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あの魚道どうなった? ポータブル魚道・布式魚道を振り返る

  • 2023年12月20日

サケが遡上できない落差を超えられるよう、臨時で取り付ける魚道について、斜里町と札幌市の事例を、2023年9月の「北のサケお兄さん」コーナーで紹介しました。その魚道、どんな成果を上げたのか、追跡取材の結果をお伝えします。

ポータブル魚道 サケが入り口を見つける瞬間

斜里町は、町内を流れる2つの川について、落差工1箇所ずつ、2箇所にポータブル魚道を設置しました。この魚道のいいところは、なんといっても、日曜大工レベルの技術で「作れる」ことです。

設計こそ、プロの力が必要ですが、材料は、ベニア板と鉄パイプです。細かい部材もホームセンターで揃うので、設計図にしたがって組み立てていくと、魚道が出来上がります。

今回の魚道作りには、斜里町役場の声かけに、地元の漁協の若手職員を中心に町内のボランティアメンバーが力を発揮して、2日間で組み立て、設置を完了しました。

その魚道をサケがどのように使うのか、ポータブル魚道の開発者で、現地で一緒に魚道作りをした高橋直己さん(国立高専機構香川高等専門学校 准教授)が、撮影に成功しました。

斜里町の調査によると、この魚道を使って上流にのぼったサケは、10月上旬の目視調査で85匹。同時に、産卵床(カラフトマスのものを含めて)35ヶ所も確認したということです。
もう1ヶ所の魚道でもサケの遡上が確認されていて、サケが産卵する範囲を広げるという魚道の目的は、2ヶ所とも達成できました。

布式魚道 目の前をサケがのぼって行った!

札幌市を流れる豊平川の支流・真駒内川の落差工には、寒地土木研究所と北海道庁が開発した「布式魚道」が取り付けられました。

こちらは、鉄パイプで骨組みを組み上げたあと、トラックの幌に使う布の左右を固定して樋状の水の通り道を作ります。

布を固定具でパッチンと留めるだけなので、費用も工期も、恒久魚道に比べれて圧倒的に安上がりです。布のため、いろいろな形にも対応できます。
こちらも、市民活動の結びつけた使い方ができるかもしれません。

この魚道には、NHK北海道の追跡取材のための、「サケカメラ」を取り付けていました。そのメンテナンスで現地にいった際に、何度かサケが上流に向かうのを目撃することができました。

特に11月2日のメンテナンスでは、お昼の0時53分から、午後4時過ぎにかけて、少なくとも5匹の遡上を確認することができました。
一方、この魚道には、寒地土木研究所が「魚カウンター」を設置して遡上数の計測をしていました。
センサーを通過した時に現れる電流の変化と、水中に取り付けた魚種判定用のカメラの映像を組み合わせて、効果を計測します。

魚カウンターを通過するサケ

その結果、速報値で136匹のサケが遡上していたということです。
魚道の上流150メートルの地点では、メスのサケが産卵床を守っている様子を確認していて、こちらの魚道も、サケの産卵環境の拡大に役立ったことがわかりました。

こうした産卵床から稚魚たちが浮上してくるのは、来年の春以降になります。雪解け前後から、稚魚たちの動向を追跡取材する予定です。

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サケにとって大事な魚道ってご存知ですか?

真駒内川の布式魚道 サケがのぼりました

北のサケお兄さんまとめページ

サケカメラのページ

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