきましたが、放送と通信の融合の問題、それから4K・8Kもどういう展開していくか、まだスタートを切ったばかりです。いろいろなことの不確定要素がある中で、今すぐにここで収支をきれいにゼロにしましょうという考え方は、納得できません。

 (大橋理事)

 なぜ今からかということからまず申し上げます。執行部としては放送センター建て替えは、とても大きなかつてないプロジェクトであり、それだけ多くの黒字を出して視聴者の皆さまにご負担をいただいてきました。そして、そのことをずっと言い続けてきました。それが固まった段階で、しっかりと収支を見直して直近の予算に反映させるということは、繰り返し視聴者の皆さまにも対外的にも説明してきたことです。それを実行するという意味では、放送センター建替基本計画が決まったので、直近の予算でまず見直す必要があるだろう。それを言い続けてきたのに、次の経営計画まで1年間待つことが本当に視聴者に対して説明責任が果たせるか。やはり直近でできる範囲で料額の調整を行うことは、視聴者への説明責任上必要だと思い、直ちに実行したほうがよいのではないかと考えています。2点目の4K・8Kのサービスがこれからあり、いったん下げたら上げられないということは十分承知しています。われわれも将来、今の時点で想定される新しいメディア環境への対応のサービスを犠牲にして、値下げをしようという考えは全くありません。執行部内では、中期の収支見通しを立てて、今想定し得る4K・8Kへの対応、それからネットについて、しっかりとそれを織り込んだ上で、いくら値下げができるかということを検討してきました。決して、今余っているから下げるということではなくて、この料額に引き下げても将来やっていけるであろうという見通しをしっかり立てて判断をしております。単に目先のことで値下げをして後に上げるということも考えておりませんで、この料額で当面やっていけるという判断をいたした上で提案をしています。

 (森下委員)

 こういう時期に見直すということは結構。当然必要だと思います。ただし、いろいろ変わってきている環境も整理しないといけないと思います。先ほどおっしゃったように、ネットの話については、中期見通しのときにもいろいろ説明は聞きましたが、この数字にはかなり甘さがあると思います。関係の方に質問しても、納得する返事が返ってこなかったのですが、2018年から2020年を見通すと、ネットの放送常時同時配信は来年度にも総務省から答申が出て、法改正されれば平成30年ごろから本格的な実施になるだろうと思います。その場合、平成30年、31年ごろに本格的になるわけですが、世の中の環境でいけば、動画配信は一気に増えるだろうと思います。そうすると、想定の10倍増えるだけでこの収支差額は飛んでしまいます。執行部が想定しているネット使用料は、20億円から30億円しか見ていないと思いますが、将来仮に10倍になったら200億円から300億円です。そこでネット環境が進歩するとか、あるいはネット料金が下がると言っても、たとえ半分になっても150億円くらいになります。そうすると、この収支差額の100億円は飛んでしまいます。下手をすると、平成30年になると、それだけで赤字に転落する可能性もあります。インターネットの世界は、私は10倍以上になると思っています。また前提として、一般的なCDN事業者で配信するとのことで、それは費用面にすべて含まれているとのことでしたが、そうすると一方では品質がすべてコントロールされてしまいます。民放も、ネットフリックス等の事業者もアカマイなどの同じCDN事業者を使っています。そうすると、NHKが高品質なサービスを提供しようと思っても、結局コントロールできなくなるのではと思います。そのことを聞いても議論されていないとのことでした。ましてや4K・8K配信について設備がどうなるかも分からない。先ほど申しましたように、トラフィック量が増えるだけで赤字転落の可能性も十分あります。そういう意味では、今回の計画は非常にリスキーな計画であると思います。長谷川委員もおっしゃったように、一時的にはよいかもしれませんが、将来に禍根を残す可能性があると思います。もう1年くらい様子を見て、先ほど言いましたNHKとしてCDNのあり方をきちんと整理して、トラフィック量が10倍や100倍になったときの構成もどうするか、設備投資でやるべきものか。何でもかんでも自分でやることではないのですが、きちんとしたものを作っていかないと、将来問題になるのではないかと思います。もうちょっと慎重に議論をし、それらの構想をしっかり作り、その上で設備投資としてやるべきものと費用でおこなうもの、いろいろなものを整理してやっていくべきではないか。そういった意味で、今回からやるのは、ちょっと拙速過ぎるというのが私の意見です。

 (大橋理事)

 確かに今後のメディア環境が大きく変化することが予想されます。今の段階でどれだけ見込めばよいかという議論があることは承知していますが、説明したように、今回の料額の引下げは過去5年間にわたって視聴者の皆さまにこれだけ大きな黒字を負担していただき、積み立てて1,000億円を超える黒字を許容していただいたことを考えれば、積み立てが必要なくなった段階で、その黒字の収支構造をいったん見直す必要があるということで行うものです。今後どういうメディア環境の変化が起きるかは、その整理を1回した上で、5年間にわたって予定を超えるような大幅な黒字をご負担していただいた視聴者の皆さまにいったん区切りをつけ、公共放送の原点の総括原価に一度戻って、その段階で次の将来についてじっくりと、しっかり考えるべき問題であろうと思います。この間ご説明した中期見通しでは、確かに想定で金額が少ない、多いという議論はあると思いますが、それは仮に置いた数字です。例えば委員の皆さまからご指摘があったように、総合テレビや教育テレビは、ずっと想定している数字です。その中のやりくりはこれから実際に検討していきます。この一定の規模の金額の中で、何に重点配分するかということを今後考えていかなければならないことであって、あの数字で必ずできるということを確約したものではなく、むしろこれからそこを考えるということです。なので、まず出発点に立つ意味でも、1回公共放送として総括原価に戻すことが、視聴者に対する説明責任であると思っています。

 (森下委員)

 一時的に一時金で値下げするということであれば分かります。今おっしゃったことは、そういうことですよね。一時的に値下げしてこの1,000億円を一時的に返すのであればそのとおりです。しかし、ここで下げたら、ずっとその先に影響していくわけです。今想定できないから見ない、と言うのはおかしいと思います。想定できなくとも、インターネットの世界がどのように繁栄していくのかを研究すればよいのです。今できないのなら、1年間一生懸命勉強すればよいのです。BBCやいろいろなところも行っていることです。なので、今は何もわからないからといってそこをほったらかしにしないでいただきたい。値下げをすることで、私が想定するだけでも赤字に転落する可能性もあるわけですから、そういうところをもう少しきちんと考えてください。

 (宮原委員)

 4K・8Kやネット同時配信をしてほしいということは、ユーザーの新しい要求です。新しいサービスで、ユーザーはそれを期待しています。ですから、視聴者は、今まで放送センター建て替えだけのために受信料を払っていたとは思っていません。新しい要求、サービスに応えていくためには、ご説明いただいた想定では不安があります。数年後とおっしゃっていますが、トラフィック量の伸び率は想像以上に大きいです。リニアではなく指数関数的に伸びています。一定のQoS、品質を保とうと思うと、仮に10倍のトラフィック量を担ったとしたら、10倍以上の設備を持たないとサービスができなくなります。ですので、トラフィック量の伸びを見てからという想定が甘い。目の前にもう4K・8Kやネットをやってほしいという強いユーザーニーズに応えるということであれば、値下げをする必要は無いのではと思います。

 (籾井会長)

 まず、なぜ来年度やるかというと、積み立てる必要がなくなり、余剰のお金が出ますから、これをすぐお返ししますということ。要するに、まずゼロでやるところからスタートし、その次は別です。それから、今いろいろなご意見をいただきました。たぶん将来的にはいろいろな技術の革新もあるでしょう。それから、今、宮原委員がおっしゃったように、消費者ニーズがよりよいものを求めていくということ、これについてはわれわれも否定しているわけではありません。私は、この時点で1回値下げをすることによって、来年も再来年もその次も、ということにはならない。しばらく様子が見ることができると思うのです。受信料額をいじらないで様子が見られるのです。そうしますと、森下委員や宮原委員がおっしゃったことが現実にどうなっていくのかということを、私は現実に見ることができると思います。4K・8Kについては、今は何が起こっているのかというと、来年衛星が上がり、8Kは左旋の衛星で再来年から本放送が始まります。今そういう段階なわけです。今、4Kを自動的に見る、映せるテレビはありません。チューナーをつけないといけない。そのためにも10万円ぐらいかかる。まだこういう時代なのです。ましてや、8Kを受像できるテレビセットは、家庭に入るようなものがいつできるかということも、まだ分からない。私はずっと先になるのではないかと思います。その前に例えば8Kのシアターとか、そういうものが出てくるのだろうと思っております。それから4K・8Kのネット同時配信は、委員がご指摘のとおり、もう本当に膨大な容量が必要です。そうすると、われわれNHKがどうこうできる話ではなく、通信事業者がものすごく膨大な容量アップをしてくれれば、われわれはそういうこともできるかもしれない。今、現実にわれわれがネットを通じて出せる4K・8Kは、これはダウンコンバートするか、あるいは今やっているようにVODです。すでに、われわれはNODで4Kの配信を行っています。これについては、特別膨大な予算を想定しなくてもできます。現実にネットフリックスもやっていますし、現実に進んでいるわけです。われわれもコンテンツがたくさんできれば、それをどんどん流すことはできるわけです。今、委員がおっしゃっている中で、ちょっとすぐには無理だなということは4K・8Kの同時配信です。われわれは、ここ数年は4K・8Kの放送に集中する。放送法の改正があれば常時同時配信も行うということです。とにかくここで1回値下げを行う。来年しておけば数年間時間が稼げます。この間に、今までいろいろお話しさせていただき、指摘もいただきましたことを、世の中がどうなっていくのかの様子を見たいと思っています。その上で次の方策を考えたいということです。ああなるかもしれない、こうなるかもしれないと、技術に詳しい皆さまがおっしゃっているのですから、いずれはなるのだと思います。ただ、今の段階では、われわれは放送業者であり、通信業者ではありません。常時同時配信は放送法で禁止され、許されていません。われわれがやれることは、コンテンツを作り、これを放送で流すということ。今はネットをどうしていくかいうことが議論されている段階であり、法律でNHKがネットで出せるようになるのは、早くても再来年です。もっと先になるかもしれません。したがって、今の現実を延長しても、皆さまのおっしゃっていることを行う前に、もう少し時間があります。その間に、1回ここで、わずかではありますが値下げをして、しばらくこの値段で行く。来年、もしかしてお金がもっとたまって、もっと下げろという声も出てくるかもしれない。しかし、皆さまのおっしゃっているように、将来いろいろ設備投資が必要かもしれない。私はこれを否定しているわけではない。しかし、今率直に言って、われわれの目から見てこれがいつになるかは分からないのです。おっしゃっているように近未来かもしれません。そういう意味において、今値下げをしておいて、そして数年後また、もしわれわれが値下げをできるようになったら、もっとやればよい。場合によってはお金がたまっているかもしれない、繰越金もあります。そういうお金を使って、いろいろな投資ができるというように思っていますので、来年度の値下げについては、全く大勢に影響はありません。

 (森下委員)

 話に矛盾があります。先ほども言いましたが、この1,000億円を一時的に一時金でお返しするのであれば、おっしゃるとおりだと思います。ですが、今、会長がおっしゃっているように、2019年、2020年が勝負になってくるわけです。最速だと今年度に答申が出て、来年度に法案ができ、再来年からやると。ネットフリックスなど、ネットの市場はどんどん広がってきています。トラフィックは、それでまた増えるわけです。要するに、コストに全部乗っかってくるということです。たぶん200億円から300億円膨らんでしまうのではないでしょうか。

 (籾井会長)

 そのようなことはありません。

 (森下委員)

 では、その数字を出していただけていないので、出してください。

 (籾井会長)

 それはありません。

 (森下委員)

 勉強会をしていただいたときも、数字を出してくださいと言って出てこなかった。ですが、後でいろいろ聞いてみると、20億円ぐらいだと。その場合、トラフィック料が10倍になっただけで約200億円になります。

 (籾井会長)

 なぜ10倍になるのでしょうか。

 (森下委員)

 それを研究していただきたいのです。インターネットの世界を。インターネットのトラフィック量をよく考えて、それが2019年、2020年だったらどうなるのか。そういったことをもっと研究してほしい。分からないから、では困ります。1年間しっかりそういったことをやって、それで推定していただければよいと思います。そうしないと、私は、さっき言いましたように、赤字に転落する可能性もあるということ思います。

 (籾井会長)

 今、送れる通信量は、4K・8Kで同時配信をやると、2,000世帯ぐらいしかできません。森下委員は、いま何をしろと言っているのでしょうか。

 (森下委員)

 4K・8Kではありません。ネット同時配信です。その分、CDN事業者に支払うコストです。

 (籾井会長)

 今、われわれは国際放送をネットで行っていますが、経費は約17億円です。

 (森下委員)

 それでは、28年度は国内ではいくらと見ているのでしょうか。

 (籾井会長)

 国内では約20億円です。合わせて37億円です。将来、仮に同時配信をもっと増やした場合でも、NHKの7,000億円規模の収入の中で吸収できます。これは、値下げをやめるだけのインパクトはございません。

 (森下委員)

 そういう見通しを数字で示していただきたいと思います。何のために中期の議論をするかといえば、やはり数字で確認していかないといけない。

 (籾井会長)

 今は来年度の議論しているのです。

 (森下委員)

 だから、非常に危険性があると言っています。

 (籾井会長)

 それは承りました。

 (森下委員)

 もう1年、インターネット同時配信をどうしたらよいのか、それをしっかり議論、研究すべきではないかと言っています。それを分からない間に値下げをしてしまったら赤字転落の危険性もある、ということを指摘しているわけです。

 (籾井会長)

 分かりました。勉強させていただきますが、その200億円、300億円ということには絶対なりません。

 (今井専務理事)

 若干補足させていただきます。主たるご意見は、常時同時配信をこれから実施していくとなると、その費用が将来非常に大きくかかるのではないかというご指摘だと思います。その将来見通しについては、いろいろな意見があって当然のことと思っていまして、考慮の対象にする必要があることは十分承知しています。1点だけご承知おきいただきたいのは、4K・8K放送は、現行のNHKの衛星放送の業務規定で実施可能ですが、常時同時配信は法律の明文で禁止されている業務です。例えば来年度の予算には、もちろん常時同時配信はできませんので一円も計上しません。その後の3か年の将来計画につきましても、NHKは法律によって定められている業務を実施する機関で、その法定業務を実施するための計画という性質のものです。したがいまして、ネットサービスをやっていくことに伴って費用が増えてくることはもちろん十分に見込まなければいけませんが、常時同時配信に将来お金がかかるかもしれないということを理由に、このお金はとっておきたいという話を外に向けて言うのは、なかなか難しいのではないかと私は考えます。

 (森下委員)

 何度も言っていますが、そのようなことは言っていません。来年度からやれとは言っていません。しかし一度その値段に下げてしまうと、3年後、5年後に影響するということも考えなければならない。今、今井専務理事がおっしゃった、今はまだ法律で実施できないということは当たり前です。けれども、現に総務省の有識者委員会で議論が行われており、解禁する方向で議論が進められていると聞いています。そうすると、早ければ来年度に法律が改正される可能性が高くなり、そうすると再来年度から実施となります。そういう流れを想定しておく必要があるのではないでしょうか。だから、単年度でお返しすることならよいですが、将来にツケを回すようなことも想定されるので、もう1年ぐらい様子を見て、来年度にその法案がちゃんと上程されるようになった段階で決めればよいのではないでしょうか。そうすれば見通しもつくでしょう。次の世代にツケを回すようなことでよいのですか、という話です。

 (今井専務理事)

 違ったことを申し上げているつもりはありませんが、今の時点ではどのような説明を対外的にするかということは、よく考える必要があると思います。

 (長谷川委員)

 私も籾井会長のお話を伺って、ちょっと矛盾があるという気がしました。たった3%の値下げなので、差し当たって本当に影響が少ないというご説明のベースがありました。これは、実は視聴者の側から見ても同じで、先ほど重いご負担をと言っていましたが、その重いご負担が月50円安くなることで、「うわー、うれしい」と言う人はすごく少ないと思います。月50円下げてもらって、視聴者が本当にうれしいかと、何か言い訳めいているという感じがします。また、今井専務理事が「どのような説明を」とおっしゃいました。その意味で、予算編成の考え方というのは非常に大きい哲学的な意味を持っている。NHKが公共放送であり、そのNHKの使命はどういうものだと考えているのかを問われていると思います。ただ金勘定でNHKの予算を編成してはいけないと思います。「平成29年度予算編成の考え方」にも書かれていますように、(3)のコンテンツ制作力強化は本当に大事なことで、先ほどもご意見の中にありましたが、NHKの質の高い番組づくりは、一視聴者としても本当に強く感じるところです。これは何が支えているのか。ここで出てこないのは人間です。この間も理事の方とお話をしていて、つくづく大事だと思ったのは、NHKの宝物は人間だということです。人間がどれだけ実力発揮できるか、そういうシステムになっているのか。下手をすると、新しいシステムを導入するのにお金を使わなければならないので人間を減らそう、そういうふうな方向に行く。これが果たしてNHK予算の考え方の根本としてよいのかどうか。そういうところから見直していくと、この3%分の黒字はいくらでも有効活用ができると思います。それから、NHKの使命は地方各局です。これはただ支店が各県にあるというものではなく、地方創生があえいでいるときに、NHKが先頭に立って地方局をどう生かしていくか。これも公共放送としてすごく大事な使命だと思います。そういうところに、本当にお金が十分に行き渡っているのかということにも目配りをして、その上でこれだけ黒字があり還元するという考え方をすべきだと思います。そういう意味で、値下げ以外のところにも目を向けていただきたいと思います。

 (宮原委員)

 要するに、4K・8Kをネットでやらないから、ネットでハイビジョンだけやるから、それで安全だという保証は何もありません。NHKがVODをどんどん増やしていくと、民放が4K・8Kをやり出してくる。NHKだけがハイビジョン用に専用のネットワークを持つことはできないので、みんな同じネット環境を使うことになります。先ほど言われたように、ハイビジョンだけやるから大丈夫だという保証は何もありません。

 (籾井会長)

 先ほどの長谷川委員の発言は、50円で誰が喜ぶかとおっしゃいました。私たちは50円ではなく、場合によっては30円でもいいかもしれない、100円でもいいかもしれないと思っています。要するに、われわれとして余ったお金は返すということです。したがいまして、この積み立てが終わった時点、明らかに積み立てしないでいい分だけ余るわけです。それをお返しすると言っているわけで、多寡の問題ではありません。NHKの費用はご承知のとおりのものですから、次回余裕ができたら、やるときは100円かもしれない、また50円かもしれない。そういうものだと思います。ですから、私自身は、50円だからこれで誰が喜ぶのかというスタンスではやっていません。皆さまが今まで1,700億円ものお金を積ませてくれたわけです。1,700億円積んでなければ、この分は集めなくてもよかったかもしれません。そうすると、年に直すともっと低い受信料でできたかもしれない。しかしながら、われわれはセンター建て替えのためにお金を積まなければいけなかった。ここで建て替えるようになり、1,700億円で済みましたので、ここで積み立てをやめますということなのです。したがって、いろいろな理屈は別として、2百数十億円積んできたものは余るわけですから、これをお返ししますというわけです。「50円ありがたいね」と言われることを期待していません。NHKは、こういう立てつけの組織ですから。そこが返すということなのです。

 (長谷川委員)

 やはり、数字でものをお考えになってらっしゃることが分かりました。

 (籾井会長)

 今、長谷川委員も金勘定とおっしゃったでしょう。

 (石原委員長)

 長谷川委員は、たかが50円と言っているのではありません。そのお金をどう使ったら視聴者が喜ぶかということを言っているのです。

 (籾井会長)

 今おっしゃったのは、50円で誰が喜びますかというお話だったと思います。

 (石原委員長)

 そういう意味で言ったわけではないと思います。

 (籾井会長)

 そういう意味ではないのですか。

 (長谷川委員)

 本当に視聴者を喜ばせようと思ったら、1,000円になると非常に喜ぶと思います。

 (上田委員)

 まず、放送センターの建て替えの積立金は建替基本計画が具体化した時点で見直すということで、各年度の予算に反映していただいたことは、結構だと思います。その反映した結果は、2ページにありますように、29年度で98億円の収支差金が出る。したがって、この98億円の収支差金を収支均衡という形でやりますという、こういう予算になっているわけですね。そこでとりあえず3%引き下げて、半年分だからちょうどゼロになりますと、こういう予算ですね。ただ、受信料の値下げというのは、何回も出ていますように、ちょっと余ったから値下げするとか、足りないからちょっと上げるとかいうようなものではなく、やはり中長期的な収支見通しをしっかり立てた上で、それで決めていかないといけないと私は思います。そのしっかりした収支見通しを立てていくためには、具体的な戦略のある中期の経営計画が必要となります。先ほどからいろいろ出ていますが、向こう3年、平成29年度以降にこういう形でオリンピックに向けてやっていこうということのコンセンサスがないから、どれぐらいの金額になるのか、やはり分かりません。そのあたりの中長期的な戦略をはっきりさせて、それに基づく収支差金をある程度予測し、それを踏まえて受信料をどうするか考えるということが極めて大事ではないかと思います。単年度だけ見てとりあえず、というのはどうなのか、長谷川委員がおっしゃった「いったん」ということとも同じかもしれませんが、そういうふうに私は感じました。

 (大橋理事)

 長谷川委員と上田委員のお話は共通のところがあると思いますが、98億円だけ見てやるなとか、50円では喜ばないということなのですが、私は違うと思います。長谷川委員から先ほど公共放送の哲学ということばが出ましたので、われわれが考えている哲学では、公共放送は、いいコンテンツを出して地方を豊かにすれば、どれだけ金がかかってもよいのだとは思ってはいません。われわれが持っている哲学は、そういう公共的なコンテンツで使命を果たすことも重要ですけれども、総括原価の中で、視聴者の皆さまに公平に負担をしていただく以上、一定の金額的な規律がなければならない。将来こんなにサービスを拡大するのだからどんどんお金使ってよいとは思っていません。そういう意味では、お金だけで考えているのかということになりますが、われわれはお金も考えています。それはわれわれの哲学なのです。今までわれわれは長い歴史上、総括原価で収支均衡をとってきました。要するに、過不足がゼロという状態をずっと続けてきたわけです。そういう意味で言うと、98億円であっても、やはり単年度、1年だけ98億円という使途のない黒字を積むということは、長いNHKの歴史でもほとんどないに等しい。使途、目的はないが、将来もしかしたら使うかもしれないから98億円は1年間とっておけばよいという考えは、理屈として分かるような気がしますが、厳格に言えば、やはり使途がないお金を視聴者の皆さまからいただいて、それは将来の備えですという形で取っておくやり方は、われわれは基本的には許されていません。考え方は分かりますが、それが公共放送のお金の面での哲学であり、規律だと思います。だから、わずか98億円と言うかもしれませんが、これとて使途のない形の黒字を当初予算から組んで出すということは、われわれはあまり許容できない。それと、先ほど説明したように24年度から現在に至るまで、本当にその哲学の総括原価の説明責任をきちっと果たして今までやってきたかというと、そうではありません。経営計画からあれだけ収支が改善しているのに、全く何もしないで、たまったからしょうがない、将来のために取っておけばよいというのは、やはりわれわれの哲学から反しており、できるだけ収支均衡にし、総括原価で公共放送は金銭面での規律を守っていくべきだと。そこに一度、これだけの大きな負担を皆さまにしていただいたのなら、その原点に1回戻る必要があるだろうと思います。そういう意味で、会長が公共放送の姿勢を示すとお話ししたと思いますが、それは公共放送の、われわれの哲学をお示しすることではないかと思っています。だから、金額の多寡ではないと、そういう感じです。

 (松原理事)

 私はずっと営業の現場をやってきました。今の支払率はまだ77%ぐらいですから、払ってない人の分を今の77%の人に負担をしてもらっている。そのことを考えると、公平負担に向けて着実に支払率を上げていきたいと思います。私は100%近い支払率があれば、自動的に安くできると思います。そういう過渡期にある中で、今払っている人が払っていない人の分を負担しているということを考えると、金額の多寡というよりも、常にわれわれはそのことを考えて、極端な話、10円でもできるのであればやるべきだと思います。そのことを私は現場をやってきて、常に、ずっと思っています。よく「払ってない人の分を俺たちに負担させているだろう」と言われます。そういうことも含めて、余剰金が出れば、私は、10円でも15円でもやるべきだと思います。

 (渡邊委員)

 NHKの職員は地方も含めて1万人以上います。いろいろなやり取りを聞きましたが、恒久的な値下げをしても、その職員の働き方は本当に質が高いと思います。私も会社経営をしていますが、ストレスチェックが義務化され、いわゆる経営者や管理職が考えている目線と現場の人の目線はすごいギャップがあると感じます。それは例えば成果を上げるためにサービス残業をしているというようなことであり、現場の改革が必要な時期が間違いなく来ていると思います。そういう意味でも、地方放送局も含めてそこのところの投資や、女性が活躍しやすいように保育所や育児休暇、介護休暇などの環境整備についてどういうふうに考えているのか。一時的に1,000億円を返すことは本当によいことだと思いますが、恒久的ではないということ。また今の世の中の働き方を報道しているNHKは、一番モデルにならないといけないのではないかと思います。もしそういう報道が出てきたときに、非常に大きな問題になるような気がします。そういう意味で、働いている方の目線でもう1回チェックしていただきたいと思います。

 (佐藤委員)

 私もいろいろ議論を聞かせていただきました。それから、将来はこうなっているはずという中長期計画も見せていただきました。それを前提でお話しします。今はまったく違う議論をしていると思います。これからの計画が本当にしっかりしているのか、という点の問題意識を経営委員は持っています。執行部は、お約束したことで当然余ったのだから返すべきだと言っています。それでは全くの平行線なので、この議論はなかなか折り合っていきません。中期計画の中で、先ほどもお話が出ましたが、非常にアバウトなものしか出てきていませんし、詳細は見せていただいていません。そこで急に値下げをするという話が出ても、なかなか納得ができないと、それは当然と思います。哲学だということも分かりましたし、本来だったら値下げすべきものだということも、経営委員会はもちろん分かっています。当然やった方がよいに決まっていると。そういう意味では、中期の計画のところをもう少ししっかり示していただきたいということが、経営委員全員が言っていることだと思います。十分やったと言われるかもしれませんが、前に見せていただいた数字では、今の延長線の数字が並んでおり、どこに注力していくかが、見えませんでした。私たちはすごく不安になっています。将来のことをちゃんと考えてやってくれるのかと。そこに対する不安を払拭するようなデータや資料がやはり必要なのではないかと思います。その上で、哲学なのだからそうしましょうとすればよいかと思います。人事のことも出ていましたが、それは別物だと思います。そういうことは単年度なり中長期の中できっちり議論されることで、この値下げそのものとは今回は関係が無いと思います。当然やるべきことはやらないといけないわけですから、次の予算の中でしっかり検討して、予算を配分すればよいと思います。

 (籾井会長)

 渡邊委員の質問にお答えします。本当にありがとうございます。NHKは古い組織ですので、いろいろ古い慣習等々も残っています。そういう中で、まず手をつけたのは女性に対する施策です。管理職登用とかも含めまして、まず、子育て、出産、育児、それから2年後に戻ってきて同僚より2年間遅れたということがないように、いろいろなことに気配りをしています。それから、もう1年以上前になりますが、すぐそこに託児所を作りまして、関連企業も含めて全員入ることができるようにしています。ベテランの方に戻ってきてもらえるように、夫が海外転勤した場合には一緒に行って、その代わり戻ってきたら職場に戻れるようにするなど、そういうこともいっぱい行っています。ただ、気がつかない点もいっぱいありますので、今ご指摘がありましたように、そういうところにも細心の注意を払って、職員の働く環境整備をしていきたいと思います。

 (大橋理事)

 将来に対する不安が払拭(ふっしょく)されないというご指摘でしたので、もしお時間が許されるのであれば、一定の中期見通しをお示ししたいと思います。その中期見通しを見ていただければ分かりますが、今回値下げしても来年度の収入は増えます。受信料収入も増収の努力をしますので、3%の値下げをしても増え幅が低くなるだけです。値下げをするとものすごい減収になるようなことをイメージされているかもしれませんが、そうではありません。そのことも中期見通しではお示しできます。

 (上田委員)

 同じことを繰り返していますが、中期の見通しの数字を並べてもらっても、われわれはその中身はよく分かりませんので、どういう戦略で今後NHKはやっていく、そのためにこういうお金が要る、ここに使い、ここは節約しますとしっかりとした中身の経営戦略を示していただきたい。「支払率は毎年1%上がります」とか、「できるだけ支出はゼロベースでやります」とか、「余りましたから返します」では、全く同じ議論の繰り返しになります。皆さまもおっしゃっているように、「今後NHKをこういう形にします」、「そのためにこういう戦略を打ちます」、「それにこういうお金がかかります」という、しっかりとした説明をしていただいた上で、その上で収支はこうなりますとやっていただきたいと思います。それがないと、皆納得しません。ぜひお願いします。

 (籾井会長)

 今は3か年計画の3年目の予算を今議論しているところです。その次に、また中期の3か年計画というのが出てくるわけですから、そこはご理解いただきたいと思います。

 (上田委員)

 それも繰り返しになりますけども、1年だけのバランスをとるということだったら話は別ですが、受信料を値下げするということは中長期に影響がでるので、中長期的な戦略が立っていないと、やはりそれはできないでしょう、ということを先ほどから繰り返し言っているわけです。今は平成29年度の予算についての話でありそこで余るからこれでいいだろうという話では全然ない、ということが経営委員会のコンセンサスではないかと思います。

 (石原委員長)

 きょうは相当審議をいたしました。本日説明いただいた予算編成の考え方については、さまざまな課題や指摘事項がありましたので、継続審議といたします。次回、11月22日の経営委員会で再度説明をお願いします。

 

 

3 会長報告(資料1)(資料2)

 (籾井会長)

 7月26日経営委員会でご報告した「NHKグループ経営改革の取り組み」、および3月22日経営委員会でご報告した「NHKアイテック抜本改革の取り組み」の進捗状況につきまして、本日の理事会で関連事業局より報告を受けましたので、担当の黄木理事よりご報告いたします。
 (黄木理事)
 お手元に「NHKグループ経営改革の取り組み」「NHKアイテック抜本改革の取り組み」の資料をお配りしております。本日は、重点ポイントを中心に説明させていただきます。
 まず、「NHKグループ経営改革の取り組み」についてです。1ページをご覧ください。前回、7月26日に報告した時点からの進捗を緑字にしてあります。「1.コンプライアンス・不正防止施策の徹底」では、リスク管理室と連携して、関連団体リスク点検活動を進めています。非常勤取締役や監査役とも共有して、対応を進めています。関連団体の評価については、経営目標の進捗状況を四半期ごとに報告させており、タテの所管部局と情報共有し、取り組み状況を監督しています。3ページをご覧ください。NHKグループ研修については、上半期にNHKと関連団体従業員のさまざまな層を対象に、グループ経営やコンプライアンス徹底を図りました。 続いて、「4.NHKの指導監督機能の強化」です。所管部局と関連事業局のいわゆる「タテヨコ管理」の実施状況です。子会社管理の中心的な位置付けとして、各社ごとにマネジメント連絡会を設置して、7月以降、毎月1回程度開催しています。NHK側は、タテの所管部局とヨコの関連事業局の非常勤取締役や担当者、子会社側は経営企画・総務の役員や関係社員が一同に集まって、報告・検討や情報交流を行なっています。毎月定例の議題は、事業計画、経営目標の進捗、内部統制の取り組み状況などです。節目の議題は、四半期業務報告、監査対応状況、見える化等の経営課題に関する事項です。また11月初めに、NHK会長と関連団体社長・理事長との懇談会を3グループに分けて開催し、NHKの経営方針などの経営意志伝達を徹底するとともに、グループ経営に関する意見交換を図りました。4ページをご覧ください。これまでの関連団体に対する指導・監督強化の取り組みを踏まえて、関連事業局の職務権限を改正しました。この中で、子会社管理責任者規程を制定することを定めており、マニュアルとともに策定しました。規程は、子会社の管理責任者を所管部局および関連事業局の部局長とし、相互に連携して子会社事業運営の指導・監督を行なっていくことを明文化しました。また、手引きは管理責任者の職務を具体的に説明しています。4ページ中段、非常勤取締役の研修強化についても、外部セミナーの受講や上場企業の役員をお招きしての勉強会等を開催し、スキルアップを図っています。続いて、5ページをご覧ください。内部統制報告は四半期ごとに進捗状況を報告させ、今後、監査でも実施状況を確認していきます。また、NHK内部監査室の子会社調査は、子会社13社のうち、5社で調査を終えています。7ページの「5.構造改革の断行」についてです。「委託の見える化」については、子会社13社と財団法人4団体を対象に、タテの所管部局が中心となり、データを収集し分析を進めています。課題のある委託取引については、各団体と協議のうえ、見直し方針を策定し、29年度の業務委託契約に反映させていきます。また、自主事業についても同様にデータを収集し、本体のタテの所管部局と、子会社全般を所掌するヨコの部局である関連事業局が連携し、分析を進めています。特に、団体間で重複している一部の自主事業については、再整理に向けての準備を進めています。最後に8ページの「子会社の利益剰余金の適正な“還元”のあり方等の検討」についてです。来年度についても、特別配当を含めた大型配当を要請していきます。配当性向についても見直しを行って配当規模を確保していきます。さらに、放送・サービスの充実に貢献するような施策や情報セキュリティ強化などNHKグループとして視聴者に還元できる施策への投資を計画し、実行します。
 次に「NHKアイテック抜本改革の取り組み」についてです。3月以降の取り組みの進捗状況を緑字で記載しています。1ページ目をご覧ください。アイテックでは、4月の臨時株主総会で、常勤監査役に公認会計士の資格を持つ外部人材の起用を決めました。2ページ目の「NHKアイテックのガバナンスの刷新」です。4月の臨時株主総会で、社長以下、新たな取締役5名を選任しました。また、同日、社長を委員長とする「経営改革プロジェクト」を発足させ、具体的な施策を策定・実行しています。3ページの「アイテックの内部統制の実施状況を報告する制度を導入」では、関連団体に内部統制の実施状況報告を行わせることにしました。アイテックでは、「リスク点検チェックシート」、「内部統制チェックリスト」をNHKに提出し、10月の取締役会で報告を行いました。「指導監督機能の強化」に関しては、毎月1回、「タテ」の所管部局長である技術局長と、アイテックの取締役などが出席するマネジメント連絡会を開催しています。「経営改革の進捗状況」、「再発防止取り組み結果」などが報告されています。10月からは、各拠点局においてもアイテック支社との連絡会を開催し、情報共有を図っています。4ページ目の「NHKアイテック業務の抜本的な見直し」です。「人事施策改革」では、支社主体での人事を本社主体とし、地元業者との癒着リスクを避けるために人事本部を設置しました。中長期要員戦略なども策定します。「管理職改革」では、決定権者を明確にするために、決定権を持つ職位に就く管理職を大幅に絞り込みました。「リスクマネジメント改革」では、内部監査室の体制を専従4名、兼務4名体制に強化しました。また、リスク管理を充実させるために、独立したリスク管理部門を創設しました。弁護士も駐在させています。「調達改革」では、現場と調達部門を分離することで、地元業者との癒着リスクを排除するため、7月に本社に調達部門を設置しました。10月から本社、11月から支社が調達業務を開始しています。「地域組織の再編」では、事業所長、分室長を管理業務に専念させ、管理機能を強化しました。また、事業所再編を実施し、57あった地域組織を34に整理・統合しました。「事業の精査・仕分け」では、事業目的とミッションを再定義しました。アイテックの役割を明確にし、事業目的やミッションに適わない業務は、段階的に縮小・撤退し、適正規模と安定運営をめざす検討を進めています。5ページ目をご覧ください。アイテックでは、3月に「取引リスク評価委員会」を設置し、受注する前の段階でリスクが高い業務、NHKグループとして適切ではない業務をチェックし、受注を見合わせる体制を整え実行しています。
 引き続き、タテの所管部局である技術局と関連事業局の連携をさらに図って、指導・監督を行い、グループ経営改革を進めていきます。

 (堰八委員)

 NHKグループ経営改革の取り組みに関してですが、本体も含めた取り組みで、近年残念ながらNHKで起きたいろいろな不祥事について、それを撲滅していくという意気込みでいろいろなことをやってもらって、非常に中身もすばらしいと思います。お聞きしたいのは、特に1のコンプライアンス、不正防止施策の徹底に関連することです。今いろいろな体制、組織の説明に管理者に対するいろいろな研修はあるのですが、最終的にはこういう枠組みをつくって、いかに現場の職員にその考え方が浸透しているかどうかというところが、重要だと思います。それを確認するような方法、例えば年に1、2回、アンケートをとってみて、実際にその考え方が現場に浸透しているかという確認をしているのかをまずお聞きしたいと思います。もう一つは、不祥事あるいはセクハラ等というのは、大きな組織では残念ながらあるのですが、それについていわゆる内部通報制度、通報した人が不利益をこうむらないようにしかるべき部署にその問題を通報する、そしてきちんとした組織としてそれを調査して、それを通報者にきちっと還元する、あるいはその方をきちっと守るというような制度は、これは当然本体にあると思うのですが、これが子会社にもあるのか伺います。

 (坂本理事)

 コンプライアンスの徹底、不祥事の根絶ということは、この秋もさまざま不祥事が起きたのを受けて直ちに徹底を図るよう取り組んでおります。コンプライアンス徹底月間、推進月間というものを設けておりまして、10月、11月、12月の3カ月、アンケート調査を含めて全職員に徹底、確認を今しているところです。
 もう一つ、新しい取り組みとして、地域局などの部長会の場でふだんからリスク要因がないかどうかを意見交換し、複数の責任者で確認しています。拠点局や東京と定期的に連絡をとりながら対応しているところです。

 子会社のハラスメントに関する事項につきましては、内部通報制度があります。本体、それから弁護士事務所も活用しながら、同じような形で対処しています。いずれにしても、個々人の職員の自覚が最も重要なことだと思っておりますので、全役職員一体となって取り組んでいきたいというところでございます。

 (堰八委員)

 ありがとうございます。すばらしいことだと思います。ちなみに内部通報制度は、実際に利用されていますか。

 (坂本理事)

 はい。実際に機能しております。特にリスク案件になれば直ちに対応して取り組んでいくということです。

 (黄木理事)

 つけ加えます。その内部通報については、先ほどご説明したマネジメント連絡会の四半期報告で、子会社ごとにその四半期でどれだけの内部通報があったのか、それについてどのように対応したのか報告をさせています。

 (森下委員)

 5ページ、2つ目の点のところに協会の内部調査組織とあります。今、内部監査室がグループのチェックをしていただいていますが、内部監査室は要員が増えずにやっているので、本来やるべき業務を減らしてこちらへ手を回しているわけです。報告を受けていますと、結構いろいろなこと、細かいことが指摘されています。ぜひ早いうちに各グループ会社の監査担当にそのやり方を勉強してもらい、各グループ会社の中できちんと回るようにしてもらいたいと思います。今の内部監査室では、30項目とか50項目の非常に細かい指摘を行っています。このような業務がきちんとできるように早く育てて、それを例えば3年計画ぐらいで自立させ、内部監査室は、早く本来の監査体制になるように指導してもらいたいと思います。

 (黄木理事)

 承りました。現在の内部監査室の調査には、各子会社で組織した内部監査のグループも、一緒に参加して、調査の中身について習熟することも含めて、ノウハウを蓄積するようにしておりますので、森下委員がおっしゃるよう自立できるよう、人材の育成を進めてまいりたいと思います。

 (森下委員)

 それをぜひ3年計画とか、きちんと目標を持ってやってもらいたいと思います。

 (中島委員)

 一般的に言いまして、NHKは個人の主体的、自主的な活動によっていい仕事をしているかと思うのですが、それを裏返すと、仲間同士でお互いにチェックする機能が少し薄れているのではないかという気がしています。このような文化が内部告発の機能を妨げることのないように配慮する必要があると思います。

 (坂本理事)

 ご指摘の点は我々も十分認識しております。できるだけ複数の目による業務のチェック、点検を行い、コンプライアンス上問題がないよう取り組んでいるところです。

 (石原委員長)

 NHKグループ経営改革の取り組み状況につきましては、今後も報告をお願いします。それでは、本件をこれで終了します。

 

 

4 報告事項

 (1) 平成28年度中間決算・中間連結決算について(資料)

 (大橋理事)

 平成28年度のNHK単体と連結の中間決算がまとまりましたので、ご報告します。NHKの中間決算は、自主的な取り組みとして平成23年度から 実施しております。
 それでは、A3版の資料をご覧ください。NHK単体の中間決算と、連結の中間決算の両方を、それぞれ、表と裏にまとめています。まず、NHK単体の中間決算からご説明いたしますので、青色の面をご覧ください。資料の左側に、一般勘定の事業収支について、予算と中間期実績を比較しています。28年度中間期の事業収入は受信料が堅調で、関連団体からの特別配当の実施等もあり、3,561億円となり、予算に対して50.8%の進捗率となっています。このうち、受信料収入は3,387億円で、予算に対する進捗率は50.1%となり、標準進捗率を0.1ポイント上回っています。資料の中段に、営業業績を記載していますが、契約総数は中間期実績で35.3万件、年間増加目標に対して70.7%の進捗率です。衛星契約数は40.7万件で、目標に対する進捗率は64.5%、契約総数、衛星ともに標準進捗率の50%を大きく上回っています。一方、未収数は4.5万件の削減で、40.5%の進捗率になっていますが、下半期において目標達成に向けた重点的な取り組みを展開します。一方、一般勘定の事業支出については、リオオリンピック・パラリンピック放送等、番組の充実を図る一方、効率的な業務運営に努めた結果、28年度中間期で3,298億円となり、予算に対して47.5%の進捗率で、標準進捗率を2.5ポイント下回りました。以上により、事業収支差金は、263億円の黒字となり、予算の80億円に対し183億円の収支改善となりました。下のグラフは、受信料収入の3か年の推移を示しています。一番右の黒の棒グラフが28年度中間期で3,387億円で、27年度中間期の3,316億円に対しては70億円の増収になります。次に右上の表をご覧ください。先程の一般勘定に放送番組等有料配信業務勘定と受託業務等勘定を加えた「協会全体」の損益の状況です。まず、経常事業収入(売上高)は、28年度中間期は3,522億円となり、27年度中間期の3,432億円に対して90億円の増収になっています。これは、受信料の増収などによるものです。中間事業収支差金(純利益)は先ほどご説明した、一般勘定の263億円と、資料には記載がございませんが、放送番組等有料配信業務勘定1億円の黒字を合わせた、合計264億円となり、前年度中間期に対して7億円の増益で、昨年度に続き増収増益の中間決算となりました。その下の表は資産と負債等の状況をまとめたものです。28年度中間期末の資産合計は、現金及び預金の増等により、27年度末と比べて210億円増加の1兆574億円となりました。負債合計は3,430億円となり、リオオリンピック・パラリンピック放送の実施に伴う国際催事放送権料引当金の減等により、27年度末と比べて53億円減少しています。なお、27年度中間決算から「東京オリンピック・パラリンピック関連費用引当金」を計上しています。計上額は年間30億円で、この中間決算でも半分の15億円を計上しています。純資産合計は7,144億円で、28年度中間事業収支差金が264億円発生したことによる増となっています。その結果、自己資本比率は67.6%となり、27年度末に対して1.2ポイント上回っており、健全な財政状態を維持しています。
 つづきまして、緑色の資料をご覧ください。中間連結決算の概要をご説明します。まず、左側に記載しているとおり「連結の範囲」は、連結子会社13社、持分法適用会社1社の計14社で、前年度と変更ありません。「損益の状況」をご説明します。28年度中間期の経常事業収入(売上高)は3,801億円となり、受信料の増収等により、99億円の増収となっています。その一方、番組の充実等を図り、経常事業支出が増加したため、経常事業収支差金は175億円と54億円の減収となっております。その結果、中間事業収支差金(純利益)は219億円となりまして、27年度中間期に比べて35億円の減益となり、連結ベースでは『増収減益』となっています。なお、先ほど、NHK単体の中間事業収支差金は264億円と申し上げましたが、連結における中間事業収支差金(219億円)がNHK単体より大幅な減益となっているのは、連結決算の会計処理においてグループ間の受取配当金73億円などの内部取引を消去したことによるもので、各子会社の中間決算では、13社の単純合計で22億円の利益を確保しております。左側の下のグラフは、経常事業収入と中間事業収支差金の3か年の推移を示しています。グラフの中の四角で囲んでいる数字は、連結のNHK本体に対する割合である連単倍率を示しています。28年度中間期の経常事業収入の連単倍率は1.08となっており、NHK本体の比重が高い割合となっています。事業収支差金の連単倍率は0.83で、NHK本体に比べ、連結の数値が小さくなっておりますが、これは子会社が今期、大型配当を実施したことによるものです。次に、右側の上をご覧ください。経常事業収入(売上高)の内訳を記載しています。NHKは、受信料の増収等により、28年度中間期は3,498億円となり、27年度中間期に対して87億円の増収となりました。一方、子会社は、大型美術展の実施などにより、子会社全体で、28年度中間期は303億円となり、27年度中間期に対して11億円の増収となっています。なお、資料には記載しておりませんが、28年度中間期の子会社13社の売上高の単純合計は1,100億円となります。連結決算の会計処理において、グループ間の取引として796億円を消去した結果、連結決算における子会社の売上高は、資料のとおり303億円となっています。その下の表は資産と負債等の状況をまとめたものです。28年度中間期の資産合計は、1兆1,742億円となり、27年度末から124億円増加しております。なお、自己資本比率は67.1%となり、27年度末に対して1.2ポイント上昇し、連結においても、健全な財政状態を維持しています。以上が、平成28年度中間決算の概要です。
 なお、財務諸表については、現在、会計監査人による監査を受けており、このあと監査報告書を受領する予定です。次回の11月22日の経営委員会では、財務諸表に会計監査人による監査報告書を添付し、改めてご提出します。また、視聴者への公表は、この概要の資料を、このあとホームページに公表し、正式な財務諸表については、次回の11月22日の経営委員会に提出後、公表する予定としております。

 

 (2) 契約・収納活動の状況(平成28年9月末)(資料)

 (松原理事)

 全体状況は、9月末の累計値としては全ての目標に対して引き続き堅調に推移しています。1ページをご覧ください。当年度分受信料収納額の状況です。3期の収納額は1,127.8億円で、前年同期を24.3億円上回りました。累計でも3,313億8千万円となり前年同時期を70億5千万円上回りました。28年度の収入予算を確保するためには、9月末で66億円程度の増収が必要となりますが、4億5千万円上回り堅調な推移になっています。なお、熊本の震災では3億円を超える影響がありましたが、それを吸収したうえでの増収額となっています。次に、3期の前年度分受信料回収額は5億3千万円となり、前年同期と同水準となりました。前々年度以前分の回収額も4億8千万円となり、前年同期を7千万円上回りました。2ページをご覧ください。契約総数の増加状況です。3期の取次数は53万件となり、前年同期を1万件上回ることができました。減少数は41万7千件となり、前年同期を2万2千件上回り、差し引きの増加数は、1万2千件下回る11万3千件となりました。累計の増加数は前年同時期を3万5千件上回る35万3千件となり、平成元年以降では最高値になっています。次に衛星契約増加です。3期の取次数は32万件となり、前年同期を1万9千件上回ることができました。減少数は18万8千件となり、前年同期を1万7千件上回り、差し引きの増加数は、2千件上回る13万2千件になりました。累計の増加数は前年同時期を2万5千件下回る40万7千件となっていますが、前年度の実績には大規模事業所などからの取次が含まれていることを考慮すれば、実質的には前年度と同水準の活動が出来ています。また、衛星契約割合は年度内で0.6ポイント向上して49.6%になりました。3ページをご覧ください。3期の口座・クレジット払等増加は、契約総数増加が前年同期を下回ったことなどが影響して前年同期を2万7千件下回る8万2千件となりましたが、累計の増加数は、前年同時期を1万9千件上回る37万3千件になりました。また、口座・クレジット払等の利用率は89.9%となっています。次に、未収数削減の状況です。3期は支払再開数が前年同期を上回るなどにより、前年同期から1千件上回る3千件の削減となりました。累計でも4万5千件の削減となり、前年同時期からは1万5千件上回る削減となりました。また、未収現在数は105万5千件となり、前年同時期より14万6千件圧縮しています。一番下段にあります、契約総数増加と未収数削減を合わせた支払数増加も累計で、前年同時期と比較して5万件上回ることができました。4ページをご覧ください。最後にブロック別の増加状況です。全国の状況と同様に、9月末累計で、契約総数増加では、関越、近畿、中部、北海道、そして熊本の影響を除けば九州も含めた5ブロックが前年同時期を上回っています。衛星契約増加は、前年同期を上回っているのは、中部ブロックだけですが、目標に対する進捗率は熊本の影響を除く九州を含めて全てのブロックが堅調に推移しています。年度の折り返しである上半期業績は、昨年度から整備してきた訪問要員体制の効果や、年度初頭より活動を前倒しで展開したことなどにより、堅調な業績確保につながったものと考えています。下半期も営業目標達成に向け、引き続き取り組んでまいります。
 契約収納活動の状況の報告は以上ですが、最後に、受信契約にかかわる裁判の動きにつきまして2件ご報告をさせていただきます。
 まず1件目は、レオパレス21の管理するテレビつき賃貸物件の入居者の受信契約にかかわる東京地裁の判決についてです。10月27日に東京地裁において、レオパレス21の管理するテレビつき賃貸物件の入居者については、受信設備を設置した者には当たらないということで受信契約の締結義務はないとする判決が出ました。NHKとしては、「原告は賃貸物件に居住し受信設備を現実に占有管理するものであり、受信設備を設置した者に当たるため、受信契約の締結義務がある」と考えており、引き続き二審でNHKの考えを訴えていきます。なお即日、東京高裁に控訴しました。同様の裁判においては東京高裁や高知簡裁で、入居者に受信料の支払いを命ずる判決が出ています。
 続きまして、世帯の受信契約の未契約訴訟における最高裁の上告受理についてです。11月2日に最高裁より、NHK及び相手方の上告が受理され大法廷に回付されることになったという連絡がありました。この裁判は、放送法64条1項の解釈あるいは合憲性、契約の成立の考え方、受信料をどこまでさかのぼって支払うべきか等について争っているものです。最高裁においてもNHKの主張が認められるように訴えていきたいと思います。以上です。

 (長谷川委員)

 レオパレス21の案件については、物件に附属していたので、そこに入った方に受信料の支払いの義務がないという判決が出たということでしょうか。

 (松原理事)

 分かりやすく言うと、受信機を設置したのはその建物のオーナーかレオパレスと推認されるので、入居している人が設置したのではないという判断がされたということです。

 

 

5 その他事項

 (1) 会計検査院による平成27年度決算検査報告について(資料)

 (大橋理事)

 会計検査院の検査結果についてご報告します。会計検査院による平成27年度の決算検査が終了し、昨日の11月7日に会計検査院長から「検査報告書」が内閣総理大臣に提出されました。NHKの平成27年度決算については、特に指摘事項はありませんでした。検査の概要ですが、書面検査としまして、財務諸表及び関連書類について検査が行われ、1,299件、35,623枚の証拠書類を提出しております。実地検査としましては、昨年11月から今年7月までの期間、本部3回および放送局14局所において、延べ355人日の体制で検査が実施されております。以上で報告を終わります。

 

 (2) 平成28年秋季交渉について(資料)

 (根本理事)

 NHKの労働組合「日放労」との秋季交渉について報告します。
 組合は、先週11月4日の定期中央委員会で、交渉にあたっての組合方針を決定し、協会に通知してきました。今年の交渉方針では、「持続可能な体制づくりに向けて」に関連する要求がテーマとなっています。具体的には、「記者勤務制度の見直し」、「傷病欠勤・傷病休職制度等の総合的な見直し」について、協会提案を提示し、労使議論を進めます。記者勤務制度については、これまでの自律的で裁量のある取材活動を維持しつつ、健康確保施策をより強化するため、平成29年4月からの「専門業務型裁量労働制」の導入について、協会提案を組合に提示し、議論を行います。これまで、記者の勤務について議論を重ねており、今次交渉では制度の詳細等、導入に向けた具体的な議論を行います。次に傷病欠勤・傷病休職制度等の総合的な見直しです。傷病欠勤・傷病休職制度については、メンタル疾患の増大や医療技術の進歩など、社会状況の変化にあわせて総合的に見直しを行います。具体的には、よりスムーズな復職支援に向けたプログラムや休職期間の見直しなどを組合に提示し、議論を行います。交渉期間は、11月28日から11月30日までの予定です。交渉では経営の考え方を丁寧に説明し、組合の意見に対して真摯に対応することで、円滑な制度導入に向けた議論を進めたいと考えています。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成29年1月31日    

石 原  進

 

 

本 田 勝 彦